表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集、web拍手の再録など  作者: 神崎みこ
web拍手再録/タイトルはcapriccio(http://noir.sub.jp/cpr/)さまより
8/75

22 - モノクロオムの世界(少女とカミサマ)

 美しいこげ茶色の髪を無造作に束ねた男は、縁側から庭を眺め嘆息する。

表情はわずかにも変化せず、男の美貌はまるで硬質な人形がもつそれのようでもある。


「つまらないな」


そう呟いたまま、彼は仰向けに寝転ぶ。

目を閉じ、黙り込む。

人工的に作った暗闇の中では、いつもあるものが浮かぶ。

意識して振り払おうとしたその残像すら鮮やかなまま。

目を開ける。

浮かんでいた姿は、突然白黒となって消えていく。

まるで苔むした森の中へ消えていくかのように。


「つまんねぇ!」


一声叫び、男の姿は突然掻き消えた。




「だーかーら、ほんとにやめてくれよ」


薄茶の髪色をもつ男が、わずかに濃い茶色をもつ男へと話しかける。

彼らは人気のないことがあたりまえの、小さな雑居ビルの屋上へと腰を下ろしていた。


「・・・・・・、うるせーな。勝手だろうが」


嘯く男に、薄茶色の男が軽く頭をはたく。


「あのね、もうあきらめたんじゃないの?」

「・・・・・・」


彼らが見下ろした先には、なかなかに美しい少女が立っており、何が楽しいのか同じ年頃の少女と声を上げて笑いあっていた。


「確かにきれーな子だけどさ」


呆れたような顔をして、だけれどもしつこくこげ茶色の男に声をかける。

彼らにとっては、何百回も繰り返されたやりとりであり、ほとんど言うことを聞かない男に、それでも彼は諦めることはない。

彼が諦めた結果がどうなるのか、を、知り尽くしているのだから。


「全然、全く、あの場に適応していないってわかったでしょ?」

「・・・・・・だから?」


彼らが住まうそこは、人の立ち入る世界ではない。

当然、彼らも人ではない。

それを神と呼ぶか、魔物と呼ぶかは「人」次第ではあるが。


「あの子は、あの子じゃない」


快活に笑う少女を指差し、そして誰かを思い浮かべて薄茶色の男は吐き出す。

誰かの面影を重ねていた男は、面白くないような顔をして顔をそらす。


「知ってる」

「だったらあきらめろ」


こげ茶色の男は口を閉じ、そしてその姿を消した。

薄茶色の男は深くため息をつき、同じようにどこかへと消え去っていった。


少女はなおも楽しそうに友人と会話を交わし、その背中は徐々に小さくなっていった。


屋敷へと戻ったこげ茶色の男は、再び縁側へと座り、柱に背を預ける。

緑色の庭園を眺め、何かの姿を探す。

目をつぶり、そして鮮やかに浮かぶ何かを思う。


だが、目を開ければ、そこには色あせた世界が入るばかり。


彼は、また強く目をつむる。

彼だけの鮮やかな何か、を探して。

<A href=" http://ncode.syosetu.com/n1396bu/">少女とカミサマ</A>のおまけ話

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