表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/127

17.VSファイヤーゴブリン(1)

 アルマガ村の生存者を馬車に乗せ、リオハ村に戻ろう。

 そんなときにファイヤーゴブリンは現れた。

 囮を買って出た私はファイヤーゴブリンへ走る。

 魔力はまだまだある。ルティアさんのアドバイスのおかげだ。


『パンファギア×収納』! 

 黒い穴は走りながらでも、私の前に現れる。そこから槍を取り出した。武器は村からごっそり持って来たんだ。


「エオラプトル×俊敏性強化(小)!」


 素早く敵の横へ回りこむ。相手の体から溢れ出る炎に触れていないというのに、近づいただけでとっても熱い。

 でもリーチの長い槍で刺せばッ……


「って、ウソぉ!?」


 槍で敵の肩を突き刺したつもりだった。でも槍の先端は炎で焼かれてしまったのだ。


「これじゃあ、どうやって倒せばいいの? ……うわっ」


「グファアア!」


 敵が口から火の玉を発射。何とか避ける。

 恐竜と魔法の力がなければ避けきれなかった。

 さっきまで私がいた場所。火の玉が直撃した地面が燃えている。

 どうして地面が燃えているの? 油も一緒に吐いているの? そういえばアルマガ村の道は、いたるところで焦げていた。


「グファア!」


「ちょっと、待って」


 敵はどんどん火の玉を吐いてくる。どうやら私に狙いを定めたようだ。囮役としては嬉しいことなのだけれど。

 こうなったら、逃げながら倒す方法を考えるしかない。

 幸い、村の周囲は緑が豊富だ。茂みの中を逃げ続けよう。


「こっち来い!」


 敵は追ってきてくれた。ゴブリンリーダーほどの速さはないけれど、恐竜×魔法がなければ追いつかれてしまう。

 敵の周囲の茂みは焼かれていく。これじゃあ山火事になってしまいそうだ。

 木と木のあいだをジグザグに駆け抜け、火の玉の攻撃を木に防いでもらう。

 ところが……。

 細い木もあったんだ。火の玉は木を砕いて、私の横を掠めていった。


「熱いっ」


 掠っただけなのに、服の袖が焦げていた。

 左腕に一筋の火傷ができてしまう。

 痛い……そう思った矢先だった。


『キンコンカンコン! 魔竜に準ずる者の攻撃を受けました。これより三種の恐竜×魔法を解禁します。さらに既存の恐竜×魔法の消費魔力を低減させます』


 え? 神様の声?

 あたりを見回す。神様なんていない。いるのはファイヤーゴブリンだけだ。

 なんだったんだろう、今のアナウンス。


 魔竜に準ずる者? 魔竜との戦争は大昔に終わったんじゃないの? 

 消費魔力の低減? それは嬉しいけれど、ほかになんて言っていた?

 恐竜×魔法を解禁? それってエオラプトル×俊敏性強化(小)のように、強力な力が使えるってことだ。

 そんな事を考えているあいだにも、敵は火の玉を吐きつつ、距離を詰めてくる。


「逃げながら、恐竜と魔法を探せってこと?」


 そんなの無理だ。でも無理しなくちゃ、殺される。倒せない。

 茂みを走る。火の玉に当たらないよう、頭を使いながら。


 ステータスオープン。

 残りの恐竜が78種類。残りの特技・魔法が78種類。

 6000通りを越える組み合わせの中から最適なモノを探さないと。


 まずは魔法だ。私の左側に現れた魔法のステータス画面の4枚を急いで見やる。

 ファイヤーゴブリンに勝ちうる魔法。『俊敏性強化(中)』? 

 相手は炎を使う。状況を打破するには『冷凍』『海』『水』『激流』……。それらの魔法が目にうつる。

 ここは森の中だ。ここで『海』はないだろう。だったら『水』?


