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史上最強のボディビルダーが食事制限に失敗して死んじゃったと思ったら転生した。  作者: チバ テツロー
第一章:ボディビルダーと魔法使いの国
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金剛、払う

 両手を広げた金剛の周りを囲うようにして、人相の悪い男達が散開していく。

「五人か……そんな人数で俺に勝てると思っているのか……?」

「ふん、ぬかせ! 野郎ども! かかれ!!」

「待てい!!!!」

 金剛の一声で、男達の動きが止まる。

「なんだぁ? 命乞いか? 金目のモノがあるなら考えてやるぜ」

 リーダーらしき男がそう言うと、周りの男達がくすくすと笑った。

「ふん」

 金剛は来ていたTシャツを破り去った。

 そして、次々とポーズを決めていく。


「な……なんだコイツ……妙な動きしやがって!」

「お頭……それにしてもすげぇ筋肉してやすぜコイツ……」

「だからなんだってんだ。こっちは刃物もってんだぞ」

 金剛を囲む男達が圧倒される中、離れた場所から声が響いた。

 先ほど男達に囲まれていた青年だ。

「あれは……きっと魔法に違いないっす!」

「魔法だとぉ!? ってめぇ命が欲しくてハッタリこいてんのか!?」

「俺は一回だけ大賢者(だいけんじゃ)様が魔法を放つところを見たことがあるっす。あれはきっと魔法を放つ前の詠唱(えいしょう)っすよ!!」

「え、詠唱……」

 男達が気圧(けお)され、息を飲み込む真ん中で金剛は体を動かし続けていた。

「ふん……何をごちゃごちゃと言っているのか知らんが、これはポージングだ!」

「ぽーじんぐ……? くっ……いったいどんな魔法なんだ……」

「更に詳しく言うならば、サイドリラックスからのダブルバイセプスを起点に既に六つのポージングを披露(ひろう)したのだ」

「サイドリラックス……!」

「ダブルバイセプス……!?」

「お……お頭ぁ……」

「くっ……ひるむんじゃねぇお前ら! 魔法を唱えている間に飛びかかれ!!」

「へ……へい!」

 一人の男が金剛に飛びかかった。

 しかし、次の瞬間に鈍い音がしたかと思ったら、その男は膝から崩れ落ちるように倒れた。

 白目を向き意識を失っているようだ。

「馬鹿者! ポージングの途中だろうが!!!!」

 金剛の怒号が草むらに響いた。

 静寂が辺りを支配した。

 ポージングは続いている。

「すげぇ……魔法だ……ダブルパイセプスっていうのか……」

 先ほどまで涙を流していた青年の顔に笑顔が浮かぶ。


 金剛の動きが止まった。ポージングが終了したのだ。

「ふん……気分がノッてきた。さぁかかってくるがいい」

 首をゆっくり回し、男達を見据える。

「お……お頭……」

「く……一人ずつじゃねぇ野郎ども。一斉にかかれ!!」

「おう!!!」

 その言葉を合図に男達が一斉に飛びかかってきた。

 しかし金剛はその場から動かず、両の拳を(あご)の付近に持ち上げた。

 ゴッ……ゴッ……鈍い音がするたびに、一人また一人と男達が倒れていった。

「くっコイツ強い……お前、いったい何者だ!」

「俺は金剛だ。体脂肪率は3%」

「コンゴー……。その名前覚えておくぞ! ずらかるぞ!」

「待ってください。お頭!」

 失神した仲間を残して、二人の男が去っていった。


「あの……ありがとうございます!」

 先ほど、男達に囲まれていた青年が金剛に駆け寄ってきた。

「無事か?」

「お陰様で……この男達はどうするっすか?」

 青年は草むらに倒れ込んでいる男達に目を向けた。

「ふん……雑魚は放っておけ……それより……」

 そこまで言うと金剛が膝をついた。

「だ……大丈夫っすか!!」

「カ……カロリーが……」

「カロリー……? カロリーってなんすか!?」

 金剛の大量の筋肉はその維持(いじ)だけで大量のカロリーを消費する。

 そう、彼は二度目の餓死の危機に(おちい)っていたのだ。




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