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11.巡察員

 一週間前、20匹を越えるゴブリンと遭遇し、これを退治。

 西の森の湧水が出る場所でもゴブリンを倒した。

 さらにゴブリンを探しもとめて北の森に行っては退治していった。

 倒したゴブリンの数は80匹を越えていた。10回に一度くらいは一撃で倒せるようになったのだ。


 そして私がこの世界に来て一ヶ月目。ついに子爵の街から巡察員がやって来た。お昼前のことだった。


 馬に乗って来た巡察員をお祖父さんは家に招き入れた。

 村の大人たちも家にやって来て村長であるお祖父さんのうしろに座り、巡察員の話を聞く。村の大人に混じって伯父の姿もある。


 巡察員の話す内容は、今年の作物の収穫は予定通りか……、税として納める作物の量は例年より多くできないか、とか。

 私は村長の孫娘だけれど、家に入りきれなかった大人たちと一緒に家の外で巡察員の話を聞いていた。

 家の戸は開け放たれていた。その点については巡察員も怒りはしない。彼も自分の話を村のみんなに聞いてほしいのだと思う。


 巡察員はある程度はなし終えたのか、今度はお祖父さんに、変わりはないかと尋ねた。

 ここでお祖父さんはファイヤーゴブリンによって隣村が焼かれたこと。そこの村人は焼き殺され、この村からも多くの死者が出たことを打ち明けた。

 巡察員はファイヤーゴブリンなんて言う魔物は聞いたことがないと顔をしかめた。名前はこの村の人間が勝手に付けたものだ。

 ならば似たような容姿の魔物はいないかという村人の質問に、巡察員は首を横に振っていた。


 巡察員は、まずは隣村の様子をこの目で確かめたいと、翌朝、馬にまたがり隣村へ出立した。隣村へは歩いて半日の距離だ。馬でなら、もっと早い。

 夕方に戻って来た巡察員は、隣村は何らかの魔物に襲われたと結論付けていた。だけれどファイヤーゴブリンは確認することができなかったという。


 私たちの願いは、子爵の街の騎士団にファイヤーゴブリンを討伐してもらうことだ。

 ファイヤーゴブリンがどこにいるか分からない現状、騎士団を派遣したところで、相手がいなければ討伐しようがない。騎士団の派遣は難しいと巡察員は答えた。


 代わりに、子爵の街にある冒険者ギルドにファイヤーゴブリンの捜索を依頼するという形になると言われた。

 派遣された冒険者が居場所を特定、ただの魔物ならば、その場で冒険者が討伐してくれるだろうとのことだ。

 もし強敵ならば、そこで初めて騎士団が派遣される。

ファイヤーゴブリンの件を子爵に相談すれば、きっと、その様な段取りになるだろうと言った。


 翌朝。巡察員は馬で子爵の街へ戻っていった。

 子爵の街へは馬で一ヶ月だ。子爵が冒険者ギルドに依頼を出し、冒険者が来るまで、また馬で一ヶ月。合計二ヶ月。

 そのあいだ、なにも事件が起きなければいいのだけれど。二ヶ月も経てば収穫期なんだけれど。



☆☆☆



 ゴブリン退治を続けて三週間が経過。私がこの世界にやって来て1ヶ月以上が経った。

 この日は珍しく森の中でも村に近いところでゴブリンの集団と遭遇した。10体近くいる。

 エオラプトル×俊敏性強化(小)。この力と剣とナイフでゴブリンを追いつめていく。


「首の後ろに狙いをつけて、えいっ!」


 剣で横一閃。集団の最後の一体を倒す。


「やった。これで、100体目! それにしても、ここ?」


 その場所は、森の中にしては樹が生えていない場所だった。だいぶ前に人が木を引き抜いたような形跡がある。

 そんな場所の中心に、違和感があった。ほんの少しだけ土が盛り上がっている。

 そこへ近づき、ジッと観察する。ここに何かある?


「それに触るな!」


「え?」


 伯父だった。どうして伯父が村の外にいるんだろう。もしや村を出るところを見られていた? 付けられていた? 


「あの……」


「そこは落とし穴だ。ゴブリンを倒すための罠のひとつ。この村の人間ならば、この辺りに罠があることくらい知っているだろう」


「え?」


 そう言われてみれば、村のまわりに作った落とし穴の塞ぎ方に似ている。


「オマエと父親が村人と一緒に仕掛けた罠だと聞いたが?」


「あの、私には記憶がなくて。ファイヤーゴブリンに焼かれて……」


 そこまで言うと、伯父は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 村の人たちの噂どおりだとすれば、ファイヤーゴブリンを使ってフィリナちゃんや父親を殺したのは伯父なのだ。

 伯父は俯き、黙ってしまった。そして何かに気付いたように。


「ゴブリンを倒したのは、オマエなのか」


「え?」


 私のうしろにはゴブリンの一体の死体がある。剣だって握っている。言い訳ができない。こうなったら。


「はい。村の外の様子が見たくて森に。剣は護身用にと村から拝借しました。偶然ゴブリンが襲ってきたので、つい」


 信じるかな……。

 長い沈黙が流れた。伯父はお祖父さんとの会話でも最小限の返答しかしない人だ。


「フンっ」


「え?」


「偶然ゴブリンを一体倒せたようだが、ゴブリン退治なんて考えるなよ。ゴブリンは集団になれば厄介だ。冒険者でも無事では済まない」


「はぁ」


「特に山の奥にはゴブリンキングがいると言われる。あまり森には深入りするな」


 もしかして心配してくれている?


「あの、伯父さんはどうして森に」


「罠の様子を見に来た。この様子なら何も罠にかかってないな。帰るぞ」


 帰らないなんて言えない。

 私は伯父のあとをついて、村へと戻った。


おはようございます。

突然ですが第12話からタイトルを変えさせていただきます。

新たなタイトルは

『転生遠慮少女と夢見る冒険者~神様から天職・異竜戦士、特技・魔法80種類もらいました~ダイナマジック! 恐竜×魔法』

これからもよろしくお願いします。

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