 次は恐竜だ。右側のステータス画面。こちらも計4枚の画面を急いで操作。

 水の中にいる恐竜は……。いた。二枚目の画面の一部には水面が描かれていて、そこにはイルカのような生き物がいる。

 このフォルムは恐竜じゃない。たしか魚竜とかいう生き物だ。

 生き物の絵に触れると『オフタルモサウルス』という文字が浮かんだ。これに決めた。


「オフタルモサウルス×水!」


 敵に向けて手をかざす。すると


 びちゃびちゃ……。


 手の平から水がボタボタと溢れては、足下へ落ちた。


「何これ? 手と足下が濡れただけだ!」


 手から水が出るだけでも凄いのだろう。でも敵には届かない。とても倒せない。

 なにより、最適な組み合わせを選べば神様からアナウンスが来るはずだ。それもない。


「グッファア!」


「くそっ」


 敵は火の玉を撃って来る。

 貴重な魔力を10も使ってしまった。残りの魔力は52。

 ここで私がやられたら、敵は馬車を追いかけるかもしれない。

 私がきっちり時間を稼がないと。倒さないと。

 もう一度ステータスオープン。『水』と相性のいい恐竜を探さないと。


 敵の周囲の木々は炎に飲まれて燃えていく。

 そもそも『水』で合っているのだろうか。敵の炎に『水』が効くのだろうか。もっと強力なもの。

 『冷凍』という文字が目に止まる。この魔法は一度使ったことがある。

 これと相性の良さそうな恐竜はいないものか。全身が凍っているような恐竜……。


「そんな生き物、いるワケないじゃん!」


 自分に突っ込みを入れている間にも、火の玉は私をかすめていく。

 ステータス画面を睨みながらも、エオラプトル×俊敏性強化(小)の力を使っているけれど、敵は周囲の茂みを燃やしながら真っ直ぐ向かってくる分、少しでも恐竜と魔法の効果がきれれば、距離を詰められる。


 水を出してからエオラプトル×俊敏性強化(小)を3回も使ってしまった。

 これではすぐに魔力が尽きてしまう……


「あれ?」


 魔力がさほど減っていないように思える。

 そういえば神様のアナウンスで、既存の恐竜×魔法の消費魔力を軽減させるって言っていた。

 もう一度エオラプトル×俊敏性強化(小)。魔力の減り具合は、2だ。

 残りの全魔力は44。まだ半分近くある。


「よかった。まだ戦える」


 これで少し冷静になれる。ステータス画面をもう一度見る。なにか閃け。

 エオラプトルを初めて選んだとき。ラプトルという名前がヒントになった。

 パンファギアを選んだのは、エオラプトルと同じ1枚目の画面に描かれていたから。


 でもほかの恐竜の名前の意味なんて分からないし、エオラプトルと同じ画面にいる恐竜はパンファギアのほかにはいない。


「次に来る恐竜は二枚目にいるのかな」


 二枚目の画面にはたくさんの恐竜がいる。イラストに触れれば名前が浮かぶ。


「アイス、フローズン、スノー、ウインター……」


 『冷凍』と相性の良さげな名前を探しても、出てくる名前はブラキオサウルスやステゴサウルス、ケントロサウルスというよく分からないものばかりだ。

 それらの体の色だって、雪のような白でもない。


 そんな恐竜の中でも『クリオロフォサウルス』という名前が気になった。

 二足歩行の恐竜でティラノサウルスのような頭をしている。頭にはニワトリのようなトサカがあった。


「クリオ、ロフォ? 栗を六個? それしか食べずに生きてきた? ……ってきゃあっ」


 敵の火の玉が周囲に着弾。連続して攻撃してきた。

あたりが火に包まれる。敵は近づいてくる。

 一か所でも冷凍で火を消して、そこから脱出しよう。


「この際どんな恐竜でもいい!」


『クリオロフォサウルス×冷凍』! 勝利をクレクレ、クリオロフォ!


『ガオオオン! 解禁された恐竜×魔法を選ばれました!』


 え? なに?

 火にかざした手から冷気が発射される。火はあっという間に消えた。

 以前、ほかの恐竜と冷凍で組み合わせたときの冷気と違い、勢いがものすごい。じゅうぶん離れたところにも届く。

 冷気を出すのをやめ、もう一度出してみる。できた。この力も一分間持続しそうだ。


「火事が消せたのだから」


 手を敵へとかざす。


「くらえ!」


「フォギャア!?」


 ファイヤーゴブリンの身体の炎が冷気の風に圧倒されて消えていく。むき出しになった体表は岩のようにゴツゴツしていて真っ赤だった。

 そんな赤い身体も、冷気に冷やされて黒くなり、霜がついていく。

 冷気の余波で敵の周囲の火も消えていく。


「やった。あっ」


 一分経ったのか、手から冷気が出なくなってしまった。


「フォグファァ!」


 霜がどんどん解けていき、身体は再び赤くなって、炎が噴き出してくる。

 怒ったのか、敵は跳びかかって来た。


「こっちだって、たくさん人が殺されて怒ってるんだから!」


 再び『クリオロフォサウルス×冷凍』!

 もう一度敵を凍りつかせる。今度は至近距離でまるまる一分。

 先ほどと同様、冷凍庫のお肉みたいに凍りつかせることができた。

 さっきより長く冷気を浴びせたぶん、敵は動けなくなっている。


「まだ終わりじゃない!」


 パンファギア×収納! 収納から剣を取り出して斬りかかる。ところが。

 剣がはじかれてしまった。硬い。

 もともと硬いのか、冷気で身が締まって硬くなってしまったのか分からないけれど、剣では斬りつけられない。

 『腕力強化』の魔法で斬りかかればいけるだろうか。

そんな事を考えている隙に、敵の身体の霜が解けていく。先ほどと同じく急速解凍が始まった。


「グフォラァァ!」


 すぐに距離を取る。敵は追いかけてくる。

 クリオロフォサウルス×冷凍では倒しきれない。また逃げながら考えなければ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