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【長編ダークファンタジー・完結済み】煙だけを食べる  作者: 佐藤さくや
第一章 原風景
14/46

十四 老人と海 四

 

 十四

 

 まとった炎は、完全に失われてる。

 瀬木根は、静かに高度を下げる。


 竜と海牛が、低いうなり声を上げている。しかし、対峙したままどちらも動かない。


 海牛のうしろに、瀬木根は立つ。


「お前、こいつと会話とかできないのか」


「こいつに言葉が通じたら、できるよ」

「じゃあ、無理そうだな」


 瀬木根は前だけをみて、陸を目指した。


 凍った建物。そこを抜けて、緩いのぼり坂。門。建物自体は、凍っていない。


「吉光さん、氷生」


 自分の声が、やたらと響いた。遠くで、獣の叫び声がするだけだ。二人はいない。


 氷生が水に近づくと、と吉光は言っていた。


 港の近くはあの見晴らしのよさだ。二人の姿を、見落とすわけがない。二人はどこにいったんだ。


 上空へ、瀬木根は体を浮かせる。


 他の死神たちも姿がない。外の世界へ逃げたのか。


「別に、一回くらい、死んでもいいじゃん。聞く限りじゃ、氷生はまだ一回も死んでないんだし」

「黙ってろ」


「すぐそうやって、怒る」


 他の死神の能力で逃げたのか?


 さっきの通信系統の男は、どうなった。 


 黄色い線が、宙に走った。


「外倉の国と連絡をとり合っていたやつらが、何人かいた。氷生を外倉に渡すつもりだ」


 吉光の声。俺か、加藤に話しているのか。


「吉光さんと氷生は、一緒にいるんですか?」 


 大声で、消えた黄色い線の方に言う。


「こっちからの声は、届かないのか。グレイ。吉光さんと氷生の居場所を教えろ。なにか、ないのか」


「氷生はいま、私の毒で眠っている。しかし、竜が呼んでいると氷生は言っていた」


 声。


「吉光さん、どこに」

「瀬木根さん」


 加藤がいた。


「ここにはいない、二人とも。でも、声はするんだ」

「大野という死神の能力です、あの黄色い線は。本当なら、こっちの声も届くはずなんですが」

「どこにいるのか、こういうとき、どこに逃げるとか決まっていないのか」

「竜と氷生をとにかく遠ざけろと、吉光さんは言っていました」


「外の世界か?」

「いえ。それはわかりませんが」

「でも、声が届くってことは遠くないってことじゃないのか。それに、場所を言わない理由は」


 裏切った連中から、逃げているのか?


