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お題シリーズ

間違った場所 悪女

作者: リィズ・ブランディシュカ



 私には夢があった。


 友人にも夢があった。


 その輝きは、かけがえのない宝石だった。


 とてもまぶしくて美しかった。


 だから、間違ってしまったのだろうか。





 国の一番有名な場所。白の塔では、聖女が育成される。

 魔王に対抗するための、純粋無垢な存在を育てる場所。


 聖女はとても素晴らしい存在。

 誉れある仕事をこなす、人類の宝だ。


 だから、荒れたこの国の中では皆が、そんな素晴らしい聖女になりたがった。


 聖女になれるのは女性だけ。

 だから、女性として生まれたものは、ほとんどが同じ夢を持つ。


 女性達は誰もがライバルで、同じ夢を志す仲間だった。


 それは私のあの子も例外ではない。


 親友がいた。

 夢を語り合った。

 手を取り合って、一緒に頑張ろうと約束した。


 励ましあった。


 だから、今までずっと努力してきた。


 聖女が使う聖魔法の練習をいっぱいして、知識もたくさん学んで。

 白の塔行きの切符を手にするために、お金もためて、二人で試験に挑んだ。






 けれど。聖女見習いになったのは、あの子だけだったから。


 私は、旅立つあの子を見送る事しかできない。


 すぐに追いかけるから、と言って私は手を振った。


 でも、努力でなんとかなるものではなかった。

 聖女の適正は、たくさんの修練と勉強でのびたりするわけではないから。


 一緒に夢、叶えたかったな。


 私はここで、諦めればよかった?






 どうしても諦められなかった私は、お金の力を使って白の塔へ向かった。


 聖女ならば行わない方法で。


 こんな行為をしたって、駄目なものは駄目だと分かっているのに。


 たどりついた白の塔で見た人物、あの子は輝いていた。


 誰よりも、美しく、強く、気高く、清かった。


 一番の聖女になれるのはあの子だろう。


 一目でそう直感した。


 けれど、だからこそ、抑えていた嫉妬心が燃え上がった。


 あの輝かしい光景を、見てしまった。


 多くの人に敬われ、微笑むあの子の姿を。


 燃え上がった嫉妬の火に、よく燃え上がる薪がくべられてしまったら、あとは灰になるまで燃え続けるのみ。


 ここで、冷静に我が身を顧みればよかった?








 私は、感情のままに行動した。


 嫌がらせをした。


 濡れ衣をきせた。


 ある事ない事を、言いふらした。


 上司に、部下に、友人にも同じ事をして、輝く彼女の姿をくもらせようとあらゆる手をつくした。


 けれど、叶わなかった。


 手が届かない程の高みに上ってしまったあの子。とうとう私は追いかける事ができなくなった。


 スタートラインは同じだったのに、どこで間違ってしまったのだろう。


 私は、ズルして上った階段を突き落とされて、無様をさらす。


 きらびやかに輝く夢の階段。


 長く長く続く階段の下で、彼女を見上げる事しかできない。


 ここで、私は悟れば良かった?

 分を思い知ればよかった?







 嫉妬に狂った私は気が付いたらナイフを手にしていた。


 あの子に向かって降りあげるナイフは、とても危ない凶器だというのに、ひどく軽かった。


 あの子を愛する者達に阻まれ、返り討ちにあった私は、牢に繋がれる事になった。


 誰か教えてほしい。


 不相応な夢を抱いた事?

 自分の実力を把握できなかった事?

 友人の栄誉を祝福できなかった事?

 胸の内の感情を押し殺せなかった事?


 私は一体、どこで間違えたのだろう。




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