種族会議
鬼雨が王になり、リリィが去り、能力が完全に目醒めて、半年が過ぎた。
もう、かつての鬼雨はそこにいはいない。銀髪に赤い瞳、それに口元に鋭く尖った八重歯が2本。黒い装束が全体を包み、赤い液体が入ったワイングラスを片手に優雅に外を眺めている。時刻は夜。ちょうど今宵は満月だった。
「……もうすぐだ。メイル、子犬とゾンビの調子はどうだ?」
鬼雨は青髪のメイドに尋ねる。メイドはメガネをクイッと上げて淡々と答える。
「はい、順調に進んでいます。あと3日ほどで届くかと……」
「そうか、それは順調だな」
メイドは一礼して、部屋を出た。もう、吸血鬼の中に鬼雨を王と認めていないものはいない。全て蹴散らした、蹂躙し、歯向かう者には全てを破壊した。ある程度収まり、目的を伝えると、全てを飲み込んだかのように吸血鬼は従った。
「待ってろ……待ってろよ、かすみ。今、お兄ちゃんがお前の仇を取ってやるからな……」
鬼雨が煮え滾る思いを全て力に変えた。そう、今も昔も変わらない。目的はただ一つ。こんな世界に連れてきた奴を殺すことだけ。
「待っていろよ、白夜叉。俺がお前を殺しに行く」
満月にグラスを向け、誓をたてるように強く握り、一気に液体を飲み干した。
三日後、例の物が届いた。
「メイル!メイルはいるか?」
鬼雨の呼びかけにメイルはすぐさま答えた。コウモリの姿から人へ。着地すると、直ぐに影から出てきた。
「お呼びでしょうか、王」
「メイル、仔犬とゾンビのリーダーを連れてこい」
「かしこまりました。……王、姫はどうするのですか?」
「余計な口出しはするな。早く行け」
「……失礼しました」
一礼すると、メイルは再びコウモリの姿に戻り、飛んで行った、
「必ず、リリィも来る。俺たちはそうなる運命なんだからな」
それから1時間、メイルが2人の男を連れてきた。
「おい、話せこのアマ! 俺を誰だと思っていやがる! 噛み殺すぞゴラァ!」
「黙れよ、犬っころ。頭に響く」
「あぁ? お前こそ黙ってろよ改造人間! 自称ゾンビが!」
メイルを先頭に縄で上半身をぐるぐる巻きにされている人狼と、その横を歩く大男のフランケンシュタインが来た。
「……騒がしいな。それでも各種族のリーダーかよ」
「あぁ!? 黙れよ、インテリ野郎が!」
「ゲルン、そろそろ大人しくしろ。品がないぞ」
「お前もいちいち口出しするな! 殺すぞ!」
「……殺ってみろよ?」
各種族のリーダーだからなのか、迫力の格が違った。お互いに睨み合った威圧だけで屋敷の窓ガラスが全面崩壊。見た感じ1枚も無事なものが無かった。メイルめ怖気付いたのか、キリッとした姿勢から後ろへ数歩、更には尻もちをつき、足が震えている。
「はぁ……うちのメイトを困らせないでくれ」
「仕切るな、インテリ! そもそもなんでこんなに縛らなれなきゃ行けねぇーんだよ! 俺はお客様だぞ、お客様! もっと丁寧に扱えよ!」
「それはお前が暴れからだろ……。とりあえず、席に着いてくれ」
言われるがままに席につき、とりあえずの落ち着きは取り戻した。
「……とりあえず、縄を解いてやれメイル」
「要らん」
フッとゲルンが力をいれた。その瞬間、血管が湧き出て、縄を無理やり引きちぎった。
「相変わらずの馬鹿力だな……さて、各種族のリーダー諸君、よくぞ集まってくれた」
「……俺らがこうして集まったのにはそれなりの訳があるんだろうな?」
「もちろんだ。ナルク。今日集まって貰ったのは他でもない。奴を……白夜叉。殺す」
銀髪で赤い瞳の吸血鬼は不敵に笑う。




