次の任務
――ピチャン。
鬼雨の額に何かが当たった。
「……うぅ、な、なんだ?」
鬼雨は目を覚ました。
辺りは5cm程の浅い水が浸っており、果てしなく先まで続いている。すぐ横には、葉っぱが1枚もない枯れた大きな大樹がある。体を大樹に預けて寝ていた。
「あぁ、そうか。寝てたのか」
「そうじゃ、ここがどこだかわかるか?」
「お、お前は!」
大樹の1番上にある枝に片足で、体を支えながら立っている、憎き白夜叉が退屈そうな顔でこちらを見ていた。
「ふん、外ではあまり話せなかったらしいな。つまらんことを聞きよって……」
「あぁ? なんのことだ?」
白夜叉はそれ以上は話さなかった。自分の心の中だからなのか、やけに落ち着く。
「ここは?」
「お前の深層心理の中じゃ」
「俺の心の中……なんか、前より変わってないか?」
前はもっとどこまでも白い世界だった。
「吸血鬼に近づいたからだろうな。わらわも前より動きやすい」
「……なぁ、力の使い方を教えてくれよ」
「なに?」
自分でこんなことを言うのはあれだと思うが、力を使いこなすには自分をこんな目に遭わせた本人に聞くのが妥当だと考えた。
「……なぜ、わらわに教えを乞う?」
「そんなの決まっているだろ、強くなるためだ!」
「……では、強くなってどうする? 強くなってどうしたい?」
そんなことは決まっている。世界を守る? 違う。人を助ける? これも違う。なら、ヒーローみたいに大事な人を守る?……違うだろ。
なぜなら、目的はただ一つなのだから――
「はっ、そんなのは初めから決まっている。お前を殺し、復讐を成すためだよ」
「ふっ、なるほど。わらわを殺す者をわらわの手で作り上げろというのか……ははは、実に愉快だ」
白夜叉はさっきまで見下げていた鬼雨と同じ目線になるように降りてきた。
そして、ドスッ――
左胸辺りにはあるはずの心臓は今、白夜叉の右手にある。
「却下だ。自分で強くなれ」
「ゴフッ……な、なんで……?」
口から血が出てくる。心臓は未だに血管と繋いでおり、バクバクと動いている。
白夜叉は何も言わずにただただ冷たい目を向け、そのまま鬼雨の心臓を握りつぶした。
はっと目が覚めた。
再び見る光景。高さは3m程ある天井、手すり付きのベット。5m先には扉がある。周りにはバイタルを図る装置と点滴。窓際には百合の花が1輪添えてあった。
「ここは……」
「ここは、お前とリリィが初めて……いや、2度目にあった場所だ」
「ボス! し、白夜叉は!? てか、なんで俺はここに? リリィは? 九尾とはどうなった!?」
謎が多すぎた。
白夜叉に出会ってからの記憶が曖昧だが、九尾と戦っていたところまではしっかりと覚えている。
それに、ボスの言葉が引っかかった。2度という言葉に……。
「待て待て、そういっぺんに質問するな。1つずつ答えてやる。何が聞きたい?」
「取り乱した。すまない、ボス。まずは、白夜叉達はどうなった?」
「麒麟が現れる場所に向かったさ。召喚までにあと、3日はある。2日後には飛んでもらうぞ」
いきなりおかしくなっていた。ついさっき起きたばかりなのだ。なのに、任務は2日後だ。あまりにも早すぎる。
「いくらなんでも早すぎるんじゃねぇーか?今、起きたばっかりだぜ?」
「何を言う。十分に休んだではないか。9日ほどな」
「はぁぁぁぁぁ!?」
つまり、9日もずっと寝っぱなしになっていたということだ。
「まじか……リリィは?」
相変わらずの長い廊下を歩く。
さっきの質問には「自分の目で確かめろ」ただその言葉と部屋の鍵を置いて出ていった。
「331号室か……ここだな?」
ドアは閉まっているためノックする。
コンコン。コンコン。
「リリィ、いるか?」
返事が無いため、耳を済ます。
「……で……き……ない……」
「ど、どうした!?」
ドアをこじ開けようと蹴りを入れるが何回やっても開かない。その間もリリィの掠れたような声が聞こえてくる。
「待ってろよ!今、開けてやるからな!」
何十回目かのケリでようやくドアがこじ開けられあ。
そこにあったのは暗い部屋。無数の傷跡。羽毛が飛び散った布団。バキバキに折れているベット。そして、済に座る銀髪の髪と赤い瞳、何より大きな翼が生えたリリィがいた。
「お、お前、リリィ……なのか?」
「い、いやぁ……いやぁぁ! いやぁぁぁぁ!!!! 見ないで!! どっかに行ってよぉぉ!!」
鬼雨の全身が青く光った瞬間、いきなり背後に飛ばされた。ドアもついでに元に戻された。
背後にはいつの間にかボスがいた。
「わかったか? あいつの現状が……一条鬼雨。任務を言い渡す」
「こ、ここでか?」
「あぁ、リリィ・プリシアを何とかし、2日後、麒麟の保護に迎え!」




