宴章 死神と惨劇
死神ルイシェルメサイアはフレスベルグ駅のホームに伏せていた。
なぜ自分だけを逃がしたのギル。突然の別れはあまりに哀しすぎる。
そう嘆き、ホームの地面に雫を落とす。
――魔列車に乗って逃げろ。
彼の言葉が脳裏に響く。ルイは抗うように首を横へ振り続けた。
私は貴方の妻なのですよ。
夫の勝手は許しませんから。
私は貴方の妻なのです。
何度も呟いた。
汽笛が響いた。
待っていたわけではないのに、魔列車はルイの視界を横切りつつスピードを落とし、停車した。
降りた客は四人。
そのうちの一人が、なにか叫びながらこちらへ駆けてくる。
「お母さん!」
ルイは一瞬にして我に返った。
頭を上げ、その子の姿を目で捉える。
「ロシュ……。ロシュ!」
愛すべき我が娘は駆け寄った勢いのまま飛び付いてきた。
後ろから歩いてくる三人はロシュの友達だろう。
そのうちの一人がルイの目の前にしゃがんだ。真っ黒なヘルメットに頭を包んだ男だ。背中には大きな棺をかついでいる。
「ルイシェルメサイアだな」
若い声にそう問われ、ルイは首肯する。
男は周囲を見回し、ルイが一人だけだったことを確認する。
「俺はベルゼルガ。あっちの神楽と一緒にあんたの娘を護衛する役を担ってる。ところで、ギルスカルヴァライザーはどうした」
ベルゼルガに言われ、ルイの顔は真っ青になった。
彼は一人城に残り、惨劇のカタストロフを迎え撃ったのだ。今もまだ戦っているだろう。
「ギルを……ギルを助けないと! 惨劇が現われたわ!」
それを聞いた途端、ベルゼルガは立ち上がった。
流れる空気を感じ取るように、深呼吸をしている。しばらくそうした後、ベルゼルガは神楽と視線を交わした。
「死神の呪詛は感じられない。まだデストロイはされてねぇな」
「ベル、急ぎましょう」
死神がルイに手を貸して立たせ、城へと走りだそうとした時。
バンプが待ったをかけた。
「使い魔が転送呪文を使えるって言ってるよ」
バンプの背中で蠢く使い魔が、任せろとでも言うかのように丸の形になっていた。
使い魔が使えるというより、使い魔を転送装置としてバンプが飛ばすというのが正しい。
素早い移動手段が確保でき、ベルゼルガはバンプと拳を合わせた。
転送呪文による開門を終え、いざギルの城へと意気込んだ時、ソニックブレードが彼等を襲った。
使い魔が変化して真空の刃を弾く。
魔列車が出発した駅にまた亜空間のゲートが開いていた。
一時撤退したディーラーズが追ってきたのだ。
「デストロイしつけえな畜生! 神楽! その死神親子と先に城へ行ってろ!」
ベルゼルガは銃を抜く。
「お前も護衛なら醜態を晒すんじゃねえぞ!」
「わ、わかってるわよ!」
死神、ルイ、神楽はバンプによって転送された。
駅に残ったのは破壊愛好家と吸血鬼だ。
強化スーツに覆われた身体が二つ、重々しく亜空間から降り立つ。
『……二回戦といこう』ディーラーダイヤの強化脚部が脈打った。
『……ツキは何度も訪れない』ディーラースペードはカードを手で弄んでいた。
◇ ◇ ◇
伝説の死神。
その伝説たり得る理由はギルスカルヴァライザーの強さを評しているからでもある。
生半可な者では伝説と呼ばれることは決してない。
強く、偉大で、カリスマ性に富んでいるからこそギルスカルヴァライザーは伝説の死神と称されているのだ。
確かに惨劇は強い。果てしなく、限りなく強い。
