三角を描くコンパス
おろしたてのノート。
硬い表紙を開くと、12×17のマス目が並んでいた。
水で溶かした空色の規則線はまだ僕に付きまとってくる。
この息苦しさは何だろう。
数式を読み上げる担任の声か、
黒板を叩くチョークの音か、
ボールペンの忙しない不快音か、
どれも違う。
耳を塞ぎながら俯く僕の目前には四角い箱がいくつも並んでいた。
不意に思い出す誰かの言葉。
『マス目にあわせて、お手本に沿って書いていきましょう』
あの頃よりもきっと字は上手くなっているはずなのに
マス目をはみ出した字はずっと増えた。
――問1。コンパスを使って、辺の長さが4センチ、6センチ、6センチの二等辺三角形を書け。
コンパスで描く三角形はなぜか奇麗だった。
また少し、息が詰まった。