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王子がシュークリームに負ける時~私の前世はシュークリーム 編~

続きはありません。

この世界には、魔法が存在します。

昔々、この世界は魔王の脅威にさらされていました。

その脅威を取り去るのは、異世界の勇者様しかできないことです。

そしてこの世界は、異世界から勇者となれる方を召喚することにしたのです。

この世界に来られた勇者様は、大変可愛らしい方でした。

勇者様は、選ばれた従者と旅をして魔王を倒しに行きます。

長い、苦しい、旅路を得て魔王の住む魔王城に着いた勇者様。

その勇者様が、目にした光景は汚らしくシュークリームを食べる魔王でした。

勇者様は、キレました。

ブチキレました。

シュークリームを冒涜するかのように食べる魔王に。

キレた勇者様は、明らかなオーバーキルで魔王をフルボッコ。

そして、魔王は倒されこの世界に平和が戻ったのです。

勇者様に、この世界に留まるか元の世界へ戻るのか選択の時が来ました。

勇者様は、元の世界に戻ることを選びました。

帰る時に、勇者様はこう言ったのです。

「シュークリームを冒涜するような食べ方をしてはいけない」と。



私の前世は、シュークリームでした。

見るも無残な最期だったのです。

私たち、シュークリームが売られているのはお金持ちご用達の超有名店でした。

私たちシュークリームを作るのは、可愛らしい容姿で黄金の手を持つ女性のパティシエ様。

そのパティシエ様は、よく乙女ゲームというゲームのお話をしながら、私たちを作るのです。

その乙女ゲームというものの中で、『シュークリームは恋の味!?』という売る気があるのか分からないタイトルのゲームがありました。

そう、ここはその乙女ゲームが現実になった世界なのです。

話を戻しますね。

私たちはある日、シュークリーム界で美味しくいただけると有名で上品なマダムに買われていきました。

そう、ここまではいいのです。

私たちはそのマダムに食べられる前に、マダムの息子によって見るも無残な形に変化しました。

シュークリームと到底呼べない物体に。

私たちを見ると、マダムは悲鳴を上げて気絶しました。

そして私たちは、マダムの息子に汚く食されたのです。


私は、カスタード・シューレ侯爵令嬢。

『シュークリームは恋の味!?』では、悪役令嬢をする予定でした。

悪役令嬢。

それはとても恐ろしい、乙女ゲームの当て馬。

最期には、見るも無残なエンディングを迎える少女。

前世も今世も、無残な最期を迎えるってどういうことなの!?

私は、回避したい。

私は、回避したい。

私は、回避したい。

悪役令嬢であることを!

まだ幼いある日、父様が王子様との婚約話を持ってきました。

父様は、気乗りしない。

「イヤなら、絶対に絶対に絶対に断れよ」

と言ってきました。

そしてやって来た、不幸の使者ヨーグルト・シュークリーム王子。

このシュークリーム国の第三王子様です。

やって来た、ヨーグルト王子様にこの国の至宝シュークリームをお出しすると、見るも無残な形にしてからシュークリームを食べ始めたのです。

これは、この食べ方は、前世シュークリームであった私の最期と同じ食べられかた。

なんて、酷い食べ方。

なんていう、冒涜。

私はヨーグルト王子が帰った後、すぐさま婚約したくないことを父様と母様に言いました。

翌日、父様は輝くような笑顔で婚約話を白紙にしたと言いました。

ありがとうございます、父様。


このシュークリーム国には、学校に入るための特別制度があります。

学校への入学資格前の年齢で入学できるのは、『シュークリームを上手に作ること』です。

ヨーグルト王子と同時に入学すれば、悪役令嬢になることは避けられません。

なので私は、ヨーグルト王子との婚約話がなくなったと同時に、シュークリーム作りの特訓を始めました。

結果、入学資格の年齢前に学校を通い、飛び級でヨーグルト王子の入学前に余裕で学校を卒業できました。

私の学校卒業後に、『シュークリームは恋の味!?』のヒロイン シュガー・リーム男爵令嬢が入学したとお友だちの令嬢たちから聞きました。

シュガー様は、転生者らしく次々と攻略対象たちを堕としていきました。

バニラ・ビーンズ様以外。

バニラ様は騎士団長の息子で、私の婚約者様です。

お互いのシュークリームへの愛情を知り、ゲームとは違い婚約したというわけです。


よく晴れた仕事休みの日に、シュガー様と攻略対象たちが我が屋敷に怒鳴りこんできました。

なんでも、私が学校でシュガー様に嫌がらせをしたみたいです。

城内で、シュークリーム作りという大事な大事な大事なお仕事をしていたのに。

そんな暇はございません。

こう言う時が来るであろうと予想していましたので、国王様のみが使用できる羊皮紙を使った証明書で、この国の一大事業『シュークリーム作り・城への公務証明書』を書いてもらっていました。