最強に最も近い存在と言われるのも当然だ。そして最強を誰も見たことが無い現状では、実質この怪人――惨劇のカタストロフこそが異界最強と言っても過言ではない。
伝説と最凶。
決して――そう、決して一方的な戦いというわけでもなかった。
『アキュムレーター2号を解放させるたぁ、やるじゃねえか』
「……ッ…ハァ……」
潰れた両腕をだらりと垂らしながらも、ギルスカルヴァライザーは惨劇に食い下がっていた。
肩にかけた呪文布が彼の腕となり、大鎌の柄に巻き付いていた。
「惨劇のカタストロフ……確かに無敵の身体だ。ダメージを与えることはできず、この世の力という力の影響を受けない。無敵の身体から放たれる声もまた無敵……か」
ギルは残像を残しながら分身していく。惨劇を囲むように。
攻撃は効かない。だが疲労が蓄積する可能性はある。それに、どこかに弱点があるかもしれないと考えたのだ。
実際、ギルは一つ惨劇の弱点を見つけていた。
「ギガ・グラビトン!」
惨劇の周囲に重力結界を無数に配置。
やはり惨劇に影響はないが、光は重力に負けてしまう。
惨劇の周囲に光はなくなり、真っ暗になった。
ギルの見いだした惨劇の弱点。
それは視界だ。
一撃目に放った重力結界の中、惨劇は無傷で出てきた。
だが、若干手探り気味で結界から出てきたのをギルは見逃さなかった。
『さすがさすが。こんなに早く見抜かれたのはクロー以来だ』
「確かにお前は無敵。自分を含め、自分の中から放たれたモノは他の影響を受けない。が、視界だけはどうやら別のようだな。見る、聞くなどは少なくとも光や音の影響を受けなければならない」
ギルは惨劇へダメージを与えるには音や光を用いた視覚、聴覚への攻撃が適していると判断した。
が――
『残念ながら受け付ける光と音も許容値を設定されて作られてるみたいでな。ゼブラか、はたまた俺の身体そのものか。どっちにしろ都合のいい身体なんだよ。卑怯だろ? 絶望するだろ?』
「……なんだと」
『こういうのなんて言うんだっけ。昔、準のやってるゲームで見たぞ。ん……あ、そうそう。チートだ。俺はチートキャラなんだよ。クハハハハハ!』
「くぅ!」
『だが視界を奪うのは見事だ。クローも光を偏向させて俺のプレスキャノンを躱してたっけなぁ』
暗闇の中で惨劇は高らかに笑った。
そう、ギルができる抵抗はここまでなのだ。
チートキャラ。卑怯なくらい他との力量差がありすぎる存在。それが惨劇のカタストロフ。
またも結界から出てきた惨劇。その瞬間、首を薙ぐように鎌が飛んできた。
「……ルイ!?」
ギルの背後。
妻のルイシェルメサイアが、大量の鎌を浮かべて立っていた。
彼女だけではない。
死神のロシュと、里原神楽も一緒だ。
駅に飛ばされたルイは、そこで魔列車に乗ってきた死神達と合流したのだ。
だが同時に、一時撤退したディーラーズが再び追ってきた為、ベルゼルガとバンプが駅で食い止めている。
死神、ルイ、神楽はギルを助けるべくその場を二人に任せて城へやってきたのだった。
「あらあら」
「あらあら」
ふわりと日傘を揺らし、双百合が立ちはだかった。
惨劇の至高の時を邪魔させるわけにはいかない。
だが最凶の手は、二人を制した。
『下がってろ双百合。別に何の問題もない』
言われ、白と黒の傘はくるりと廻り、邪魔にならぬよう二人は姿を消した。
さて、と惨劇は呟く。
『かかってこい』