「瀬木根、瀬木根」


 グレイの声に振り返る。


 その風景。とっさに、瀬木根は加藤の体を突き飛ばした。


 氷が、風のようにすべてを包み、迫ってくる。そして、突き抜ける。青白い冷気の塊が、瀬木根の体を吹き飛ばした。




「おい、瀬木根、おい」


 座っているようだ。


 いや死んだか、俺は。


「大丈夫ですか、瀬木根さん」


 グレイと、加藤が叫んでいる。声は聞こえているから、多分俺は生きている。体は、どうなったんだ。


 門のところに加藤を突き飛ばした。加藤は生きのびることができたんだろうな。


「加藤、瀬木根の顔をぶっ叩け。こいつはこんなのじゃ、死なないからな」


 乾いた音がした。


 瀬木根は倒れそうになり、思わず手をついた。


「瀬木根さん」


「加藤、お前、大丈夫か」


 意識が朦朧とする。


「俺は平気です。でも、瀬木根さんの足が」


「足? ああ、これか。グレイ、なんとかなるか」


 瀬木根はそれに触れる。右足の膝から下が、氷漬けになっていた。冷たいが、普通

の氷でないのはわかる。あの竜の、いや氷生の能力だろう。


「さっきから、火を当ててるよ。でも、溶けない」


「そうか。加藤、吉光さんたちの声は?」


「いえ、あれっきりです」


「竜は?」


「多分ですが、氷生を追ってます。あの竜」

「氷生を、食うつもりか」


「わかりません。ただ、一番最初に竜が現れたときも、もしかすると氷生を狙っていたのかもしれません。村じゃなくて」


 瀬木根は、大きく息を吐いた。


「はあ、じゃないよ。落ちついてる場合か」

「グレイ。お前、俺になにか隠してることはないか。たとえば、他にも使える能力があるとか」


「まだ、ないよそれは。あの扉のやつだけだってば」

「そうか。じゃあこい、あの扉を出すぞ。二人のところにいく」


 腕だけをのばして、瀬木根はグレイの頭に触れ、一体化しようとした。


「まず、足をなんとかしろよ。頭でも打ったか?」


「足か。ああ、そうだな、お前が正しいよ」


 不思議と、瀬木根は笑いたくなった。


「え、気持ち悪い。なに笑ってんの」


「いいから、一気に燃やすぞ。加藤、少し離れてろ」


 座ったまま、グレイと一体化して、瀬木根は集中した。氷は、体の外側にだけ、貼りついているらしい。


 火。

 ではなく、炎で燃やした。


 辺りが一瞬だけ赤くなる。体の皮がめくれるように、氷はゆっくりと剥がれた。そして、そのまま消えていった。立ち上がり、軽く地面を蹴ってみる。特に問題はないらしい。 


 いや、震えている。


「おい」

「力が入らないだけだ」

「宮内の氷とは、なにか違うみたいだな」

「そうだな。加藤、一応聞くが、ここで移動系統の能力を使ってみてもいいか。扉を出して、別の世界へいけるような、かなり強い能力だ」


「おそらく、ここでは使えないんじゃないかと思います。もし、この世界を独立させる能力を持つ死神が、竜に殺されたりしていたら、すでにこの世界は崩れているはずです」


「内側で、そういう移動系統の能力は、制限されるのか」

「そうなります」


「じゃあ、試しに」


 グレイが体から離れて、勝手に能力を使った。宙に体で線を引く。しかし、その線はそのまま消えた。


「あらら」

「なあ、加藤。村の中には、その、お前の言う世界を独立させる能力を持った死神は一人もいないな?」


「え?」

「隣か、湖の対岸か?」


 瀬木根が聞くと、加藤は考える表情をして、目をそらした。


「吉光さんもこの村も、無理をし過ぎたんだ、きっと」


 加藤は口の辺りを動かすだけで、返事をしない。


「無理やり、どこかに閉じ込めてるんだろ。この世界を保つために、必要な死神たちを」


 瀬木根は自分が考えていることを、言ってしまおうと思った。


「無理に作って、無理に守ってきた世界だよ、ここは。仕方なく、吉光さんに従ってきた死神も多いんじゃないか。一回ぐらい死んでもいいなんて、そんなふうに普通の死神はきっと考えないよな。怖いだろ、死ぬのは」


