悲劇の始まり
学校が終わり家に帰る時、小学生以来ずっとクラスが一緒だった、親友の東山 剛 (ひがしやま たける)が声をかけてきた。
「おーい、鬼雨。一緒にカラオケいかねーか?」
「わりぃーな。今日はなんか早く帰ってギリシャ神話を読みてぇ気分なんだ」
鬼雨はやんわりと断る。理由はいつも決まって、めんどくさいからだ。
「……お前、少し変わったな」
「そうか? あんまし変わってねーような気がするけどな。てか、鬼雨がそんな本を読む方が珍しいな」
「ん? あぁ、神話って意外とおろしれぇぞ」
そんなたわいのない話をしていると、遠くからギャルが呼んでいる声がする。それに剛が反応する。
剛は昔からこんな感じではなかった。あんな感じの彼女達と付き合い始めたのは1週間前からだ。
「まぁ、悪い。また今度な」
鬼雨は再びやんわりと断って家に帰る。
自転車で数十分。もう目の前に家が見るという所で、ガシャーンっと窓ガラスが割れた音が聞こえてきた。
「え……? 今のってガラスが割れる音…か? この時間だと確か……かすみが帰っているはずだよな?」
かすみになにかあったのかもしれないと思った瞬間、体は既に動いていた。乗っていた自転車を捨てて、走ろうとした時──
「い、いや、いやぁぁぁぁ!! 助けて!! おにぃちゃーん!!」
聞くに堪えない絶叫が割れたガラスの窓から響いた。