それを合図にルイは浮かべた無数の大鎌を高速回転させる。
ギルは分身をさらに増やしながら、ロシュと神楽へ近づいた。
「危険だ! 城から離れなさい!」
二人の少女は首を振った。断る、と。
「お父さんも、準くんも、助けるの」
「小さいからって甘く見ないでね伝説の死神さん」
ギルは舌を打ち、惨劇の視界を奪うべく重力結界を乱射した。
その中にルイが鎌をすべてぶち込む。
「ルイ、勝ち目はない。私が惨劇を止めているうちに逃げるんだ」
「ふふ、拒否です」
「ルイ!」
「ほら、あの子達も。もう子供じゃないのよギル。私の意志も、あの子達の意志も、あなたに曲げさせることはできないわ」
◇ ◇ ◇
『ふん』
惨劇は思う。
自分は最凶だというのに、臆せず向かってくるコイツらは頭がイカれているのかと。
ダメージを受け付けないことを知りながらまだ諦めようとしないギルスカルヴァライザー。
最凶の圧倒的な力量を知りながら夫を援護するルイシェルメサイア。
人間でありながらこの怪人に勝つ気まんまんな目をする娘。
そして――
(あいつは……)
ピタリと固まり、ロシュの顔を見つめる。
あちらも惨劇の存在を理解していた。
惨劇のカタストロフは、準の裏。裏準と呼んでいた。
とてもとても近くに居て、しかし決して会うことがなかった。
里原準を介してでしか互いの存在を確認できなかった。
そんな二人。
惨劇と死神は、ついに直接の対面をした。
この一年。
里原準と二人っきりになることはなかった。
ロシュにとっても、惨劇にとっても、互いが互いの存在を第三者として意識していた。
――私と準くんの日常の中に誰かが居る。
――俺と準の世界に介入する誰かが居る。
初対面ながらも……。
どれだけ里原準の事を想っているのか。それだけは感じ取れた。
ロシュの中に裏準の思い出がフィードバックする。
それらはすべて明るい日常に順応した姿だった筈だ。
山椒の小粒のようなスパイスとして存在していた筈なのだ。
そう信じていた。
だが――それはスパイスなどではなかった。
とてつもなく危険な劇薬だった。
崩壊と悲愴を招く惨劇のパウダー。
そして里原準を愛するこの二人は、明らかに根底から決裂していた。
さらに言えば――ロシュよりも……惨劇の方が準の事情を把握しているのは事実なのだ。
忌々しい。嫌悪感。
惨劇がロシュに向けた感情はそれだった。
ならば消し去ろう。
片腕を上げた。
直後。ギルの重力結界によって視界を奪われる。
『ええい……』
さすがに欝陶しくなってきた惨劇は、足元の空間を圧縮した。
それを一気に解き放つ。
『スペース・シフト』
瞬間移動……とでも言うのだろうか。
凝縮した空間を解き放った時に起こるエネルギーを利用した惨劇の高速移動技だ。
ギルが反応した時、惨劇はもう彼の隣で――側頭部に掌を当てていた。
零距離からのプレスキャノンを食らえば、おそらくギルの頭部どころか上半身までもが消し飛ぶだろう。
『死――』
死ね。
憎悪を晴らす一撃を見舞おうと圧力砲を放つ寸前。
惨劇の身体はガクリと揺れた。
何かが――自分に激突した?
「うひゃあぁぁあ!」
『は、はぁ!?』
……。
ギャグだ。
冗談だ。
馬鹿げている。
惨劇はそればかりを反芻した。
ぶっ倒れながら。
『へぶっ!』
「……」
「……」
「いた〜い」
「……」
時が止まったように思えた。
何が起こった?
