フェロモン
大橋は木村を誘うと三人は高田馬場の鶏料理店
「勝」に入りビールで乾杯をした。
「今日、取引が成立しました。これで5軒目」
ビールを飲み干すと大橋が嬉しそうに話をした。
「おおお」
木村は手を叩いた。
「木村君は?」
「3軒だよ。街のクリニックばかりだけどね。大橋君すごいね」
「父がちょっと手を貸してくれたんだよね」
四菱銀行の取締役の息子大橋は自慢げに答えた。
「松平さんはどうですか?」
「松平でいいですよ。年上でも同期ですから。
それが病院の先生が中々話を聞いてくれなくて・・・」
亮は同僚に松平さんと呼ばれるのはくすぐったく首を横に振った。
「病院にコネ無いんですか?1件くらい」
大橋はアメリカ留学していた亮はもっと知り合いが多いと思っていた。
「とりあえず、早く二人に追いつくように頑張ってみます」
大橋は「頑張ります」しか言わない亮に少し腹が立った。
「話は変わるけど大原先輩、いい女だよな」
大橋は木村と亮に顔を近づけ小さな声で言った。
「うんうん、あの長くて綺麗な足がたまらない」
木村がニヤニヤと笑った。
「この前の二次会、脇に座って大原さんの
太腿を触っても何も言わなかった。
今度はできそうな気がする」
「本当か?」
木村は女馴れしている大橋がうらやましかった。
「大原さん、あんなに美人なのに
付き合っている男性いないんですかね?」
亮は気になっている大原の情報を聞いた。
概して調子のいい奴ほど裏情報に
詳しいものだと亮はわかっていた。
「どこかの金持ちイケメンと付き合っていて、
社内の男には興味が無いという噂さ」
「なるほど」
亮は大橋の言っていた事に納得した。
「俺、絶対大原さんを落として見せるからな」
大橋はそう言って大原が自分の下に
なってあえぐ姿を想像していた。
「大橋君、会社一の美人を金持ちのイケメンと
取り合うんですか?しかも年上を」
木村は大橋には大原を口説き落とすのは
到底無理だとわかっていた。
「大丈夫さ俺に抱かれたら女はイチコロだよ。
このデカマラとテクニックで」
木村は大橋の自慢話を聞くのが嫌になって
オドオドと亮に聞いた。
「ところで松平・・・君って彼女いるんですか?」
「まあ一応」
亮は絵里子とアメリカの女性たちの事を頭に浮かべて微笑んだ。
「当然ですよね、相手はブロンド?巨乳?」
木村は髪を7、3に分けて黒ぶちメガネをかけていて
堅物そうな亮がそれなりの格好をすれば
もっと女性にもてるんじゃないかと思っていた。
「さて男同士じゃつまらないな、女の子を呼ぼう。
後輩が目白のテニスコートで練習をしているはずだ」
早大卒の大橋は人付き合いの苦手そうな亮をからかうつもりで
テニス同好会の後輩を呼び出した。
「先輩、ご無沙汰しています」
しばらくして女性が三人やって来た。
「早かったね、関根さん」
「すみません、今から飲みに行こうと
馬場駅に向かって歩いていたんですよ」
大橋は10分足らずで女性が三人も集まるとは思わなかった。
「紹介します。俺の同期の木村君と松平君です」
女性三人を木村と松平を紹介した。
「梅宮葵です」
「小畑加奈です」
「関根麻理恵です」
大橋と関根は深い関係であるらしく何も
言わずに麻理恵は大橋の脇に座った。
「三人とも今年3年生で来年は就活だね」
「はい」
大橋の話に一瞬だが三人の顔が曇った。
「やっぱり心配だよね、就活」
木村は三人に気遣った。
「インターンシップは参加した方が良いぞ。
上手くやれば早めに内定が取れる。
特に外資系は絶対だな」
大橋は先輩面して偉そうに言っていた。
「そうですか、頑張ります」
就職話が終わると葵は亮に比べ若く見え親しみやすそうな
木村に話しかけた。
