ブリリアンスショー
美也子は亮の手を力強く握った。
「いいですよ、それよりこの仕事絶対成功させましょう」
亮はそう言って美也子の肩を抱いた。
「はい、それとこの前戴いただいた
薬がすごく効いて、肩こりが無いのよ。
それに本当に客が増えたのよ。わたし、
セクシーになったってアフターも
誘われっぱなし、同伴も毎日のように」
「よかった、これ美也子さんのオリジナル
作ったからこれ飲んでくださいね。
今度は香料が入っているから香水が要らなります」
そう言って亮は瓶に詰めたカプセルを美也子に渡した
「ほんとう。ありがとう」
美也子は瓶をシゲシゲと見つめ財布から10万円を取り出した。
「これ薬代、私続けて飲見たいから」
「よかった。今月ピンチだったんです」
亮は美也子のプライドを傷つけないようにわざとお金を受け取った。
「何言っているの、お小遣いくらい上げるわよ。亮」
「だめですよ。これからお金掛かる時だから、だけど
儲けたらしっかりいただきます」
亮はニッコリと笑った。
「ありがとう」
美也子は抱きついてキスをし甘えた口調で
亮に言った。
「我慢していたの、ねえ私たちもっと会えないかなあ、
5分でいいから顔を見るだけでいいから。
蝶がもっと安ければいいのに」
「あはは、蝶はスナックじゃないですからね」
「私、今の仕事辞めて、昼の仕事さがそうかな」
「美也子さん今はだめです。
僕はあなたが頑張っているから協力しているんです。
今回の仕事を成功させれば仕事も覚えるし、
会社も作れる。それまで我慢してください」
亮が美也子に真剣に答えたのは、絵里子との約束と
今回のファッションショーの成功の是非
は銀座の夜の女性たちの力にかかっていたからだった。
「ええ、そのために一生懸命働いてお金ためるわ」
「接客だけではなく今のネットワークを利用できる努力をしましょう」
「そうね、頑張るわ。でも亮、この媚薬売れば儲かると思わない」
「ええ、でも僕は自分の信じられる人にだけ
媚薬を作って上げたいのです。
その人が幸せになるように」
「ありがとう、じゃあ出世払いで
いいから蝶に飲みに来て」
「あはは、考えておきます」
亮と美也子はそのままベッドに転がり込んだ。
~~~~~
美也子の部屋を出ると亮は電話を掛けた。
「お久しぶりです、團亮です」
「えっ?團さん。お久しぶりです」
「今、どうしていますか?」
「おかげでブリリアンスショーのチーフデザイナーをしています」
「社長を紹介していただけませんか」
「はい、いいですけど」
「とりあえず、鈴木さんとお話がしたいので
明日、会えませんか」
「本当ですか!はいぜひ」
鈴木妙子はアメリカの事件以来会っていないが
亮と指切りをした事は決して忘れていなかった。
翌日、6時に亮と鈴木妙子は渋谷駅で会った。
「お久しぶりです」
「はあ、はい」
妙子は大人になってしっかりした亮の顔を見ていた。
「何か?」
「いいえ、何か雰囲気が変わったから」
「そうですか」
亮は自分の顔を撫でた。
「仕事は?」
「はい、秋冬のデザインを描いていましたので大丈夫です」
「あはは、この暑いのに秋冬なんですね」
「そうなんです。中々イメージがわかなくて
「何が食べたい物ありますか?」
「お酒が呑めてお肉が食べられるところ」
亮は妙子をワインバルに連れて行った。
「素敵なお店ね。渋谷に詳しいの?」
「この近くに住んでいるんです」
「良いですね。いつ日本に帰って来たんですか?」
「今年の4月です」
「そうですか、あれから2年ですね」
「そうですね」
「2年間一度も連絡が無かったんですけど・・・
連絡するって言っていましたよね」
「すみません」
亮は頭を下げた。
「ところで彼女出来ました?尚子さん以外に・・・」
「ええ、まあ」
「ジェニファーかしらそれとも・・・尚子さんは
忙しそうですね」
「あはは」
亮は笑うだけだった。
「私は出来ましたよ。彼氏」
「そう良かったですね」
「背は高くないけどね」
背が高くないという事はバレーボール
選手じゃないという事だった。
亮はそういう意味でホッとした。
「ところで社長を紹介する話とは?」
「実はファッションショーをする事になって
手伝って欲しいんです」
亮はファッションショーの話を説明した。
「面白いですね、社長に話をしておきますが
うちのブランドは一時の勢いが無くて青山と吉祥寺と
新宿と池袋のデパートだけになってしまって。
社内ではイメージの一新案が出ているんですけど、
社長がうんと言わないのよ」
「つまり・・・」
「時代遅れ」
妙子は目を伏せていた。
「私も色々デザインをするんだけど、
社長がOKを出さないし
もうやめようかと思っている」
「わかりました」
「善処しましょう、とにかく会わせてください」
