優しさを糧に
「こ、これは……」
怒りに身を任せて、意識が飛んでいた。気がつくと、辺り一面は血まみれだ。手はおっさんの腹が貫通している。
「ゴフッ……ったく、どっちが化け物だよ。……ガハッ」
口から血が止まらない。見渡すと若者2人は片方ずつ腕を無くしている。よく見ると服がはだけており、首元には2つ空いた穴がある。
「お、俺……俺は、なに、なにをしたんだ?!」
「なんだお前、自分でしたことを覚えてないのか……イッ……おい手を抜け」
ゆっくりと寝かし、おっさんの指示通りに腕を抜く。腸が破けているのか色々なものが手についてくる。が、やはり血が出過ぎている。
「早く止血しないと!」
自分の服を破いて布にして傷口を止血しようとして見るがどんどんと血が溢れ出てくる。
「クソっ! 止まれ止まれ止まれ!」
「やめとけ。もう無駄だ、この血の量じゃもう手遅れだ」
「そんなことあるもんか! 絶対に助けてやる」
みるみるうちに布が全て真っ赤に染まった。
「こっちのお前は優しいんだな……チッ、助けようとしてんじゃねーぞ、バカが!」
「黙ってろ! 俺は人殺しをしにこんな所に来たんじゃねーんだよ!」
「……………………」
おっさんはもう、死んだ若者2人を見た。
「もうすぐ、そっちに行ってやるから待ってろよ……ぜん………はく……」
息子であろう2人の名前を呼ぶ。血が未だに止まらないままおっさんは静かに目を閉じた。
「おい、まて! 死ぬな死ぬな死ぬな!」
必死に体を揺すって起こそうとする。
そうな鬼雨に声が掛ける。
「鬼雨、その人はもう、死んでますよ……」
いつの間にか後ろに立っていた、リリィだ。
そんなリリィも立つのがやっとなぐらいボロボロだ。
「黙れ、リリィ! お前もボロボロじゃないか! じっと見てろ!」
その時、子供のユニコーンは見ていた。おっさん達に抱かれていた時に目を覚ましたが、怖かった。
そこに、鬼雨ではない鬼雨がおっさん達を倒して、本来の意識を取り戻した。
そして、次にした行動は止血だ。助けようとしたのだ。
だからこそ思う。
(アァ、コノ人ハコンナニモ優シカッタンダ)
そして、その思いは鬼雨の力となってゆく……。
突然、子供のユニコーンが光り出す。色は緑と変わり、鬼雨の左肩に集まってゆく。
「これは? ……子供のユニコーンか?」
「鬼雨、それって……」
光はだんだんと形を作ってゆき、ユニコーンの紋様が刻まれて、今も光を放っている。
「な、なんだこれ!」
(コレハ僕ノ力。君ニ授ケルヨ)
頭の中に声がした。
「この声は……お前か……子供のユニコーン!」
(僕ノ名前ハ、レクリア。君ノ優シサガ、僕ヲ強クシテクレタ。ダカラ、今度ハ誰ニモ負ケナイ!)
レクリアの残りの角がポロッ取れ、新たに生え変わって出てきた。それも親のユニコーンに負けないくらい立派で大きなものだった。