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49.VS竜魔人(2)

 竜魔人と化したマルネスは強い。

 生半可な速さでは、風の魔竜の血を得たというマルネスには勝てない。

 でも私には新たに解禁された恐竜×魔法がある!


「アギリサウルス×俊敏性強化(中)!」


 アギリサウルスは二足歩行の恐竜だ。

ステータスオープンで表示されるイラストでは、ヒザの下から足までが、ちょっと長いように見えた。

 足がちょっと長めの恐竜。

 もしかしたら足も速いのかなって思ったら大当たりだった。


 俊敏性強化(中)の魔法はリオハ村にいたときから気になっていたものだ。

 俊敏性強化(小)では全速力の馬にも敵わない。力不足を感じたときが幾度もあった。

 アギリサウルス×俊敏性強化(中)なら!


「は、速くなっただと?」


 押され始めた竜魔人マルネスは焦りの声を上げる。


「速いのは剣だけじゃない!」


 私はマルネスを蹴りとばした。

 俊敏性強化(中)は、その速さに耐えられるほどの筋力を私にもたらしてくれる。

 全身甲冑の男を転倒させるくらいの力だって得られるんだ。


「うりゃあ!」


 跳び上がる。転がるマルネスに上から剣を突きたててやる。

 ところが。

 仰向けになった竜魔人マルネスは両腕を私の方へ突き出していた。

 そこから生まれた竜巻が私を飲み込み、天高く突き上げたのだ。


 高い。二階建ての執務館の屋根が見える。

 次に地面が迫って来る。落ちている。このままじゃ……。


「フィリナさーん。こっちなのですよ!」


 マリッパさん! 

