ホステス
「ああ、学生時代父の店で」
亮は学生時代12月には決まって美宝堂でアルバイトをして
一日数百万円の売り上げを上げていた。
亮は名刺を見ているとそこに高級な着物を着た
美しい女性が声をかけてきた。
「亮さん」
「あっ、絵里子ママ」
「亮さん仕事替え」
亮は絵里子と他人じみた会話をした。
「いいえ仕事です」
「たまにはお店に寄ってください」
「でも、一人で行くところじゃないので・・・」
「あのう、ご指名は?」
「チーフお願い」
亮が聞くと絵里子が答えた。
「雨宮さんですね、かしこまりました」
「あの子美人でしょ。うちのお店に誘っているのよ」
「止めてください、引き抜きは」
亮が冗談を言うと絵里子はクスッと笑った。
「今日仕事終わったらお店に寄って」
「でも、予算が」
「とにかく寄って」
絵里子が亮の手を握った。
「はい」
亮は普段外で会っているのでお店は久しぶりだった。
~~~~~
亮は、美容室の仕事の帰りの7時に蝶に寄った。
7時は銀座のクラブにはまだ早い時間で客はまばらだった。
「こんばんは」
「いらっしゃいませ。あら、美容室の受付の人、
うれしい来てくれたの」
声をかけたのは美也子だった。
「いいえ、ママに・・・」
「あら、ママのお知り合い?」
「はい、以前何度か」
「えっ、失礼ですけどお名前は?」
美也子は若い亮が何度か
高級クラブ蝶に何度か来ていたとは
信じられなかった。
「團と申します」
「團さん、ママはちょっと買い物へ行っているので
戻るまで待っていただけますか」
「はい」
亮はカウンターに座って出された水を一口飲むと
そこへ絵里子が戻ってきた。
「ただいま。あら、いらっしゃい」
絵里子はカウンターにいた亮に気が付いてうれしそうな顔をした。
「こんばんは」
「お願があるのよ。食事した?」
「いいえ、まだ」
「ちょっと、出ましょう」
「はい」
店を出るとすぐ近くにあるフレンチグリルに亮たちは入った。
「話は?」
「急ぎの話が有るの」
「はい」
「さっき、うちのホステス美也子さんと会ったでしょう」
「はい」
「彼女が引き抜かれそうなのそれを止めたいのよ。
彼女うちのナンバーワンなので
引き抜かれると痛手なの」
「僕がですか?そんなの無理ですよ」
亮が手を目の前で振ると絵里子が真剣な顔で亮を見つめた。
「彼女をアフターで誘って話を聞いて欲しいのよ」
「でも、もし・・・」
「関係を持ってもいいわよ」
「本当ですか?」
亮は突然の絵里子の話に驚いた。
「良いわよ。私との縁が切れても
絢香との縁は切れないんだから」
「あはは」
絢香の名前を出される亮は弱かった。
そこへ、後ろから女性が話しかけてきた。
「あら、絵里子ママ。素敵な方ね。恋人?」
「順子ママ。美宝堂のご子息よ」
絵里子はきつく言い返した。
「あっ、失礼しました」
「はじめまして、團亮です」
亮が立ち上げって丁寧に挨拶をすると順子は慌てて言い訳をした。
「すみません、絵里子ママがあまりに楽しそうに
話をしているので、ホスト遊びを始めたかってあっちで
噂しいて確かめに来たのごめんなさい」
順子が謝ると絵里子がそれに納得した。
「そうね。本当の事かも。亮さん素人に見えないわ」
「すみません」
亮はこれ以上ここにいたら突っ込まれそうだったので
帰る事にした。
「あっ、亮さん食事は?オーダーしちゃったんだから」
「そうか」
「これ、シャツとネクタイ」
絵里子は亮に袋を渡した。
「えっ?」
「似合いそうなネクタイが有ったから」
「ありがとうございます」
順子が席に戻ると亮は話し始めた
「それでスカウトされているってどうしてわかったんですか?」
「ちょっとね。銀座のスカウトマンから聞いたの」
※銀座のスカウトマンとは人気のホステスの移籍を行って
多額のスカウト料を取る闇の仕事だ。
「それで、美也子さんの給料は?」
「ホステスの給料はうちの場合は日給制1万円から3万円
ある程度お客さんを掴んだら時給に歩合を付けます。
それから美也子ちゃんのようにお客様を持っている娘は
完全歩合で売り上げの50%になるわ、だから美也子ちゃんは
先月の売り上げが900万円だから450万円、その代わり
お客様の支払いは全部ホステスが負って、請求と集金は自分でやるのよ」
「つまり個人事業主と言う訳ですね」
「そうよ。うちにはそんなホステスが
千佳ちゃん、美和ちゃん、里美ちゃん
英恵ちゃん、美也子ちゃんの五人いるわ」
「凄いですね。美也子さんだけで売り上げが
1千万円違ってくるわけですね」
「そうよ。良いホステスがいれば店全体の売り上げも変わるのよ」
「わかりました、絵里子さん頑張ってみます」
「お願いね」
「はい、また明日来ます」
亮は食事を終えると頭を深く下げて店を出た。
~~~~~~~~~
「素敵、絵里子ママ本当に素人なの?
彼一人でホストクラブできそうね」
順子は絵里子の耳元でささやいた。
「ええ、でも彼はれっきとしたサラリーマンよ」
「明日、来ると言っていたからママの店へ私行くわ」
「ええ待っているわ。独り占めするは
もったいないもの、うふふ」
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翌日、男から電話が有った
「御神さんの紹介で電話しました」
亮は7時に六本木のアマンドで
ごつくて堅物そうな森と会った。
「はじめまして」
亮は立ち上がって深深と頭を下げた。
「ほう、色々聞いていたけど感じが違うな
もっと軟派な感じだと思っていたけど」
森は高圧的な口調で言うと亮は森に名刺を渡した。
「松平?名前が違うけど」
「ええ、会社へは本名だと特別扱い
受けそうなので社長と相談して
母方の名前を使っています」
「なるほど。本名を使ったら周りの
女の子もほっておかないだろう」
「そうでもないです、ぼくは研究バカの変わり者ですから
モテた例がないんです」
亮は謙虚に答えた。
「俺は團さんが有名大学を出たボンボンの
腰掛けのサラリーマンだと思っていたが」
「父の会社美宝堂の跡継ぎは二人の
姉がする事になっています。僕はDUN製薬
で薬の開発と・・・」
「美宝堂ってあの銀座の?」
「はい」
「ところで御神さんとはどういう関係なんですか?」
「仁さんは父の親友の子供で仁さんの両親が亡くなった時、
父が仁さんを養って一緒に住んでいたんです。
本当の家族と一緒でした」