「瀬木根さん」


「毒、だったよな。吉光さんの能力は」


「なんで、わかるんですか」


 そう言って、加藤は着ているものの胸元を開いた。紫色の大きな痣。


「一ヶ月近くもここにいて、気がつかなかった俺は、馬鹿だ。お前らも本当は外に出たいんだろう」


「一定の期間以内に、解毒をしてもらわないと、苦しんだ末に死にます。病気のようなものです。でも、吉光さんは、完全には解毒をしてくれません」


「病気か、首輪みたいだな。みんな、吉光さんに従うしかなかったんだな」


「かわいそうなやつらだな。さっさと一回死ねば、楽になれるのに」


 あきれたという感じで、グレイが言う。


「それをできなかったのが、ここにいま残っている俺たちなんですよ」


 加藤は崩れるように、その場で膝を折った。


「加藤。あの人は臆病だ。そして、お前らもな。お前も、外倉の国にいきたいのか」


「俺は」


 顔を上げた加藤を、瀬木根はあわれに思った。


「氷生を犠牲にしてまで、外倉の国にいきたいのか?」


 無表情のまま、瀬木根は聞き返す。もう加藤の心の弱さが、痛いほどに瀬木根には

わかっていた。


「瀬木根さんを村から遠ざけるのが、俺の役目でした。すいません。俺はもう自由になりたいんです。外の世界へいきたい」


 小さな声だった。しかし、それは叫びだった。


「そうか、わかったよ」


 それだけを瀬木根は言葉にした。自分の価値観を加藤に伝えたところで、もう意味はない。こんなところにいまいる時点で、加藤は結局、覚悟を決めきれなかったということだ。


「最高にむかつくやつだな、加藤、てめえ。じゃあさっさと吉光たちの居場所を吐け。いますぐ言わないと、骨まで焼き尽くすぞ、こら」


 グレイが、加藤の腹に体を押し当てながら、言った。


「もうわかったから、いい」

「そうか、わかったのか」


「いくぞ、グレイ」


「え、わかったの?」


「あの、せり出した半島だ。俺がまだいってないのは、あそこしかない。いつも向こう側は、別の死神が調べていたからな」


 吉光、そして加藤たちに対して、腹が立たないと言えば、それは嘘になる。


「そうです。対岸です。港の奥の森に、二十人。逃げられないような状態でいます。俺たちは、そいつらも開放するつもりでした」


「なあ、なんかどっちが悪いのか、よくわかんなくなってきたぞ、瀬木根。どうする?」


「いってから、考える。まずは、氷生と吉光さんの安全を確認する」


 グレイの言う通りだと、自分も思い始めている。


「案内しろ、加藤」


 加藤は一度、自分の胸の痣をみてから、大きく頷いた。


 港は凍りついたままだ。だが湖は、氷面が割れている。竜も、あの海牛もいない。 


 加藤が前を飛ぶ。すぐに、湖の対岸についた。空から見下ろしているが、港のすぐ奥は、森になっている。建物らしいものは、なにもない。


「静かだな。竜はどうなった、グレイ。わかるか?」


「いない。氷生の中に戻ったんじゃないの」


「なにかの能力で感知したりは、できないか」


「グレイにも、できないことはある」


 二人は降り立った。


 黙って歩み進んでいく加藤のうしろに、瀬木根は続く。


 森の中。いや、斜面になっているから、山を登っていることになる。もう、急げとは言わない。いびつなこの世界は、多分、もう二度と元には戻れない。


 ちゃんと日々があった。吉光と氷生と食卓を囲んだし、加藤や他の死神ともよく喋った。


 加藤が足を止めた。死神が数人倒れていて、声を上げながら、のたうち回っている。加藤が駆け寄る。しかし、血は流れていない。


 これが、吉光の能力なのだろう。倒れている死神たちは目を見開いて、自分の胸のあたりに手をやっている。口も大きく開いて、息をする音がはっきりと聞こえる。それを残酷な気持ちで、ただ、瀬木根は見下ろしていた。


「加藤。吉光さんのところへいこう。なにも、できることはないんだろう?」


 加藤の背中に、瀬木根は問う。


 加藤が急に立ち上がり、そして走り出した。


「おい」


 グレイがそう言って、追いかけようとした。瀬木根は手を伸ばし、グレイの頭をつかんで、引き寄せる。そして、一体化した。


 あとを追う。


 木がなくなって、視界はひらけた。


 平地。


 そこに加藤が、倒れている。だが、瀬木根はもっと遠くに焦点を合わせた。小屋がある。


 その前。数十の死神が輪をつくっている。その輪の中に吉光と氷生、そしてそれを守るように数人の死神がいた。


 しっかりとその状況の意味を、瀬木根は理解することができた。追い詰められたというより、どちらも動くことができないのだろう。


 吉光は、氷生の前に立っている。


「どうするんだよ」


 ふてくされた感じで、グレイは言った。さあな、とだけ瀬木根は呟く。本当にわからない。しかし歩みを進める。倒れている加藤を無視して、横を抜けた。輪に近づく。


「吉光さん」


 声を張った。その場にいた全員が、体を一瞬ぴくりと動かして、瀬木根に注目した。迷っている。それをはっきりと自覚している。 


 あの街。 


 死神になった頃の自分に似ているんだ、みんな。吉光のしていることにも、見覚えがある。だから、なんとなくわかってしまうのだろう。


「瀬木根さん、きてくれたのか」


「車椅子に、座っていなくても大丈夫ですか、吉光さん」


「毒は、薬にもなる」


 輪をつくっていた死神たちが、それぞれの戦闘の構えをとる。すでに、全員が相棒と一体化している。


「やめてくれ。下手に動けば、吉光さんが能力を使うんだろ。俺は、あんたらと戦いにきたわけじゃない」


 しかし、構えだけである。瀬木根の言う通り、死神たちは動けない。瀬木根は、その輪の中に入った。


「吉光さん」


 自分の足で吉光は立っている。小さい。そのうしろに氷生もいた。吉光の腰の辺り

にしがみついている。目には涙があった。


「氷生、氷生。瀬木根さんがきてくれた。もう、大丈夫だ。泣くことはない」


「あそこで倒れている加藤から、俺はすべてを聞きました」


 氷生が目の前にいる。だから、瀬木根は言葉を濁した。やはり、見上げてくる吉光の目の光は、強い。


「大丈夫だ」


 吉光は振り返って、氷生の頭を撫でた。


 能力。泣いている氷生は、目を閉じた。涙がこぼれる。そして、その場にしゃがみ込んだ。吉光は、氷生の体をゆっくりと横たえた。


「眠っているだけだ。問題ない」


 言葉が必要なら、語る。力が必要なら、戦う。


「私が瀬木根さんに触れたら、一瞬でこの手はなくなるだろう」


 吉光は、細い蛇が巻きついている自分の手を、みつめた。細かなしわがある。


「吉光さんも、あと一回の命なんですね?」


 瀬木根が言うと、吉光は口元だけで笑った。それから、ゆっくりと首を縦に振る。


「最初は、自分の身を案じて、こんな世界を私は作った。そう言っていい。しかし、いまは氷生のための世界でもあるんだ。瀬木根さん、氷生をこいつらに渡すことだけは、絶対にできない」


