最悪の中の最悪
「この程度、痛くも痒くもありませんわ、狙いが外れてほ〜んと残念ですわね。ふふふっ」
「ま、負けた……何やってるの! 鬼雨!」
リリィがこちらを見て怒ってる。それもそうだろう、命懸けで狐火を受け、最後の一撃に賭けたのだから。
「まぁ、見てろ」
拳を作って、九尾に向けた。これから反撃するという思いを向けて。
「喰らえ……そして、くたばれ。化物が!!」
「ふふふ、何をしても無駄。無駄無駄無駄! まだ、楽しませて――ガハッ」
九尾の手、胸、足、首、尻尾……体のあちこちから傷が生まれ、血が吹き出した。
「なんで、九尾に傷が付いてるの?」
リリィは驚きを隠せないのか不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「ま、まさか、さっきの弾に!?」
「ふっ、ようやく気が付きたか。そうさ、さっき撃った弾に」
九尾は持っているお酒を落とした。まだ残っていたのか、地面に垂れようとしている。が、地面に着くまでに蒸発している。
「九尾が熱すぎるんだ! やばいよ、鬼雨! 早く殺して!」
リリィが急かしてきた。そんなものは見たらわかる。九尾を中心に地面が熱されているのだから。だが、ここまでだった。
「む、無理だ。血も……血も蒸発しちまった」
「あなた…………おのれ、おのれ! 許さん! 許さんぞ、ボケがぁぁぁ! よくもわたくしの、わたくしの体に傷を!……死ね! 死んで詫びろ! そして、死ね!」
九尾がキレていた。言葉遣いが汚くなり、明らかに雰囲気も変わっている。証拠に青く燃えていた狐火が、次第に太陽のような赤に変わっていく。
「骨の1本。いや、細胞1つすら残さない。確実に消し去ってやる!」
九尾は自分の尻尾を1本、左手で掴んだ。そして、右手で斬った。
「ッツ! はぁ、はぁ、はぁ、はは、ははは。貴様らを殺すのなんざ、尻尾1本で充分なんだよ!」
尻尾が斬れると、9つあった狐火が1つ消えた。
そして、1つ50cm程の狐火が2mまで大きくなっていおり、それが8つ同時になっていた。
「死ねぇぇぇぇ!!」
ここまでだな。と思った時――
「待て、九尾」
上空から何かが降ってきた。熱している地面に砂埃が立ち、何も見えない。だが、声がする。それも嫌々でたまらない声。
「そんなことをしている暇はない。ようやく麒麟が復活する。行くぞ」
砂埃は風に吹かれて姿が見れた。そこに居たのは九尾と――
「ようやく……ようやく見つけたぞ、白夜叉!」
「ほぅ、誰かと思えばお前か」
相変わらずの透き通るような綺麗な銀髪。美しい顔立ちに、燃えるような赤い瞳、それに背中にある大きな翼。
「邪魔をするな、白夜叉! お前から殺すぞ」
「別に構わないが、麒麟を殺すための力を消耗するのか?」
九尾と白夜叉という異質の存在が同士が対立している。それは禍々しく、恐ろしい。
「ちっ、わかった。……わかりましたわ。とっとと行きましょう」
怒りが収まったのか、九尾が元の口調に変わっていた。
「ま、待て! 俺はお前を殺すために――」
「なんで、なんでなの!!」
フツフツと怒りが燃えてきたところに、いきなりリリィが大声を上げた。
「どうしたんだ、リリィ?」
見てみると、姿が変わっていた。背中に生えている小さな翼が大きくなっており、目は黄色から赤へ。
「へぇ〜なるほど、これは時間が掛かりそうですわね。先に行ってますわ」
そう言い残して、九尾はふわりと空を飛び、見えなくなった。一方、白夜叉はだるそうにこちらを見つめている。
「なんで、なんでなんでなんで! あの時、――行ったの!」
途中、すごい風が吹き、最後の部分しか聞き取れなかった。
「え? リリィ、今、なんて言った?」
「あ、いや、その……ごめんなさい、鬼雨。あなただけには聞かれたくないの……」
ますます訳がわからなくなった。聞こうと声を出そうとした瞬間、リリィにお腹を殴られた。
「うっ、何をする。何してんだ! リリィ!」
猛烈に痛い腹を抑えながら、リリィを見ると片足を上げていた。お陰で、スカートの中にある白いパンツが見れてラッキー♪と、思った瞬間――、
「ごめんね」
頭に踵落としをもらった。だが、パンツを見たいと思った力が働いたのか、意識を保てた。そして、耳を澄ましていると――
「もう一度言うね。なんであの時、お父さんを殺して出ていったの、お母さん」