全員が――傍観していた双百合を含む全員が、同じ一言を思い浮べた。
地面にコケた惨劇。
頭をさするロシュ。
ただぶつかった。それだけだ。
急に飛び出してくるからぶつかっちゃった。
たったそれだけの事だ。
だが、コケたのはあの最凶。
ぶつかったのは死神の少女。
さすがに伝説の死神夫妻も口をあんぐりと開けて唖然とした。
『じょ、冗談じゃねえ……』
むくりと頭を上げた惨劇だったが、その上にロシュが飛び乗った。
真っ赤で長い惨劇の髪をむんずと掴み、ぐいぐいと引っ張る。
「おいこのラスボスー! 準くん返せー!」
『あででで。ちょ、待てよコラ。お前なんで俺の髪を掴めるんだよコ――』
「うっさいうっさい! このノッペラ仮面!」
『ノッペ……っ!? だぁぁあああ欝陶しいクソガキがぁあああ!』
惨劇は背中に張り付いたロシュに掌を向け、プレスキャノンを撃とうとした。
「やめろ!」
そこへギルが殴りかかる。腕は機転をきかせたルイによって重力魔法の補助が施されていた。
岩をも砕く打撃は、本来なら惨劇を逸れてしまう。
だがギルの拳は――惨劇の腹部へめり込んでいた。
『なにぃ!』
「攻撃が効く!?」
誰にも、惨劇自身にもわからない現象だった。
いつの間にか攻撃を食らう身体になってしまっている。
これを好機と見た神楽は密かに張り巡らしておいたトラップを発動させた。
今回は紐などではない。強化ワイヤーという代物だ。
「縛界!」
ロシュを剥がそうともがく惨劇の全身にワイヤーが巻き付く。
零鋼の時と同じだ。常に捕縛した者の更に上の力で縛るという絶対縛界。
「惨劇様」
「惨劇様」
ここで双百合が姿を現わした。主人が攻撃を受けたのは少々驚いたが、特に焦る様子もなく惨劇に近づく。
惨劇も捕縛されているというのに、
『なんだ?』
と平坦な口調で返事をした。
「零鋼より天国へ到着したとの連絡が」
「計画発動まで時間がございません。お急ぎを」
それだけ言うと、双百合はその場を離れてゲートを開く準備に取り掛かってしまった。
惨劇はため息を吐くと、喉で笑った。
『だとよ。遊びは終わり』
嫌な予感がした。
ルイはすぐさまロシュには当たらぬよう大鎌を惨劇へと放つ。ギルも同じく大鎌を放った。
神楽が捕縛している今が惨劇を切り刻む絶好のチャンスだ。
『ああ、そういえば。言い忘れてたけどよぉ――』
大量の鎌は……惨劇を通過した。
『俺の身体ってさ――』
右腕の隣に左脚。
胴体の下に左腕。
右脚も胴体の隣。
『分解するんだわこれが』
そう喋った惨劇の頭部は、なんと遥か上に浮かんでいた。
赤い髪にしがみついたロシュも同様に浮いていた。
身体のパーツが全てバラバラになり、神楽の縛界はあっさりと抜けられてしまった。
そのまま右腕はギルの方へ向かって飛び、その顔を鷲掴みにする。
『変幻自在。オールレンジに於いて俺は対応可能』
左腕がギルにボディーブローを加えた。
続いてルイへのプレスキャノン。右腕、左腕、交互に放つ。しかも浮きながら高速で縦横無尽に動き回るので、いつどこから攻撃が来るのかわからない。
右腕のキャノンをくらったルイが吹き飛ぶと、待ち構えていた左腕がキャノンを放つ。
「お母さん! ……こんの、やめれー! 馬鹿ー!」
『だぁから髪を引っ張るなっての! 大体おかしいだろお前、なんで当たり前みたいに俺に触ってんだよ!』
ぐいぐいと髪を引っ張られた惨劇はパーツを呼び戻し、元の身体に合体した。
どうやらこの最凶は普通の生物ではないようだ。
いや、普通ではないのは周知の事実だが、この身体は異常であるというその意識を更に助長した。
「うひゃ、合体した!」
『……ふん。時間切れか』
惨劇の背後に巨大なゲートが開いていた。
双百合がその前に立っており、主人を待っている。
惨劇はロシュのフードを引っ掴むと、自分の前に摘み上げた。
頭の頂から足の先までじっくりと眺め、唸る。
