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幸福のつかみ方  作者: TK
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校外学習当日

読むことに集中していたら書くことを忘れてました(あほ)

 校外学習当日。俺は萌希と共に朝早くから電車に乗った。有村も同じ時間の電車に乗るようで、駅で鉢合わせたときはちょっとびっくりした。彼の私服も、俺と同じように味気ないものだったので親近感が湧いた。

 平日の朝ということもあって、人がとても多い。席には座れず、立つことになった。

 吊り革につかまろうとしたが、体勢的に苦しいものがあったので、ドア付近の手すりにつかまることにした。有村と萌希は俺に覆い被さるような形で立っている。

 満員電車なのでほぼ密着状態である。


 電車に揺られること数分。暇である。

 俺は電車内で騒ぐ人が嫌いで、自分は当然、静かにしているタイプだ。萌希も有村もあまり喋らないので、それぞれ己の携帯を見るために必死である。特にスマホゲームが大好きな有村。


 暇なので有村の顔を下から眺める。身長はこの前に173センチだと教えてもらった。篠宮ほどではないが、それでも俺とは20センチ差である。横の萌希も168センチあるので、どちらも見上げる形になってしまう。

 というか、俺の周りには高身長が多すぎる。断じて俺が小さいわけでは……ない……。


 いや小さいわ。平均身長に届いていないことは自分でもわかっているんだ。男のときは平均並にはあったのに、どうしてこうなった。


 スマホゲームに必死になっている有村を下から眺め続けていると、その視線に気づいた有村から目を逸らされた。

 人から見られ続けるのは恥ずかしいので、その気持ちは俺にもわかる。

 悪いことをしたな、と思いながら更に揺られ続け、目的地に到着した。


「ぷはーっ! 空気が美味しい気がする!」


 駅のホームに降り立った瞬間に両手を上げて騒ぐ萌希。人は普通に多いので、割と周りに迷惑である。


「やっーと解放されたぜ……苦しかった……」


 有村は人混みが苦手なのか、本当に疲れた、という顔で深呼吸している。顔が若干赤みがかっているので、それほどまでに窮屈だったのだろう。


「ほら、二人とも。行くぞ」


「あ~、待ってよ蓮ちゃーん。迷子になったら危険だよ?」


「ならねーよ!」


 ツッコみながら、俺は改札を通る。ICカードの残高が残り千円ほどになっていたので、後でチャージしなければ。


 天気は晴れだ。快晴ではないものの、過ごしやすい気候である。

 学校指定の待ち合わせ場所には偉人の銅像があり、わかりやすくていいと思う。篠宮と高梨は既に到着していた。

 高梨はこちらに気がつくと、手を小さく振ってきた。隣の篠宮が大きすぎるのもあるが、高梨はあまり身長が高い方ではなく、むしろ低めで俺は安心する。


「何か失礼なこと考えてない?」


「いや、何も?」


 いざ近づいてみると、俺のほうが小さい。悲しい。


 身長が低いと色々と不便で、さっきの電車でも吊り革につかまれなかったり、棚の高いところにある食器が取れなかったり、相対的に腕が短い。男の頃の感覚で過ごしていると、すぐ転びそうになる。

 まぁ、もう慣れ始めているのであまり問題はない。


「集合時間まではまだ結構あったはずだが、皆早いな」


「お前こそ。絶対一番に来ただろ」


「いや、俺は二番目だった。高梨が思いの外早くてな」


 俺がマジか、という顔で高梨を見ると、彼女はみるみるうちに赤くなっていった。茹でられて頭から煙が出そうな勢いだ。


「な、なによ! た、楽しみだったとか、そういうのじゃないから!」


 そっぽを向きながら全力で否定する高梨を見ながら、一同は和む。俺をいじめてきたときも結局最後までやらずに逃げていたし、根は良い子なんだろう。




 他のクラスの生徒もぞろぞろと集まり、各クラスの担任が点呼を取る。こう見ると、やっぱりうちの学校は生徒が多いな、と実感する。

 点呼が終了し、担当の教員が今日について説明を始めた。


「皆さん待ちに待った初の校外学習ですね。この後解散し、十五時にまたここに集まってください。それからは各自自由解散とします」


 待っていたかと言われると、特に待っていたわけではない。だがそれは昨年までであって、今年は結構楽しみだった。

 今までは班で孤立していて、班の中で気まずい空気を作るのが得意だった。

 今年は友達と言える友達が班員なのだ。全力で楽しんでやる。


 班長の萌希が細谷先生から紙を受け取る。今日の行動予定が書かれたスケジュール表である。

 内容は遊園地で遊ぶことしか書かれていない。よくこんなのが受理されたものだ。


「十五時ですよ、十五時ですからね! それじゃあ皆さん、解散!」


 細谷先生の掛け声で、うちのクラスは一斉にばらける。萌希は一人走り出したが、俺含む他の四人が歩いているので、口をとがらせながらも歩調を揃えた。


 遊園地に到着し、萌希が五人分のパスポートを購入。彼女の財布からぽんぽんと万札が現れるものだから、思わず笑ってしまった。


 周りを見れば、うちの学校の生徒であろう少年少女もそこそこいた。だが、やはり入園料が高いからなのか、そこまで多くはない。

 平日だというのに、園内はかなりの人で賑わっている。家族連れはあまり見かけないが、男女二人組はそこら中にいる。


 カップルかぁ。


「よし、みんな、まずはあれに乗ろう!」


 萌希が元気よく指差したのはとても大きなホテルのような建物。上昇して落ちるだけのアトラクションだが、とても人気である。


「いきなりあれ乗んの……ハードだな……」


 有村はあまり乗り気ではないようだが、それを萌希が無理矢理引っ張る。

 一応絶叫マシンの類なので、俺は結構楽しみだ。実は初めて乗る。


 十分ほど並び、案内のスタッフに席に通される。奥から有村、篠宮と座り、別の列に俺、萌希、高梨の順で座った。

 やはり基本的に四人なので、必然的に二人と三人でわかれることになる。俺としては皆で一緒に乗りたいのにな……。


 スタッフの人に見送られ、ゆっくりと上昇していく。前では有村からガクガク震えており、隣の篠宮は不動である。面白すぎて、声を殺して笑う。

 隣を見ると、萌希は楽しそうにしているが、高梨は怖いのか、不安そうな表情をしていた。


 やがて上昇は止まり、数秒の沈黙。

 突然音声が流れ、真下に急降下する。


「ウオオオオアアアアッ!!」


「いぇぇぇぇぇぇいっ!!」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 各々が叫ぶ、一部を除いて阿鼻叫喚の図。

 一度ガクッ、と急停止し、また上昇する。そして二度目の落下。有村と高梨が絶叫する。これでこそ絶叫マシンだ。

 落下途中に一瞬だけ外の光景が見えるのが粋である。


 アトラクションが終わり、安全ベルトが緩まる。スタッフに案内され、順路に従って歩き出す。


「なんだよこれなんだよこれ! こえーよ! 死ぬぞ!」


「体が浮く感覚は新鮮だったな」


 有村は涙目になりながらも篠宮のことを揺らしている。その篠宮は落ち着いて感想を述べている。

 俺はというと、めっちゃ楽しんだ。興奮気味の萌希は置いといて、高梨は足を震わせながら俺にしがみついていた。


 落下中に撮られていた写真の有村と篠宮の顔が秀逸すぎたので、一枚買った。

 目を瞑って口を大きく開けている有村と、超絶真顔の篠宮。俺と萌希は笑顔で、高梨は泣きそうな顔をしていた。


 俺、良い笑顔してる。

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