始まる高校生活
自分の世界を繰り広げたいな、という思いで書き始めましたが、どうやら語彙力が致命的に足りないようなので、書いているうちに養おうと思います。
よろしくお願いします。
俺の名前は鳴海蓮。
どこにでもいる普通の男子中学生だ。
中学生といっても、高校受験は終わり、中学も卒業しているので実質高校生みたいなものだが。
卒業後の長めの休暇も今日で最後で、翌日の入学式の準備をしている。
忘れ物が無いよう、最終チェックを終え、クローゼットに制服をしまう。必要なものはすべてリュックに入れたはずだ。
小学校から中学校へ上がる時は受験なども特になく、市立中学へと入学した。
だが、高校となっては話が違う。確かに、名前を書くことができれば合格する、とかいわれている高校もあるのだが、親が何かとうるさいのでそこそこな進学校を受験した。まぁ、一番の大きな理由は家から近くて通学が楽なことだ。
結果は晴れて一回目の選考で受かることができた。
もともと、学力自体は大したことはなく、自分では中の上くらいだと思っている。
受験した高校は偏差値が高く、合格するか不安であったが、試験問題と噛み合ったのか、奇跡の高得点を叩き出すことができた。面接は当たり障りのない事を喋って切り抜けた。
「蓮、明日は大事な日なんだから、早く風呂入って寝なさい」
「あぁ、そうだな。そうするよ」
残業帰りの父にそう言われ、手早く風呂を済ませ、布団に潜る。
─────────
翌朝、俺は早くから起床し、朝食と弁当を作っていた。
俺は父子家庭に育ち、父、兄、俺の三人家族だ。
兄は俺と十歳も離れていて、既に社会人として働いている。会社の寮に住んでいて、つまりはこの家にいるのは俺と父の二人だ。
母は俺を出産した後、容態が悪化し他界した。なので、俺は母の顔を見たことがない。
父は母が亡くなったとき、自我を失い、兄に暴力を振るったりしてしまったらしい。幸い、早いうちに正気に戻りはしたが、兄は父に対して嫌悪感を抱いてしまった。
その嫌悪感は俺にも降り注ぎ、兄が高校を中退して家を出るまでは、俺はひたすらに虐げられていた。
お前が母さんを殺した。
お前は悪魔の子だ。
お前なんていなければ良かったんだ。
等、様々な罵詈雑言を浴びせられる日常だった。
兄が家を出てから八年間、小学校に入学した頃から、俺と父の二人暮らしは始まった。
父は優しく、俺を育ててくれた。
最初はコンビニ弁当ばかりを食べていたが、父への負担が大きく、俺も何か手助けができれば、と思い、中学に入ってからは、ネットを見ながら料理をするようになった。
俺には才能があったようで、何をどうしたら美味しくなる、等が素材を見ただけでわかるようにまでなった。
それからは朝昼晩の食事と父の弁当を毎日欠かさず作っている。
「……何も、こんな日にまで作らなくてもいいんだぞ」
俺より三十分遅く、父が起床する。
「いや、もう癖付いちゃったしね。父さん忙しいし、俺も頑張らないと」
「そうか……」
父と他愛もない会話をしながら朝食を終える。
そのまま時間は流れ、父は出勤するために家を出た。
父を見送り、その一時間後には俺も家を出る。しっかりと戸締まりをして、新しい制服を着て元気に飛び出した。
今日は快晴だ。
─────────
「うわー、相変わらずでかいなこの学校」
校門の外からでもわかる大きな校舎。それもそのはず。総生徒数は四桁、しかも部活動も豊富で敷地の半分は部活で使うグラウンドやコートだ。
校門にはでかでかと『入学式』と立てかけてある。
門をくぐり、まず目に入るのは大きな噴水広場。文化祭などで訪れた時には、ここに沢山の出店があったなぁ。
すれ違う生徒らしき人は誰一人として見当たらない。もしかしたら時間を間違えているのかもしれない、と思い、日程表を確認した。
「……やべ」
どうやら、新入生の登校は十時だったようだ。
現在時刻は九時。一時間も早く着いてしまった。
「はぁ、その辺で時間潰すかぁ。あーやらかした」
