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魔王と先生。

「ふふふ、貴様にこの私、魔王さまが倒せるかな」


「やってみないとわからないよ?私の力を舐めないでもらいたいね。」


今、私の目の前には2m以上もある大男がいる。魔王と名乗っているから、おそらく魔王なのだろう。


私の手には聖剣みたいなものが握られている。なんかすんごい光ってて一見強そうなんだけれど、これ地味に重い…。


「私はあんたを倒して再び平和を取り戻す!この世界はあんたが好きにしていいもんじゃないわ!」


「ふん、生意気な女だ!お前に何と言われようが知ったことではないわ!

この世界は私のものだー!!」


うわわ、私めちゃくちゃ小っ恥ずかしいこと言ってるー!

魔王もなんか定番のセリフ言っちゃってるし、恥ずかし!



ふん、だが恥ずかしいこと言ってても勝てばいいんだろう、勝てば。

私を舐めんなよ!あ、さっき言ったわこの台詞。


「いざ!魔王かくごぉおおお!」


「小娘なんぞ軽く捻り潰してくれるわ!」


見ててね、みんな。私は今まさに、世界のために戦います…!

慎ちゃんカメラ回しといてね…!!



うおおおおおぉぉー!!!






キーンコーンカーンコーン


「……はっ」


ふっとチャイムの音で目覚めると目の前には魔王より怖い顔をした人が立っていた。

あ、あれ…?


「緒方ぁ…俺の授業で50分まるまる爆睡とはいい度胸じゃねーかぁ…なあ?」


バックにゴゴゴと効果音が付きそうなくらい怒っているのは、我がクラスの担任、斎藤慎一先生。

なんと私の幼馴染であったりもする。


どうやら私は知らぬ間に爆睡してしまっていたらしい。いつから寝始めたかすら記憶がない。覚えているのは夢で魔王と対峙していたということだけ。


周りを見渡すとみんな震え上がってピクリとも動かない。

こちらを見ていた一番前の席の友人と目が合うと、口パクでアホ、と言ってきた。

失礼な、いや確かにアホなんだけど。


「随分気持ち良さそうに寝てたなぁ、さぞかしいい夢みてたんだろうな、緒方?」


これは超ハイパー級に怒っていらっしゃる…!


「あ、はい…世界の平和のため、魔王に戦いを挑んでました…聖剣みたいの持って…」


そう言った瞬間縮こまっていたクラスメイトが一斉に吹き出した。

みんな担任が怖いので笑いを必死に堪えている。一部堪えきれていないのもいるが。


斎藤先生の顔は眉間がすんごいことになってるなにこれ怖い。


「ほーそれは楽しかったんだろーなーずっーと寝てたくらいだからなぁ」


すごく棘のある言い方をしてくるもうやだぁぁー!


「放課後職員室に来るように。逃げんなよ。」


ドスが聞いた声でそう言い残し、先生は教室から去っていった。


数学準備室じゃなく、職員室に呼び出すってことは、何かペナルティーがあるということだ…!!




「さ、最悪…」


ガックリと肩を落とすと自業自得だー、だの勇者さまは大変だねーなどと言われた。

くそう、馬鹿にしやがってどいつもこいつも!


「皐月!なんで起こしてくんなかったの!」


隣の席の友人皐月に訴えたが、


「いや、起こしたけどあんたが起きなかっただけだし。めっちゃ気持ちよさそうに寝てるしもう途中で諦めたの。」


ほんと、斎藤先生の授業で寝れるのってあんただけだわー尊敬するーと返される始末。


ううう、行きたくない、ペナルティー嫌だぁ…

ああ、いつもは嬉しい放課後が、今日は最悪の放課後だ……





ーーーーーーーーー





「失礼しまーす…」


放課後がきてしまい、真剣に逃走も考えたが逃げたら後がもっと怖い。


ここは素直に従うしか道はない…と胃を決して職員室に入る。




職員室に入ると先生が口々にまたなんかやらかしたのかーと笑いながらからかってくる。

もう職員室に呼び出されすぎて先生達みんな、私のことを知っているようだ。

私そんなに悪いことしてないぞ!ぐすん!


職員室の真ん中らへんにある斎藤先生の席に行くと、肝心の斎藤先生がいない。

また呼んどいていないパターンかよ、あいつ…!!


