再開
女将はユキに捕まったまま泣きじゃくるリリィを見て、
「ユキ、その子を離してやりな」
ユキは女将の発言に驚いていた。だからこそ、聞かねばならない。なぜ、離すのかと。ユキは自分の鋭い目で訴えかける。
「その子はけんじさん達の血の匂いがしない。つまり、近くにはいたが見ていた。それかやられたかのどっちかだよ。それに今は精神崩壊している。大丈夫さ」
納得がいったユキはリリィを解放した。よく見ると、未だに泣いているリリィの手首辺りに傷が出来ている。
「おや、ユキ! ついに部分人狼化が出来たんだね」
そう、ユキは手だけを人狼化していた。狼のようなら爪がリリィの体を傷つけた。
「さ、やることはやった。帰るよユキ。…………それと、あんた。荷物はまとめて玄関に出すからとっとと消えてな」
冷たく一言。女将はそう言って、ユキを連れて風呂場から出ていった。
リリィは泣きながらも近づく。
「き、鬼雨! 鬼雨! グスン、鬼雨ー!」
何度も鬼雨の名前を呼びながら、鬼雨の元へと近づく。湯に浮かんでいる鬼雨をサイコキネシスで自分の元に寄せて抱きしめる。
「鬼雨! 起きてよぉ! ねぇ、起きてよ……ねぇ!……鬼雨!」
何度呼んでも返事はなく、体温も感じない。
「わたし、まだ鬼雨になんにもしてあげてないのに……グスン……もう、こんなことがないようにしよって決めたのに……グスン」
懺悔を口にしながら体温を感じない鬼雨を強く抱きしめる。鬼雨の体は変化して来ているのに気付かずにリリィは泣き続けている。
ーーーードックン、ドックン、ドックンーーーー
目を覚ますと鬼雨は真っ白な世界にいた。
「こ、ここは? ……確か、俺は心臓? を貫かれたような……」
「ココハ、君ノ深層心理ダヨ! 」
声が聞こえた。最近、聞いた声だ。
それは自分を信じて力をくれた声だ。
その声は──
「ヤッホー! 鬼雨! サッキブリダネ! 」
ユニコーンのレクリアだった。
「レクリア、俺は死んだのか?」
「ウウン、死ンデナイヨ! ダッテ君ハ心臓ヲ離サレタノデハナク穴ヲ開ケラレタダケダ。ツマリ治セルノサ! 」
レクリアの説明は難しかったが、どうやら自分はまだ生きているということはわかった。
「なら、早く目覚めてここから逃げねぇーと! 」
「ソノ辺ハ上手クヤッテイルカラ大丈夫ダヨーン……ダカラ君ハ、今日、決着ヲ付けナケレバイケナイ」
レクリアは深刻な顔をして訴えかける。
「続きはわらわが話そう」
コツコツとこちらに歩く音がしてくる。次第に近くなり、姿を見せる。
「お前は──」