「木村さんは出身どちらですか?」
「名古屋、白石区です」
「わあ、私岡崎です」
葵が言うと木村が答えた。
「おお、岡崎はおじさんが住んでるよ」
「本当!」
木村と葵が手を握り合った。
「ええと、松平さんの出身は?」
加奈は仕方なしに亮に質問した。
「東京の目白です」
「近いですね私は落合です」
その先、話の展開が無く亮が黙ったままでいると
加奈は話題を作ろうともう一度亮に話かけた。
「私テニス同好会なんですけど、
松平さんはテニスできますか?」
「ええ、やりますよ。普通に」
「本当ですか?」
加奈はやっと共通の話題が出来て笑みが浮かんだ。
「私、バックが苦手でなかなか安定しなくて・・・」
「それは肩甲骨を上手く使う事です。
体の捻りでかなりボールに威力が出ます。
そうすればわざわざフォアに回らなくても、
威力があるボールが返せます」
「ああ、松平君もテニスをやるのか。
俺はインターハイの2回戦まで行ったけど」
亮と加奈の会話を聞いていた大橋は
テニスのキャリアを自慢げに話した。
「僕は試合経験1回だけです。
大橋君の方が的確な指導してくれそうですね」
亮は優しく微笑んでテニスの話題を終わりにした。
すると加奈はスマフォを取りだした。
「すみません。LINEのID教えてください」
「えっ、いきなりですか?」
亮は積極的な最近の女子大生の行動に驚いた。
「男女の出会いは第一印象が大切なんだって
おばあちゃんが言っていた」
加奈は積極すぎる自分を恥じらい言い訳をした。
「確かに男女の惹き合いは遺伝子レベルだけど・・・」
「えっ、遺伝子レベルなの?」
加奈は亮が突然面白そうな話をするので
身を乗り出して亮に顔を近づけた?
「ええ、遺伝子は遠いほど優秀な子孫ができるらしいです」
「じゃあ、外人と付き合えばいい訳?」
「いいえ、たとえ日本人でも血統的に遠ければいい訳で、
5世代前まで無接触なら遺伝子的に遠い事になりますね」
「5世代って何年くらい」
「そうですね。1世代が30年ですから150年以上」
「きゃあ、面白い。それで他には?」
「他に?」
「何か面白い話ある?」
亮は何か面白い話があるか考えた。
「それじゃ・・・男女の付き合いは遺伝子
レベルともう一つフェロモンがあります」
「うふふ、フェロモン」
加奈は亮が一生懸命考え込んだ姿を観て笑った。
「女性は生理から14日目に多くのフェロモンを出すそうです」
「生理から14日目って何があるの?」
「あっ、それは排卵です。もっとも妊娠しやすい日にフェロモンを発して
男性を引寄せる訳です」
「そうか・・・なるほど」
加奈はそう言って自分の生理を日数えて指を折った。
「それ以外にも自分の気に入った男性が目の前に現れたり、
男性のフェロモンを嗅いだりするとやはり
フェロモンを放出するそうです」
「じゃあ、生理の無い男性は?」
「獲物を捕った時、戦いに勝った時。
今でいうとスポーツの試合で勝った時やお金を持った時、
つまり女性に力を誇示する事が出来た時
フェロモンが出て女を集め子孫を残す訳です」
「つまり強い男がフェロモンを発するわけかあ、
だからスポーツ選手やお金持ちがもてるんだ・・・」
亮たちの話を聞いていた葵が答えた。
「じゃあ、貧乏で力が無い男はもてない訳」
「そうなります。今の僕のように。あはは」
亮は木村と話をしていた葵が自分の話に参加してきた事で
おしゃべりをし過ぎた自分を反省した。
「さて、カラオケでも行こうか?」
亮の話にみんなが注目した事に嫉妬した大橋はカラオケに誘った。
「では僕はここで」
亮は財布からお金を取り出して大橋に渡した。
「えっ、えっ帰るんですか?」
加奈は亮を追いかけて来た。




