神々の秘宝
「次から次へと……めんどくさい」
ニヤリと笑う白夜叉。泣き止まない九尾。攻撃の準備をする麒麟。九尾との激しい戦闘が終わったと思いきや、今度は白夜叉との戦闘が始まろうとしている。
その時、白夜叉と鬼雨の体が燃えた。
「え? あ、あ、ああああああ!!!!」
「……ちっ、そう言えば、紫外線カットを持ってくるのを忘れていたな。これでは、分が悪すぎる。出直すか」
そう言って、白夜叉はまだ陽の光が当たっていない空へと飛び去って行った。
一方、鬼雨は更に炎が強まっている。手が、足が、顔が。あらゆるところに燃え広がり、赤い炎が体を襲う。だが、とうとう耐えきれずに倒れた。
「……日の出か……なら、もう消える時間だな」
麒麟は振り返り、空を見る。依然として空は鳴り響き、無数の雷が走る。だが、徐々に徐々にと晴れつつある空を眺めながら鬼雨に話しかける。
「尋ねたい。この九尾をどうする?」
「あああああああああ!!!!」
「これでは話にならんな……」
消えつつあった雲が再び集まり、日差しを隠すほどの分厚い雨雲が出来た。そして、案の定雨は降り注ぐ。鬼雨の燃えた体が雨のおかけで止まった。
「はぁ……はぁ……」
「もう一度、尋ねる。九尾をどうするつもりだ?」
「あ? はぁ……はぁ……そりゃあ、連れて帰るよ。それが任務だし」
あれほど大泣きしていた九尾が、今は疲れ果てた子供の様に微かな寝息をたてながら寝ている。
目には泣き跡。尻尾は1本。体は小さく、顔は幼い。体、そして、たぶん性格や考え方、心のすべてを変えてしまった張本人である麒麟は鬼雨の答えに満足したのか少し喜んでいるような気がした。
「そうか……それなら良い。こやつの人生が良い方向へと進むと願おう。ところで、お前はどうしてそんなに邪気を纏っている?」
「はい? 邪気?」
「取り払ってやろう」
麒麟は近づいて来る。
何かされるのをわかっていながら抵抗しないやつなどいない。立ち向かう者と逃げる者。鬼雨はもちろん後者だ。
「え、い、いや……いいです」
「口答えするな!」
――グサッ。
麒麟はまるで電気のような速さでこちらに近づき、角でおなかを刺した。
「ふむふむ……ふむ!?……お主、な、な、なぜ!? なぜ神々の秘宝を持っておる!?」
「はぁ? なんだそれ」
「これも運命だというのですか……主よ、この世界に幸せがあると私は信じたい」
結局、麒麟がやったことは開けた穴を元に戻しただけだった。
「一条 鬼雨だったかな? いずれ選択の時が来るだろう。その時は……」
そう言い残して、麒麟は空へと消えて行った。
「一体なんだったんだ?」
麒麟が消えたあと、空に雷は消え、雨雲だけが残り、雨を降らした。半日後に、消えたはずの湖の水はこの雨によって元に戻った。
鬼雨は大きな木のそばに腰を下ろし、幼い九尾を抱えて雨が上がるのを待っていた時、目覚めた。
「あれ? ここは? あ、パパ!」
九尾が何と勘違いしたのかはわからないが、いきなり抱きついて来た。
そんな時、空にヘリコプターの音がした。




