鬼雨、死亡。
いきなり現れて、銃を突きつけられた。
「聞いてるのかい? あんたがけんじさん達を殺した吸血鬼か?」
女将にさっきと同じ質問を繰り返された。 銃を突きつけられているので、とりあえず両手を挙げる。
「……俺はたぶん、吸血鬼だ」
人は殺していないとは言えなかった。
なぜなら昼間に出会ったおっさん達の血を浴び、息の根を止めたのは他でもない鬼雨自身だからだ。
「そうかい。とりあえず立ちな」
言われるがままに立つ。
「…………その、独特の体つきは吸血鬼そのものだよ。まぁ、そんなことはどうだっていいのさ……あんたの手からけんじさん達の血が臭うからね!」
パンッ!
と一撃、女将が持っていたショットガンが放たれた。
打たれた箇所はお腹。銃口から発射された玉はいくつもの小さな玉に分かれて鬼雨のお腹に打ち付けられた。
「あぁぁぁぁ!! 痛てぇぇぇー!」
鬼雨が湯に倒れ込む。その音でようやく気がついた下着だけしか着ていないリリィが助けに来ようとする。
「鬼雨! 今、なんかすごい音が…………って、鬼雨! 鬼雨!」
状況を理解したリリィがこちらに向かってくる。
「く、来るな! リリィ!」
鬼雨が止めようとするが、それでもリリィは止まらない。
そんなリリィを止めたのは桶のピラミッドに隠れていたであろう小さな女の子だった。
リリィの背後から飛びつき、うつ伏せにさせ、即座に両手を抑えて身動きを封じた。
「離せ! 離せ!」
リリィは小さな女の子から逃れようとするがそれでも離れることは出来ない。
「よくやったよ、ユキ。増援が来たら面倒だったからね」
女将がユキを褒める。ユキは狂気に染まったかのような笑顔で答える。
「うん、こいつらがお父さん達を殺したんだよね! なら、ちゃんと仕返ししてあげないと!」
もはや女の子とは思えない程の言葉だった。
そして、女将は未だに腹を抱えたままの鬼雨へと視線を戻す。
「なぁ、吸血鬼さん。答えて欲しんやけど、けんじさん達の遺体はどこや?」
「…………北にある崖の所に墓を作った。もう、いいだろ。リリィだけでも逃がしてやってくれ!!」
「……何言うてんの? そんなの、あかんに決まってるやろ。あ、そやそや、そろそろ気づくと思うから言うけど、この銃に込めた玉は銀製や。吸血鬼には持ってこいやろ? これで、超回復もなくなる」
丁寧に女将が説明してくれた。つまり、鬼雨の体は今、吸血鬼の力が使えないということだ。
「遺体の情報ありがとさん」
女将は銃を投げ捨てると同時にリリィの顔を見た。リリィには女将の顔を見て、何故こっちを向いたかがわかった。
「お、お願い……やめて、やめて、やめてー!」
リリィが大声で叫ぶ。だが、誰も助けになど来ない。
女将は鬼雨の髪の毛を引っ張り、無理やり顔を上げさせた。その時、鬼雨が目にしたのは既に人狼化になっていた女将だった。
「ッツ! ……やっぱりお前も人狼化が出来たんだな」
「当たり前やろ。ほな、さいなら。」
鬼雨の胸の真ん中。つまり、心臓を突き手で思いっきり刺して貫通した。その後、一気に引き抜き勢いよく周りに血を撒き散らした。
「鬼雨ー! 鬼雨ー!!! うわぁぁぁぁぁ!」
この夜、リリィの泣き声が盛大に響いた。