 黒くて半袖半ズボンのマリッパさんが下に立っていた。

 どうしてここに? なんだか忍者っぽい衣装だな。

 それにしてもマリッパさん、私が落下すると思しき地点とは、若干ずれたところに立っている。

 笑顔で私を受け止めようとするマリッパさん。

 有り難いけれど、その場所は違う。

 ああ、私は地面に激突する……。


「まったく、ドン臭いよ、オマエは」


 目をつぶって落下を覚悟していた私を受け止めたのは、かつて御隠居さんの馬車に乗っていたポニーテールの女性だった。

 相変わらず鋭い目でマリッパさんを睨んでいる。

 彼女の横にはおかっぱ頭の糸目の女性も立っていた。

 二人の衣装はマリッパさんと同様に忍者風だ。


 多くの騎士がマルネスたち竜魔人を取り囲むも、竜巻で吹き飛ばされてしまっていた。

 魔法士が魔法攻撃しても、甲冑のような体には効果がない。


 まともに交戦できているのは騎士団長とウィナミルさん。

 そして二人を魔法で援護している魔法士長くらいだ。


「むぅ。一筋縄ではいかんようだな」


 そこに現れたのはフードで顔まで隠れている公爵様だ。

 同じくローブのフードで顔を隠した従者二人を引き連れている。

 一人は丸太のような金属を抱えていた。

 私は慌てて言った。


「公爵様、ここは危険です。執務館の中で隠れていて下さい」


「フィリナちゃん。こんな危険、若い頃の魔竜大戦に比べれば危険のうちに入らんわい」


「そんなこと言われても」


 ん? どうして私の名前を知っているんだろう。

 それにこの声。そういえば、どこかで聞いたことあるような。

 疑問いっぱいの視線を向けていると公爵様はローブのフードを剥ぎ取った。


「この顔、もう忘れてしまったのか。悲しいのぅ」


「え! 御隠居さん?」


 公爵様はエリーの護送中に出会った御隠居様だった。

 御隠居様は三体の魔竜人を見据えた。


「皆の者に力を与える。まずはミガットさん、ムーアさんで黒い竜魔人とやらを懲らしめてやりなさい」


 従者の二人がローブを剥ぎ取る。

 二人は御隠居さんと旅をしていた男の人たちだった。

 二刀流のミガットさんと、筋骨隆々のムーアさんだ。

 ムーアさんは抱えていた丸太を構える。


「三人娘は騎士団長と協力して白い竜魔人を懲らしめること。早く終わったほうが、残っている竜魔人を成敗してやりなさい!」


 そして御隠居さんはムンっと気合いを入れると、ミガットさんとムーアさん、それにマリッパさんたち三人は光に包まれた。

 その光はすぐに消えていった。


 ミガットさんは両脇に差した剣を抜く。あの光沢は魔法金属マジリルの剣だ。

 ムーアさんの持つ金属の丸太もマジリルだ。

 五人は物凄い速さで白と黒の竜魔人に向かっていく。

 竜魔人が巻き起こす竜巻の中、ものともせずに攻撃を加えていった。


「どうなっているの?」


「ワシの天職は魔法使い。若い頃は僧侶学校に通っていてな。特技は付与術なんじゃ」


「御隠居さん、付与術って?」


「仲間と認めた者に力を授ける魔法じゃよ。もちろん僧侶ゆえ、多少は回復魔法も使えるが。あの五人には不要かものぅ」


 仲間に力を与えられる魔法。

 たしかにミガットさんとムーアさんは黒い竜魔人を圧倒している。

 マリッパさんたち三人は、素早い連携で白い竜魔人にナイフを投げつけることで翻弄し、騎士団長に攻撃の機会を作っていた。


「付与術。仲間と認める条件は、その魔法士によってそれぞれ。ワシの僧侶仲間も多種多様な認め方じゃったな」


 付与術……私の魔法の中にも同じものがあった。

 私はルティアさんに活躍してほしい。

 エリーには父親の仇を取ってもらいたい。


 エリーの力は魔竜人と化したマルネスには及ばなかった。

 今は父親の形見のナックルを抱きしめ、悔しそうにマルネスを睨んでいる。

 助けてあげたい。


 私にも付与術が使えたとしたら、エリーたちに力を与えることができたとしたら。

 魔竜との戦いで5つの恐竜×魔法が解禁された。

 でも2種類の力が、まだ見つかっていない。


 残りの恐竜と魔法の組み合わせ。

 それぞれ72種類だから5000通り以上ある。

 この戦いで付与術が解禁されている可能性は低いけど……。


 ムーアさんのマジリルの丸太で叩きのめされ、吹き飛んだ竜魔人は、すれ違いざまのミガットさんの二刀流で切り刻まれる。


「助太刀、感謝します」


 ウィナミルさんの剣の一閃。

 黒い竜魔人は元の臣下の姿になると、その場に倒れこんだ。


「あと二体だ!」


 三人は、白い竜魔人と戦う騎士団長とマリッパさんたちの元へ駆ける。

 魔法士長と魔法士たちは竜魔人マルネスに魔法を放ち続けているけれど、発生する竜巻に魔法を防がれてしまっている。


 探してみよう。残りの魔力は92もある。

 ステータスオープン! 

 恐竜のイラストの中から仲間想いで人の良さそうな恐竜を探す……。


「そんな恐竜いないよっ!」


 仲間を引き連れている恐竜なんていない。

 全ての種類が一匹しか描かれていない。

 そもそも恐竜の表情で仲間想いとか、分かるわけないっ。


 冷静になれ私。

 これまで解禁された恐竜は全て一枚目と二枚目のステータス画面にいた。

 ガソサウルス、オフタルモサウルス、アギリサウルスだってそうだ。

 一枚目の画面の恐竜は全て選んだ。二枚目の画面から探すんだ。


 コンプソグナトゥス、ケントロサウルス、ダケントルルス……

 恐竜を選べばイラストの上に名前が表示される


「どうして恐竜って一人で生きていけそうな顔をしているの?」


 嘆いたってしょうがない。

 いつも通り探すしかないんだ。


 ケラトサウルス×付与術!


 ダメだ。この組み合わせでは神様のアナウンスは流れない。

 ルティアさんを見ても、一瞬だけその身体は淡く光ったものの、御隠居の付与術のような強い光ではなかった。


 セイスモサウルス×付与術!


 またダメだ。ルティアさんの身体は一瞬だけ淡く光るものの、神様のアナウンスは流れない。


 私は8回、試行錯誤を繰り返した。

 ルティアさん、8回も自分の身体が光るものだから、不安げな表情になってしまっている。

 相性の悪い恐竜×魔法は魔力を10も消費する。

 残り魔力は12まで低下してしまった。


 このまま失敗しても御隠居さんたちの仲間たちがマルネスを追いつめてくれるかもしれない。

 現にミガットさんたちはウィナミルさんと共に白い竜魔人を追いつめている。


 エリーの告白が浮かぶ。

 マルネスに親友を殺されたこと。父親を殺されたこと。

 私はエリーに戦ってもらいたい。エリーの力になりたい。

 どうか、恐竜と魔法、私の仲間にも力を貸してあげて。


「これで最後だ! ダトウサウルス×付与術!」


『ガオオオン! 解禁された恐竜×魔法を選ばれました!』


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