表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/78

誘拐犯

 遥か上空から落とされ、なんとか着陸に成功した。地上に着き、初めて目にしたのは、平地に折れた角を持ち、全身ボロボロの1匹の白い馬だった。


「あれは……なんだ?」


 リリィに聞いてみるが返事がない。


「っておい、聞いてんのかリリィ! あれはなんなんだ?」


「…………おおお!! うおおおおおお!! き、鬼雨! ユニコーンですよ! ユニコーン!」


 リリィの断言と、見た目が自分のイメージしてた通りなので、間違いないのだろう。しかも興奮したせいでいつもの話し方と違う。


「リリィ、ユニコーンってそんなに珍しいのか?」


「ユニコーン自体はまぁまぁです。時々、見かけるレベルだね」


「だったら、なんでそんなに喜んでんだよ」


「子供だからですよ! ユニコーンの子供はまず、見かけません! 親が隠してしまうので……だから、子供がここに一匹でいること自体レア中のレアなんですよ! それに――」


  このまま鬼雨は5分間、長々と説明を聞かされた。


「もう、いい! わかったから! それよりもあいつの怪我は治してやろう」


  近くによるとユニコーンは震えていた。


「よっぽど怖かったんだろうな。よく見ると出血も酷い。おい、リリィ。お前の担いでるバックには何が入ってる?」


ボスから持たされたバックの中を開けると、救急用セットと腕時計が2個。あとは見たこともないコインと着替えしかない。


「あ、あのババァ! 覚えてろ!! ……って、それよりも傷の手当が先か」


 震えるユニコーンを抑えながら、消毒したガーゼを当てる。可哀想だが傷が染み(しみ)たのか鳴いている。手早く処置を済ませ、震える体に包帯を巻いた。


「優しいですね」


「ん? あぁ、まぁ、昔に似たような境遇だったからな……だから、子供にこんなことさせるのは許せねぇな」


  鬼雨の記憶がチラつく。無残で無慈悲で残酷な過去を――。



「よし、もうこれで大丈夫だろ」


 ユニコーンの手当が終わる。すると、ヒヒィーンと鳴いた。体の震えも止まり、今にも立とうとしている。


 その時、遠くからユニコーンの鳴き声が聞こえた。

 空中を蹴り、走っている。立派な角に大きな体。あれが本来のユニコーンなのだろう。


「あれは……親か? 子供を迎えに来たのか?」


 リリィに尋ねてみた。すると――、


「ちょっと鬼雨! なんかこの子震えてますよ!」


  猛スピードで角を向けてこちらに向かってくる。狙いは子供のユニコーンだった!


「ッツ……危ねぇ!」


 子供のユニコーンを抱き、なんとか回避する。親のユニコーンを見ると、次の攻撃モーションに入っている。


「なんでこの子を狙うんだ?」


「多分、角なし(・・・)だからですよ。ユニコーンは、角の大きさによって立場が左右します。見る限りあの親ユニコーンは……かなり上の方です」


 再びリリィの説明が入る。が、鬼雨にはあまり理解できなかった。


「つまり……なんだ?」


「角なしの子供は、自分も弱いと思われるので処分しに来たんでしょう」


「…………」


 今度は何故かしっくりきた。自分がそういう環境にいたからだろうか……。


「なるほどな……俺が大嫌いな決まりだ」


 親のユニコーンが、攻撃を仕掛けてくるがなんとか回避する。


「止まらねぇな」


 逃げならが考えるが、なんとも気に食わない。


 ふと疑問が浮かび上がった。


「そういえば、なんでこんなところに子供のユニコーンがいるんだ?」


 そもそもの疑問だ。会った時からボロボロ。そして、答えは違うところからやって来た(・・・・・)


「それはなぁ〜俺達が拐って来たからだよ」


 と、足音が3つと低い声が聞こえてきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