「氷生を守りたいんですね、吉光さん」


「この最後の命は、氷生を守るために使いたい」


 そう言って、吉光は口をかたく結んだ。吉光のその言葉にも、表情にも一切の嘘はない。


「俺も、氷生の味方でいたいですよ」


 吉光のそばにいる数人の死神は、仕方なく吉光の言うことを聞いているという感じはない。


「誰にも手出しをさせない。俺が、氷生を守ります。だから、こいつらの体の毒を抜いて、自由にしてやってください」


「それは」


「もちろん、この小屋の中にいる死神たちも、全員解放してください」


「この世界がなくなったら、氷生はこの先、どうやって生きていけばいいんですか。


 あなたが、氷生の面倒をみてくれますか、瀬木根さん」



「氷生には、吉光さんがいる」


「私が死んだあと、氷生はどうなりますか。私はあと一回で死ぬんだ。瀬木根さんが氷生のことをみてくれるなら、私は解毒する。この世界を捨てる」


「俺が?」


「お願いします。あなたには、強力な戦闘系統の能力がある。あなたなら、この先も氷生を守れる」


「まあ、瀬木根より強い死神なんて、探せばいるぞ。でも移動系統の能力もあるから、いざというときは、このグレイが守ってやるぜ。氷生は、一人でも生きていけるだろうけどな」


 グレイが瀬木根から離れて、空中でくるくると回った。


「いや、氷生が一人で生きていけるようになるまで、俺がそばにいます。俺が責任を持って、氷生を守ります。だからもう、この世界にこだわるのをやめてください」


「小屋の中にいる死神たちの能力を止めたら、この世界は、外倉からも、五稜からもみえるだろう。だから、死神たちを解放したら、すぐに氷生をつれて、どこか遠くへいってもらえませんか」


「任せろ、グレイが責任を持って、果てまで飛ばしてやる。安心しろ」


 グレイが降りてきて、吉光の顔を真っ直ぐにみている。


「吉光さんも、もちろん一緒に」


 瀬木根が言いかけた。吉光は、目を細めた。笑っている。そのまま前のめりに、倒れた。


「吉光さん」


 背中が、わずかに赤い。瀬木根は駆け寄って、吉光を抱き起こした。


「すいません。もう、そろそろですね」


 吉光が呟く。


「おい、みんな、痣が消えていくぞ」


 一人がいきなり、叫んだ。それぞれ、自分の胸元をのぞき込んでいる。


「怪我をしていたんですね」


 血が滲んで、それは止まらない。もはや、流れていた。抱いている瀬木根の手に温みがある。いまのいままで、能力でおさえ込んでいたのか。


「瀬木根さん」


 加藤が走ってくる。そしてつまずいて、転んだ。


「もう、終わったんだ加藤。お前らは自由だ」


「瀬木根さんも、いってください。氷生は深く眠らせています。私が死ぬところをみせたくない」


 瀬木根に抱かれたまま、吉光は小さな声で続けた。


 小屋からわらわらと、死神が出てくる。


 まだ加藤は這うような格好で、吉光をみていた。 


 瀬木根にはわかる。抱いている吉光の血は、もう足元に溜まりをつくっている。そして、明らかに体は軽い。


 死神が死にゆくとはこういうことなのだと、瀬木根はあらためて認識した。


 視線を上げる。 

 不意に、瀬木根はおかしな感覚に襲われた。  


 すべてが、ゆっくりにみえた。


 吉光と氷生を守っていた数人の死神が血を流して、倒れた。


「おい」


 瀬木根は、そう呟いた。


 一人の死神が、横たわっていた氷生を背中にかつぎ上げる。


「逃げるぞ。もう、吉光さんは死んだ」


 氷生をかついだ死神が、太い声で叫ぶ。


「なにを、言ってるんだ」


「外へいくぞ、もう俺たちは自由だ」


「やめろ」


 その死神は走り出す。笑っている。


 そして白くなり、凍った。


 その表情のまま、まるでガラスか透明な飴のように、かたまった。


 抱かれたまま、首を上げて、氷生が目を開ける。


「ねえ。ねえ。ねえ、なにを、してるの?」


 瞬きをしない。


 氷生は言う。


 男の体にひびが入り、砕けた。


 かつがれていた氷生は腹から地面に落ちたが手をついて、すぐに体を起こした。


 瀬木根の方をみている。


 血のたまりの中で、瀬木根はまだ、瀕死の吉光を抱いていた。


 広く、なにかの音が響いた。死神たちの驚きの中、膜のようなものが空に張りついた。瀬木根も見上げていた。


「氷生、やめなさい」


 言った直後、吉光は咳き込み、口から血を吐き出した。


 言葉も、なにも氷生には届いていない。


 不意に、影が差した。

 巨体である。


 小屋が四つの太い足で、踏み潰された。


 氷生の竜が、起きた。


 吉光を抱いたまま、瀬木根はただ、見上げている。


 地響き。視界が、上下に揺れる。


 その凍った空に向かって、竜は凄まじい叫びを放った。


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