俺は校門を出て近くにあるカフェに向かった。
この店はよく通うところなので慣れている。開店時間が九時でよかった。
こんな朝から制服で注文したら、店員から怪訝な目で見られたが気にしないでおく。俺はサボりじゃねぇ。
適当にタピオカティーを頼んで席に座る。別にJKみたいなことがしたいわけではない。純粋にタピオカが美味しいから頼んだだけだ。
タピりながら携帯を眺めていると、自分と同じ制服を着た女子が一人、タピオカミルクティーを購入していた。
割と近い席に座ったなこの娘。男がタピオカ飲むな、等という偏見を持っていなければいいが。
「……ねぇ」
「……?」
「ねえってば」
携帯に集中していて気が付かなかった。いや、気づいてはいたが、呼びかけの対象が俺だとは思っていなかった。
「俺?」
「うん。貴方もこの学校に?」
「あー、はい。早く来すぎてしまって」
なかなか馴れ馴れしい少女だ。初対面相手によくもまぁこんなタメ口をきけたものだ。
「そうなんだ。私もなの!」
でしょうね。まだ三十分以上ありますもの。
俺は彼女のつま先から頭のてっぺんまで流し見する。
髪は短いショートボブ。ふわふわしていて触ると気持ちよさそう。
健康そうな日焼け跡を見るに、運動系の少女なのだろう。身長も高いし、気が強そうな顔つきも相まって、インドアな俺なんかより圧倒的に強そうだ。
そして何より美人。優しそうな母さんの写真とは違い、肉食系美人だ。偏見だけど。
「前髪長いね、私より」
「切るお金がないんです」
「あはは、タピオカ買うお金はあるのに?」
俺の前髪は目元が完全に隠れる程まで伸びている。受験期には流石に切ったが、伸びるのが早かった。
それから特に面白い会話があるわけでもなく、お互いに名乗ることもなく、二人ともが自分の世界に入っていった。
「そろそろ時間ね、行こうか」
少女がそう呟く。
時計を見れば十時の十分前。
俺たちは立ち上がり、再び校門をくぐって、案内に従った。
人が増えたためか、いつの間にか、あの少女とははぐれていた。
クラス分けはもう行われているようで、十二個ものクラスに分かれていた。俺はL組のようだ。
「Lっていうと、最後の組か。教室はどこにあるんだ」
案内図を確認し、L組の教室を探す。
すると驚いたことに、L組の教室だけ別の棟にあるではないか。
案内の人に訊いてみたところ、今期はいつも以上に新入生が多かったので教室が足りなかったとのこと。
いくら教室がなかったからって、これは酷いのでは?
そんなことを思っても意味がないので、仕方なく教室へ向かう。
教室で、教員に式の流れを教わる。
「以上が式の一通りの流れになります。それから、ここにいる人たちはこれから一年間、クラスメイトとなる人たちなので仲良くしてね。それじゃ、時間まで待機していてください」
辺りを見回してみれば、先程の少女がいるではないか。
彼女は俺に気がつくと、微笑みながら手を小さく振ってきた。俺もそれに手を振り返す。
時間が経ち、新入生入場の時間だ。
広い体育館で、A組から順番に入場していく。つまり俺たちは最後である。
華やかなファンファーレとともに俺たちは入場する。
全員が席に着き、校長が挨拶する。
その後、新入生全員の名前が呼ばれ、職員紹介やら何やらがあって、俺たちは退場した。退場の時は最初に出ることができた。
教室へ戻ると、担任が自己紹介をした。
「一年間、L組の担任をすることになった、細谷沙由です。担当科目は英語です。よろしくね!」
式の流れを説明してくれた人とはまた違う人だ。
てっきり、先程の人が担任なのだと思いこんでいた。
それにしても、まだ若そうな先生だ。まだ二十代なのではないか。
「さて、早速みんなに自己紹介、といってもらいたいところだけど、今日はこれで解散です。詳しいことは明日以降やるから、みんな気をつけて帰ってね!」
ふむ、自己紹介か。内容を考えておかないとな。
こうして俺の高校生活は始まった。
ゆっくり、自分のペースで更新していこうと思います。