LETTER(狩魔)
お久しぶりですね。いえ正しくは初めましてですか。
レター・ダイアリーでございます。覚えておりますか?
ええ結構。
前任のワタクシと同様、今回のワタクシも読み終えたら燃やして頂いて構いません。
今回のお手紙はまた別のお話に関する事項をお伝えする為の物であります。
うん? 惨劇様ですか?
結局誰もあの方を止めることができませんでしたね。ワタクシにはわかっておりましたけども。
まったくもってガッカリですよ。最凶はやはり最凶。
世界に嫌われる運命なのですね。ええ。
そしてそれを変える力も世界には存在しなかった。またガッカリ。
起源への扉が開く。
これが何を意味するのか、誰も知らないようですね。
今更知ったところで何の意味も為さないでしょうよ。
扉の先に続くのは勿論、道。
起源への道。
運命の枝を逆走することが可能な唯一の方法。
そこへ行くという事がどういう事かもうお解りでしょう?
そう。
手遅れなのですよ!
最凶が扉をくぐるなんて! どの世界でも聞いたことのない埒外な現象! 馬鹿げている!
一体、この世界はどれだけ無能なのか!
笑ってあげますハーッハハハハ!
ふむ……。
まあいいでしょう。
どうせ崩壊までの残り少ない時を待つだけなのですから、自由に過ごせば良いのです。
まだ最凶は門をくぐっていないですって?
同じ事ではないですか。誰もあの方を止められない。
それともあの猫と少女に世界の命運を賭けますか? 馬鹿馬鹿しい。
レター・ダイアリーは真実しか述べません。
なにせなんでもお見通しのレター・ダイアリー。
誰がワタクシを書いているのかはヒミツ。
世界の全てが見えます。
そんな場所でこのお手紙は書かれています。
余計な話が長くなってしまいました。
本題に移るとしましょう。
クロスキーパーにおいて天国との戦闘が起きている頃の話です。
計画を誤らない筈の惨劇様が、一度だけイレギュラーを確認しました。
死軍です。
地獄アフリカ支部、支部長アヌビスが召喚した軍隊ですね。零鋼によって消し飛ばされましたけど。
その死軍が砂嵐と共にクロスキーパーへ来た。これがおかしいのです。
アヌビスが死軍を召喚したそもそもの理由。
それは全支部の魂を避難させているアメリカ支部を守るためです。
実際、死軍や他の死神業者の介入を惨劇様は予測し、対抗策を講じておりました。
なのに死軍はクロスキーパー戦に介入してきてしまった。
対抗策は何をしていた?
死軍が攻めに転じる事のないよう、アメリカ支部を攻め続けるように惨劇様が指示していた『あの連中』は一体何処へ行ったのか。
連中が死軍に後れを取るわけがありません。
ならば奴らは?
何をしていたのでしょう?
――『狩魔衆は何処へ行った?』
フフフ。
フフフフフフフフフフフフフフフ!
◆ ◆ ◆
【宴章 狩魔編】