復讐者
鬼雨は部屋に連れていかれた。
「今日からここが君の部屋だから、好きに使っていいよ」
鬼雨は、力を出し切り疲れ果てたので、リリィに肩を貸してもらった。ベットに座らされ、その横に彼女も座る。
「あの……ごめんね。私がもっと早くに助けていれば……」
リリィは、俯きしょんぼりしている。彼女だって常に明るいだけではないのだ。
「私にもっと力があれば、こんなことには……こんなことに……」
鬼雨の体力が、段々と戻ってきたのか体が動く。今更のことを言い出したリリィを怒ろうとして、顔を向けると、泣いていた。
「なんで……なんで、、なんで、なんでお前が泣くんだよ! 泣きたいのはこっちなんだよ! ……くっそ…くっそ! くっそぉぉ!!!!」
鬼雨も貰い泣きのせいか、目から涙が溢れる。ポロポロと落ちてくる涙は、怒りが溶けだしたようだった。
しばらくして泣き止み、リリィに腫れた跡があった。
「……なんで、お前が泣いてたんだよ」
「助けたかった! けど、私は怖くて、勇気も実力も何もかもが足りなかった! お……白夜叉が、どこか行ったあと、君を見つけたの。私には何も足りてない……うわぁぁん!!」
リリィは何故か再び泣き出した。
「泣くなよ……お前の事情はわかった。だが、結果はどうだ! 俺にとって、かすみは…かすみは………決めた。決めたぞ、俺はあいつを殺す」
決心した途端、鬼雨はだんだんと落ち着きを取り戻した。胸の内に秘める怒りを燃やしながら。
リリィが、泣き止まるのを待ってからゆっくりと話す。
「話してくれてありがとな。おかけで色んなことを思い出し、整理がついた……それにやることが出来た」
みっともないことだが、泣くことで気持ちを整理できた。そして、これから自分は、なにをしなくてはならないのかを……。
「じゃあ、ボスの部屋に行ってくるわ」
そう言い残し部屋を出ようとする。
「あ、待って! 君が行くなら私も行く!」
落ち着き、元気を取り戻したのか、リリィも付いてこようとする。
「えっと……その、君ってのをやめてくれないか? 俺の名前は一条鬼雨。鬼雨って呼んでくれ 」
握手を求めた。するとリリィは、ニカッと笑いながら握手を返して来る。泣き跡のせいでひどい顔だ。たぶん、俺も。だが、こいつの笑う顔はどこかかすみと似ていて安心する。
「改めまして鬼雨! リリィ・プリシアです!」
「じゃあ行くか! リリィ!」
こうして来たのは、ボスの部屋。相変わらず部屋は暗く、光が乏しい。ボスは、今度は高いところからではなく真正面にいた。
「あれ? 壁が直ってる?」
それに気がついた鬼雨に、ボスは顔色を何一つ変えずに話す。
「気にするな……そんなことよりも答えは出たか?」
「あぁ、そんなところだ。ひとつ聞かせてくれ」
「なんだ? 答えられる範囲でなら答える」
「聞きたいことは1つ。ここに入れば、俺たちを襲った白夜叉に会えるか?」
鬼雨の生き方は決めていた。これは自分にとって、人生の全てを懸けてでも行うことだから。
「フッ……愚問だな。ここは犯罪者も取り締まる場所だ。よって、答えはOf courseだ。ようこそ我が組織へ。君を歓迎するよ、一条 鬼雨」