どこにもおかしな点はない。無敵を有敵たらしめる要素がどこにもないのだ。
『……おい。てめえ、準から何か預かってるか?』
いきなりそんなことを訊ねられ、ロシュはきょとんとした。
そして首を横に振る。
返答をもらった最凶は鼻でため息を吐いたような音を出すと、興味なさそうに小さな身体を放り捨てた。
すぐさまギルが呪文布を使ってキャッチ。だがギルは驚いていた。
自分を必ず殺すだろうと思っていた惨劇のカタストロフが、背を向けてゲートへ歩いていた。帰ろうとしているのだ。
時間切れと言ってはいたが、奴が本気を出せば一瞬でこの場からあらゆる生命を抹消することができた筈だ。
(結局……終始遊んでいただけということか)
だが惨劇は確かにギルを殺すつもりで此処へ来た。遊びはしたが、時間切れになる前にギルを消すつもりだったのは事実だ。
では一体、何があの怪人の考えを変えさせたのか。
十年来の復讐をも、中途半端に留まらせてしまうほどの何か。
その何かが――この戦いの中にあったのは間違いない。
『双百合。ディーラーズを引き上げさせろ』
「畏まりました」
「畏まりました」
『ゼロは動きだしたか?』
「はい。つい今し方」
「天国はすぐに堕ちますでしょう」
『所詮は捨て駒。いや、これこそフライヤの望んだ結果か? どっちでもいいか。クハハハハハ!』
高らかに笑う惨劇の声。
瓦礫と化した城に響かせながら、No.13の三人は姿を消したのだった。
◇ ◇ ◇
派遣されたアメリカ支部の人員により、ギルスカルヴァライザーはルイシェルメサイアと共に医療機関へと搬送された。
惨劇の一撃は重く、それを幾度も食らったギルやルイはほとんど動ける状態ではなかった。
見た目も派手に傷ついているが、プレスキャノンによる内部のダメージが甚大だったのだ。
惨劇の遊び場となったギルの城。そこに残ったロシュと神楽は、瓦礫の上に腰を下ろしていた。
「あれが準兄の裏に潜んでいた奴ね」
「裏準くん……。いつも私を助けてくれた」
「アイツは準兄しか興味がないのよ。昔からそう。準兄の為に思考し、行動する。それがアイツ。惨劇のカタストロフなのよ」
「そんなに準くんが好きなんだ」
ここでロシュは惨劇をただの敵ではないと再確認した。
奴は恋敵でもあるのだ。
力も、身体も、きっと里原準を原動力としている。それほど里原準という男に病み付きになった存在。
「なんだか、色々と負けてるかも」
死神はため息を吐いた。
「らしくないわね。準兄かそんなあんたを見たら気を落とすわよ」
「……うん。そうだよね!」
「ほらベル達が来たわよ」
見ると、ベルゼルガとバンプが瓦礫の山を踏みながらこちらへ歩いてくるのが見えた。
どうやらディーラーズとの戦いで深い傷は負わなかったようだ。
「ギャハハハ。ギルスカルヴァライザー及びルイシェルメサイアの救援は成功。上出来だチビ、神楽」
ドカリと腰を下ろす。
「ジャッカルから連絡が来た。高速艇ルシファーの確保ができたとさ。場所は――飛空挺打ち上げ用滑走路。《ユグドラシルレール》だ」
ユグドラシルレール。
それは天を衝くかのような長さを誇る巨大滑走路。
巨大な飛空挺を空へ上げる為には、この急な昇り坂を有するレールが必要不可欠なのだ。
そして数多くの飛空挺を空へ送り出してきたユグドラシルレールは、異界の歴史的な遺産でもある。
四人の次の目的地が決まった。
「ジャッカルと合流すれば戦闘も楽になるだろうな。だが……飛空挺を空へ上げるという計画、たぶん天国側も予想してくる」
なにせ天国へ到達するには飛空挺が必要。飛空挺を空へ上げるにはユグドラシルレールが必要。
天国側もこちらを意識している筈。
「じゃあレールを襲われる可能性は高いのね。どうするのベル」
神楽の問いに、ベルゼルガは答える。
まったくもって予想どおりの返答だった。
「デストロイ」