飴と鞭
「では、お前が殺せなかったらこちらで殺す。いいな?」
「あぁ」
ボスはそう言ってヘリに鬼雨達を載せて飛び立った。
それからは事が淡々と進んだ。まず、九尾ことユイは組織の仲間になった。ついでにバッチも貰い、ランクは鬼雨と同じSだ。
そして、次にリリィが目を覚ました。その時、近くにいないこととユイを連れ回していることに物凄く怒られた。何とか誤解を解いてもらい、これからの仲間として迎え入れた。
「はぁ……それで?」
「それで?」
「どうするの、この子?」
リリィは体調が戻ったのか、服を着替えながら話してきた。
「ちゃんと育てるよ」
「出来るの?」
「た、たぶん?」
鬼雨の曖昧な返事にリリィの口から思わずため息が出た。そして、理解した。これこら何をすべきかを。
「あのね、鬼雨。この子は預けましょ」
「な!?」
「私たちは世界を回るの。この子は危なすぎる」
リリィの意見をもっと詳しく聞こうとしたら遮られた。
「そ、そんなことないもん!」
「あのね、これから起こるのはとっても危ないのよ!」
「ユイだって――」
ユイを続きを言おうとした時、扉が開いた。そこに立っていたのはいつもの如くボスだ。ボスの登場により、全員が黙り、言葉を待った。
「ユイ……だったか? お前はこれから事務処理に来てもらう。お前が行くのはまだ先だ!」
「でも!」
「ここは私の場所だ。私の決定に口出しするということがどういうことかわかるか?」
鬼雨は改めてボスの凄さを実感した。夥しい程の冷気を纏い、空間1つが意志を持っているかのようなずしりと重い空気を作り出す。子供にでも分かるほどの生命としての圧倒的なまでの差。
「わ、わかりました」
「ふっ……わかればいいのだ。漏らさないだけましか。大きくなったら連れて行ってもらえ」
ボスはユイの頭を撫でた。ユイはその言葉の意味を理解したのか、つぶらな瞳を輝かせながら大きく頷く。見事に取られた。
まさに飴と鞭だ。恐怖を植え付けつつ、褒美を与える。さすがだった。
「では、行くぞ。……リリィ、お前に届け物だ」
「ッツ! 散々除け者にしておいて……」
リリィが手紙を受け取ったのを確認するとボスは退室した。
「リリィ、それは?」
「家族会議のお知らせだよ。鬼雨も来て」
「へぇ〜…………え?」
鬼雨はリリィの突然の申し出に戸惑ってしまう。
「な、なんで?」
「ごめんね、鬼雨。あなたにはこれから吸血鬼の王様になってもらう」
「…………はい?」
これこら「王の選抜編」に入ります




