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短編集、web拍手の再録など  作者: 神崎みこ
web拍手再録/タイトルはcapriccio(http://noir.sub.jp/cpr/)さまより/狂詩曲2
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10 - 薬指で触れて

 はっきりとは言わない。

けれども彼は何もつけていない薬指に触れ、そしてにこやかに笑った。

それはきっと、彼には決まった人がいて、そしてその相手は私ではないということだ。


「……」


だけど、察しの悪い私はそのことをわかってなどやらない。


「どうする?」


どうするもなにも、いつもやることをやった後は帰るだけだ。

甘ったるい言葉も、優しいいたわりもどこにもない。

どこまでも原始的な行動なのに、どこか機械的だ。

そして、私はそれに気がついてはいる。


「じゃあ、また連絡する」


一方的な会話で、彼は去っていく。

少しの痕跡も残らないようにして。


画面のアドレスをみて、眺める。

一人で家に帰りたくなくて、24時間営業のファストフード店に座り込む。

大してすきでもないコーヒーとポテトを頼みながら。

徐々に暗くなっていく画面に、彼の名前がぼんやりとしていく。

バックライトをつけるように画面に触れる。

そして次の行動を促されるように、画面にさまざまな選択肢が現れる。

通話をするのか、メールをするのか、ほかの事をしたいのか。

そのどれもがあてはまらなくて、軽く電源を落とす。

かばんにそれを放り投げ、冷めてしまったコーヒーをすする。


もう一度、彼との唯一の通信手段がつまったそれを取り出す。

ぱっと明るい画面が目に飛び込む。

そしてまた、私はそれをしまう。

ニュースをチェックするわけでも天気をチェックするわけでも、能動的に誰かと連絡をとるわけでもなく。

空になったカップを黙視しして、重い腰を上げる。


私はまだ、彼を諦められない。


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