それを見て青褪めたヨーグルト王子は、シュガー様とその取り巻きたちを連れて城に戻られました。

翌日の城内でしているシュークリーム作りの休憩時間に、シュガー様が学校をサボって、私のもとに訪ねてきました。

「なんで、カスタード・シューレ侯爵令嬢って『悪役令嬢』じゃなかったの?はっ!もしかして、転生者!?」

私の他に人がいないからいいものを。

「そうです。シュークリーム作り修行をして、王子が学校に入学する前に入学して、卒業したんですよ」

「あったの!?そんな設定」

「この国は、シュークリームが至宝のシュークリーム至上主義の国です。シュークリームのためなら、やったもの勝ちです」

「どんだけ好きなの?シュークリーム!」

「シュガー様は、シュークリームがお嫌いですか?」

「もちろん、大好きよ」

「では、このシュークリームをどうぞ」

私は昼食を入れたバスケットの中から、シュークリームを取出しました。

「これは...見た目、焼き色が完璧なシュークリームじゃないの。食べていいの?」

「はい」

シュガー様は、シュークリームのおかわりをしました。

「そういえば、カスタード様はなんでヨーグルト王子と婚約をしなかったの?」

「語るも涙、見るも涙な出来事のせいです。見たら一目瞭然ですので、見ます?」

私は顔色を悪くしながら、遠い目をして言いました。

「そんな酷いことなの!?」


学校の休み期間に入ったので、ヨーグルト王子が城に戻ってきました。

シュガー様もいます。

おやつの時間になったので、ヨーグルト王子にシュークリームを持っていきました。

「カスタード嬢、なんでここにいる?」

「公務ですので。それよりも、シュークリームを持ってまいりました」

「やった!この間のシュークリームだわ」

「そうか」

ヨーグルト王子様は、シュークリームにかけてはいけない物体をシュークリームにかけて、ぐちゃぐちゃにかき回して食べ始めました。

顔色を悪くして、近くに置いてある椅子に座りこんでしまった私。

憐れ、あのシュークリームは前世の私と同じ目に...

しかし、私は王子様よりも身分が低いので注意できない!

「いや――――っ!シュークリームがぁ―――!」

シュガー様は取り乱して、泣き叫びました。

「前世の私と、似たような目に――――!」

そう言って、シュガー様は気絶しました。

シュガー様も、前世はシュークリームだったようです。


ヨーグルト王子様のシュークリームに対する行為にショックを受けた、シュガー様は取巻きたちを無理やり解散させました。

「まさか、この国の至宝のシュークリームをヨーグルト王子があんな汚らしい食べ方をするとは思わなかったわ」

「初めて、あれを見た時はショック死しそうになりました」

「やっぱり!玉の輿を狙っていたわけではないけど、乙女ゲームのヒロインなんだから、誰か攻略したいなぁ」

「私の婚約者様はダメですよ」

「わかっているわよ。はぁ...」

「シュークリームを美味しく、綺麗に食べる方で」

「本当!私、前世がシュークリームだったからヨーグルト王子の食べ方は受け付けないのよね。誰、その方?」

私の言葉を遮って、シュガー様は食いついてきました。

「取巻きたちの中にいましたよ。騎士団副団長の息子マッチャ・クーダ様です。前世がシュークリームなら、彼が私の婚約者様以外におススメです」

「あなたも、前世がシュークリームだったの?」

「はい」

お互いの前世について語り合い、シュガー様と私は友情を深めました。



その後、シュガー様は無事にマッチャ・クーダ様を射止めて、ラブラブな学園生活を送っているそうです。

ヨーグルト王子はというと、ヨーグルト王子と同じように汚い食べ方をするアマイ・ムーリ公爵令嬢と婚約しました。

ヨーグルト王子は、

「こんな汚らしい食い方をする奴と婚約できるか!どうして俺がこんな目に!」

と喚き散らしているようです。

それを聞いた私とシュガー様は、「お前と同じじゃん」と冷めた目で見たというのは言うまでもありません。




めでたし、めでたし。

読んでくださり、ありがとうございました★

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