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グッド・ジョブ媚薬 1部  作者: 渡夢太郎
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シャンプー

直子は声を荒げて凄んで見せた。

「はあ、はい」

大橋は慌てて肩の智子の手を下し

直子は智子の腕を自分の肩に担いだ。

「ほら行きなさいよ、智子には黙っていてあげるから」

「はい、すみません」

大橋は逃げるように帰って行った。


「ありがとうございます」

陰に隠れていた亮が直子から智子の腕を取った。

「タクシー止めようか?」

「いいえ。車が来ています」

サンシャイン通りの出口に黒塗りの

高級車が止まっていて運転手が

ドアを開けた。


亮は智子を抱き上げて車の奥に座らせその脇に

智子が座り亮は前に座った。

「ねえ、この子酔っているだけじゃないわ」

「えっ?」

「こんなに意識が無くなるほど酔ったら

急性アルコール中毒になってしまうもの」

直子は智子の手首に指を触れ心拍数を数えていた。

「やはりそうですか」


亮は同僚の大橋を疑いたくなかったが、何か怪しい事を

智子にしていたのではないかと

思っていた。


「おそらく超短時間型のハルシオンじゃないかな。

即効性があって効果が2時間から4時間で

覚めるもの早いから」


「さすが看護師、詳しいですね」

「うふふ」

「でも、なんてお礼を言えばいいか?」

亮は直子に深々と頭を下げた。


「その代わりまた会ってもらうわよ」

「了解です」

直子は池袋駅で降り亮は智子の家のある練馬に向かった。

亮の膝枕で熟睡していた智子が目を覚ました。

「ここどこ?」

「大原さんの家に向かっています」

「あっ、松平君」

やっと状況がつかめた智子が体を起こした。


「あれ、私誰と飲んでいたんだっけ?」

直子の言った通り智子は飲んでいた時の事をまったく思い出せなかった。

超短時間型の睡眠薬は健忘が出やすい副作用がるのが原因かと思われた。


「あまりフラフラだと家の人に変に思われませんか?」

「大丈夫。もう全然眠くないわ。ちょうど良かった、あなたを家族に

紹介するチャンスだわ」

「えっ?」


「松平さんあなた東大薬学部、ハーバード大学院卒の

超エリートでしょう。

 憧れちゃう」

「ばれていましたか、

別に隠していませんでしたけど」


「そうか。女子ネットワークで情報が

伝わってきたわ。それにあなたは

いるだけで人を引き付けるオーラがあるわ、

あなたなら私を助けてくれそう」

智子は亮に首に腕を回して抱き付いた。


「助けるって?」

「二人きりになった時じゃないと」

智子は運転手の事を気にしていた。

「今度聞かせてください」

「じゃあ明日の夜に」


「わかりました。それよりずいぶんお

酒に弱いんですね」

「ううん、そんなはずないんだけど

大橋君と木村君と飲んでいたら急に眠気がして」

「やはり睡眠薬か・・・」

亮はつぶやいた。


亮は大橋が智子の体を狙って睡眠薬を

飲ませたのではないかと疑り

、腹立たしくてしょうがなかった。


「ところで、どうして松平君ここにいるの?」

「大原さんが酔って歩いていたところを

警察が保護しようとして

 いたところをたまたま通りかかった

僕が引き取ったんです」

亮はまったく口から出まかせを言った。


「えっ、えっ、私そんな恥ずかしい事を。

でもどうして大橋君達がいなくなったんだろう」

記憶が無くなった智子は混乱していた。


智子の自宅は練馬文化センター

裏の閑静な住宅街あった。

「ただいま~」

智子と亮が玄関に入ると母親と妹が立っていた。


「お母さん、松平さんです」

「初めまして松平です。御嬢さんを酔わせて

申し訳ありませんでした」

亮は体を直角に曲げて頭を下げた。


「智子の母です。話はいつもうかがっていますよ」

「妹の陽菜です。お姉ちゃんが

男性を連れてくるのは初めてだよね」

亮は入社して間もないのに自分の

話をされているとは思わなかった。

母娘に羨望のまなざしで見られている事

バツが悪い亮は帰ろうと

ドアのノブに手をやった。


「夫がまだですが、おあがりになって」

母親がスリッパを出した。

「いいえ、車を待たせてありますのでここで失礼します」

亮は再び頭を下げ外に出て車の前に立った。

「まって!」

智子が追いかけて来た。


「今日はありがとう」

「今夜の事は大橋君に言わない方がいい。

彼にも事情があるかもしれないから」

「わかった。なんか女性がいたような

気がしたんだけど・・・」

「そうですか?」

亮が言うと突然智子が抱き付いてキスをした。


「また、明日」

亮が車に乗って家に向かうと亮が

運転手に向かって話した。


「中島さん、今日はありがとうございます」

「とんでもない、社長が海外出張中なので

暇をしていたところです」

「いいえ、大原さんの居所を探してもらわなかったら

今頃どうなっていた事か、

 本当にありがとうございます」


「つかぬ事をお聞きしますが亮さん、

今のお嬢さんとお付き合いなさっているんですか?」

中島は亮と智子がキスをしている

ところを目撃していた。


「いいえ、会社の先輩なんですが。

きっと酔っていたからだと思います」

「そうですか」

中島はニヤニヤと笑った。


「僕の同期の男が彼女を酔わせて

悪さをしようとしていたらしいですよ」

「それは許せませんね、

社長に言って処分してもらったらいかがですか?」


「それが、父親が四菱銀行取締役の

息子でコネ入社らしいので」

「ひも付きとは面倒な事で」

「まあ、僕もコネ入社だけど。あはは」

亮は笑っていたが幸せそうな家庭の智子が

助けて欲しいと懇願した事が気になっていた。


「それでは池袋のお嬢さんとは?」

「ええまあ」

亮は今日関係があった直子の事を思い出して

曖昧な返事をした。


「早くお相手を決めて

お父上を安心させてください」

「あはは、それを言ったら姉貴二人の方が

心配ですよ。二人とも気が強いですから」

「そうですね」

中島は笑いをこらえた。


第四章 シャンプー


「おはようございます」

翌朝、智子は何事もなかったように振る舞っていた。

「昨日はずいぶん酔っていましたね」

何も知らない木村が智子に話しかけた。

「ごめんなさい、迷惑かけたみたいね」

「いいえ」


木村は何も覚えていない智子にホッとして大橋の方を見た。

そこに亮と智子が鹿島営業部長に呼び出された。

「大原君、松平君。わが社が研究開発していた

基礎化粧品とヘアケア商品が出来上がった。


 営業部に新たに販売企画課を作って販売をする事になった。

二人にはその課に今日づけで移動してもらう」

まだパッケージデザインが出来ていない資料のみが渡された。

「商品はどこですか?」

「ここだよ」

茶色い薬品ボトルがテーブルの上に置いてあった。


「これって何もまだまだできていないと言うことですか?」

「そう言う事だ、ネーミング、バッケージデザイン、

広告宣伝、販売までやってもらいたい」

「そんなにたくさんあるんですか?」

驚きで智子の声が裏返った。


「ああ、沢山ある」

「部長、こういう仕事今まで

誰がやっていたんですか?」


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