最速勇者とモブな俺
風タクのrta見て思いついた構成もクソもない作品ですがまたやっていただけると(ry
パンパカパーン
ダンジョン内に軽快な音楽が流れる。
それはダンジョンが攻略された……つまり俺らのボスが倒されたということだ。
「どうなってやがんだ?」
「俺たちのところ通ってないのにどうして勇者がボスのところに行けるんだ!!?」
「どこかに抜け道が!?」
「「「*****」」」
俺と同族であるゴブリンたちが口々に疑問を言っている。
しかしその気持ちも分からなくはない。
今俺たちのいる場所はボス部屋前、つまりボスを倒すには俺たちを倒すしかないのだ。
俺たちはずっと起きていたし、油断なんてしてなかった。
抜け道の存在なんて聞いたことがないし、ダンジョンの壁は強固で魔王様でも破壊はできないと聞いたことがある。
勇者が聖剣を持っていたところで壁をぶち抜くという真似はできない。
俺の仲間たちが疑問を持つのも当たり前といえば当たり前なのだ。
しかし俺は見たのだ。
扉から出てきた勇者が壁際に行くと顔を擦り付けなが歩いたと思ったら壁に体がめり込んでいくのを。
俺はそれを見間違いだと思い目をそらしたが今思えばきっとあれが勇者なのだろうか?
すでに攻略された先輩から届いた手紙の『壁の中や空から聞こえる奇声に気をつけろ』とはこのことだったのではないだろうか?
しかしそれも今となっては後の祭り。
俺たちは負けた。それが全てなのだ。
負けた俺たちはこれからダンジョンの外へ行き、他のダンジョンや野良として割り振られる。
その決まりに従い他のゴブリンたちが移動し始めるのを見て俺もそれについていこうとすると
「経験値と金出せやぁ!!オラァァ!!」
モンスターの中でも特に珍しいメタルカラーのスライムを拳で殴打している勇者らしき人物がいた。
俺は急いで仲間を呼ぼうと振り返る。
しかし声を出すことは叶わなかった。
「おい、何見てんだテメェ」
ドスの効いた声が後ろから聞こえる。
「こっちは次の壁抜けに耐えるための体作りしてるんだ、邪魔されたら困るんだ?わかるな?」
頭を持って180度捻られた際に首が悲鳴をあげる。
目の前にいる赤色の髪を後ろで束ねた女は間違いなく勇者である。
ただ付け加えるならその顔は般若などが微笑みに見えるほどのえげつない表情である。これを見て逃げ出さない奴はいないだろう。
「俺の時間はお前らみたいなクズとは違って何者にも変えられねぇんだよ」
勇者はギリギリと俺の頭を締め上げながら自己賛美に勤しむ。
しかし締め上げられる俺の目にないはずのものが見える。
胸がある………だと
「あ"?」
「えっ、口に出てました?」
「殺す」
勇者の爪が頭にめり込み始める。
俺の口からかすれた悲鳴が上がる。
もはや痛みは麻痺して感じなくなっている中時間だけは無慈悲にもすぎていく。
「いや、こいつを使えば………あそことあそこが……」
頭蓋骨に爪がめり込み始めたあたりで勇者が急に様子を変える。
黙って入れば美人、それが勇者の評価であった。
赤い髪にいつの間にかさらに上がっていた月の光がよく映えていた。
「お前これから私の下僕な」
「は?」
この勇者は何を言っているんだ……
と続けることもなく何かに首にかけられる。
「いくぞ、まずはライシの街の通行止の壁替えに行くぞ」
意味のわからないことを言うと勇者は俺の首にかけた紐を持って引きずっていった。
首が閉まる感覚を覚えながら俺の意識は消えていった。
その後妙に知的なゴブリンを連れた奇妙な行為や謎の技を使う勇者がダンジョンレイパーとしてなを馳せるのは数年後の話。