ちょっとイラっとしていると背後からトントンっと肩を叩かれ、振り向くと後ろには爽やかな甘いマスクのイケメンが。


「なんだ藤堂先生か」


「こんな超イケメンをつかまえてなんだとはなんだ失敬な」


自分でイケメンなんて痛い人だーと言いたいが確かにイケメンだから仕方ない。


この目の前にいるイケメンさんは藤堂和樹先生。英語が担当。

校内で男女問わず人気No.1の先生だ。

どっかの誰かさんとは違って。





「ねー藤堂せんせー、斎藤せんせー知らない?呼び出しといていないんだよ?最低だよね?」


「慎一?見てないなぁ。こんな可愛いお嬢さんを待たすなんて失礼な男だよ、ほんと。さいてーさいてー」


だよねー☆なんて2人で言っていると。




「悪かったな、最低で。」



「!!!!」

いつの間に…!


「び、びっくりした…!慎一、後ろにいるなら言えよーもう、ぷんぷん!」


「藤堂先生、26の男がぷんぷん使うのは色んな意味でキツイって。」


「なにぃ、なに言ってんだ緒方!俺はまだ若いぞ!!まだ26だ!!」


もう26の間違いじゃないのか。





「職員室で教師と生徒が騒いでんじゃーよ。恥ずかしいからやめろ。」


「たくっ、慎一はほんとくそ真面目なやつだなー。そんなんだから生徒に怖がられるんだよ。」


やれやれと首を横に降る藤堂先生と、どうでもいいと言わんばかりの表情の斎藤先生。


実はこの2人、大学の同期なのだ。

斎藤先生の実家にちょくちょく遊びに来ていたので私も昔から知っている。

慎ちゃんという呼び方を羨ましがって、俺もちゃん付けで呼んでくれ!というので愛称は和ちゃんだ。




2人ともイケメンではあるが、性格がこうも違うと印象もこんなに変わるものなのか。


爽やかで冗談も通じる優しい斎藤先生…

駄目だ、想像しただけで吹き出しそうだ。


「お前なんか失礼なこと考えてるだろ」


「いいえ、そんなことありませんよーほほほほー」


相変わらず鋭い男だぜ。





「で、緒方はまた何やらかして呼び出されたんだ?」


「大したことじゃなんだよ!ただちょーーっと居眠りしちゃっただけ!」


「何がちょーーとだ、がっつり50分寝てたくせに。」


きっ!と斎藤先生を睨みつけると、自分が悪いんだろ、と知らんぷり。



「しかも、世界平和のために魔王と戦うところだったんだっけか?聖剣やら持って。」


と言うとお前ある意味すげーな、と藤堂先生が大爆笑。周りの先生もこちらを見ながら笑っている。


恥ずかしい…!穴があったら入りたいくらい恥ずかしい…!!




「じゃ、これ罰として明日までにやってこい。」


そう言って斎藤先生から手渡されたのは数学のプリント、計10枚。

しかも表と裏、両面とも問題がびっしり印刷されているではないか。


「え、これを明日までに?!多いよ!2枚が限界だってこんなの!!」


いや、2枚でもキツイって!と抗議すると、

じゃあ来週一週間放課後に俺と2人きりで補習するのとどっちがいい、と言われ思わず言葉に詰まる。


すると放課後に教師と生徒が2人きりで補習ってさ…なんかこう、エロくね、やらしいこと起こりそうじゃね!と1人で盛り上がる藤堂先生。


はいはい、そんな展開ないから黙っててねーと言うと、ちぇーとむくれる藤堂先生。

斎藤先生とそんな展開あるわけがない。





少し迷ったが放課後まで残って勉強したくないし(しかも一週間)、プリントなら量は多いが一日だけ。多少無理をしてでも明日までにプリントを片付けた方が断然得だ。


「わかった、明日までにこのプリントやってくる。」


「よし、期日は明日の朝のHRまで。それまでに出来てなかったら、来週放課後補習だ。覚悟しとけよ。」


「ふん、私だってやればできるもん!

明日の朝、きっちり10枚!完璧にして提出してぎゃふんといわせてやる!」


私の本気を見せてやるぜ!


「聖剣をシャーペンに持ち替えて頑張れよ、勇者さま!」


ちょ、藤堂恥ずかしいわやめろ。




「じゃあ、早く帰ってしゃーとすましてくらぁ!斎藤先生、藤堂先生さよならー!!」


ただでさえ苦手な数学なのだ、急いで帰って取り掛からないと間に合わない。



頑張れよーと手を降る藤堂先生と走るんじゃねーとちょっと怒りぎみの斎藤先生に別れを告げ、数学という名の魔王を退治にいざゆかんー!!









その5分後職員室に戻ってきて、先生答えは貰えないんでしょーかと尋ねたらお前にやる答えはねぇ、アホと追い返されたのは別の話。

あと、藤堂先生笑いすぎ腹立つ。




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