妙子は現在の会社の様子と愚痴を話しながら
ワインボトルを2本空けると酩酊状態になり眠ってしまった。
「また、僕の部屋か・・・」
亮はマンションに妙子を連れて行って
ベッドに寝かせた。
~~~~~
その夜みどりから直子にパーティの連絡があった。
金曜日の夜7時、場所はお台場のグランドホテル29階 翼の間
会費は男性が3万円、女性は無料と言う事だった。
~~~~~
木曜日の夕方、亮は銀座で葉子と直子そして智子の三人に会った。
「今日は忙しいところありがとうございます」
「いいのよ。久々のデートなんだから。
それより本当にみんなに洋服買ってくれるの?」
みんなはとても嬉しそうな顔をした。
「はい、明日のパーティドレスを」
「ありがとう、亮」
美しい女性が輪になって亮に礼をする様子を見ていた
通行人はキョトンとして通り過ぎた。
四人は銀座美宝堂ビルの5階にある
ブティックスタジオDへ入った
「すごい、入ったの初めて!」
葉子と直子が回りを見渡して言った。
「亮、他に欲しい服があるの買っていい」
智子が甘えるように言った
亮はみんなに洋服を買ってやると豪語したが、
月二十数万円の安月給、高いマンションの管理費では
スタジオDに借金しなければ
ならないと思っていた。
「ありがとうございます。
さあみんなさん好きな物を選んでください」
亮はみんなをせかすと智子が嬉しそうに
笑って亮に確認を取った。
「えっホント?」
亮がうなずくのを確認した智子が
目を付けていたピンクのドレスの所に駆け寄った。
「あの團千沙子常務いますか?」
「少々お待ち下さい。どちら様ですか?」
「『アキラ』と言えばわかります」
亮は自分の顔を知らない新人店員に
名前を聞かれてショックだった。
「ここ、高いんですね」
葉子が値札を見て智子に言った。
「そうよ。ここは昔からセレブ御用達のブランドなのよ」
「亮、今日はお客さんか」
千沙子が聞いてきた。
「はい、彼女たちにドレスを選んでください」
「わかった、支払いは?」
「僕が払います」
「さすが高級マンションを買った男は違うね」
「茶化さないでください」
「とりあえず卸価格で売る賭けにしてあげるからね」
千沙子は亮の売掛金など伝票操作で何とでもなるが
生真面目な亮に払わせるつもりだった。
「ところで姉さんシンディの方は決定で良いんですね」
亮はまだ心配だった。
「うん、お父さんOKしているから大丈夫よ、
契約書ももうすぐ出来上がるわ」
「でもどうして急にスタジオDの
宣伝なんかする事になったの?」
亮は今までお得意様だけで売り上げが立っていたのに
お金をかけてまで広告を打つ事が信じられなかった。
「うん、亮も日本に帰って来た事だし
姉弟で会社を盛り立てて行けって」
「そうか、お父さんも中々やりますね」
亮は尊敬する父親の判断に感謝した。
「それで亮、香水はできてるの?」
「まだです。すみません」
「ファッションショーまでに発表できるかしら」
「努力します」
「頑張ってよ」
「はい」
しばらくして、三人が持ってきた洋服を計算し
千沙子が亮に合計金額を見せた。
「あっ、52万円!」
亮は振り返ってみんなの顔を
見ると満足そうな顔をしていた。
「まあ、いいか・・・」
亮はみんなの喜ぶ顔を見て嬉しかった。
「亮、みんな美人でスタイルが良いからうちの洋服が似合うわ」
千沙子が三人を見て満足そうにニコニコと笑った。
「ええ、素敵です」
「亮、彼女達とどういう関係なの?」
「あはは、彼女たちは秘密諜報部員です」
「馬鹿なこと言って」
千沙子が聞くと亮は千沙子の前で笑うだけだった。
亮たちがスタジオDを出ると亮は
みんなに聞いた。
「何食べましょうか?」
「焼肉がいい。明日の為に」
葉子がぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「うちの店は支払いはいらないからね」
千沙子が言った言葉を思い出した。
「あそこか」
亮が嫌な顔をした。
「森さん焼肉屋行きます」
亮が森に連絡をした。
「どうしたの?」
直子が亮に聞くと
「うちの店なんです」
「嫌そうな顔をしたけど・・・」
直子が不思議に思って聞くと
「昔、ある女性と行った事があるんです」
「もしかしたら、例の振られた女性?」
「ええ」
「可愛い、亮」
直子は声を出して笑った。
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森が合流して五人は銀座の焼肉屋銀遊亭の個室に入った
「いよいよ明日ですね」
亮は麻薬が出てくると言うパーティに潜入する事に
興奮を覚えていた。
「うん、俺は外で待機何かあったら
俺が命かけてみんなを守ります」
「カッコイイ、森さん」
ノリのいい葉子が森の腕に抱きついた。




