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短編集、web拍手の再録など  作者: 神崎みこ
web拍手再録/タイトルはcapriccio(http://noir.sub.jp/cpr/)さまより/狂詩曲2
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07 - やさしくとけた

 元彼のSNSなんて検索するもんじゃない。

ずらっと並んだ家族写真を目の当たりにして、わたしはばかみたいに落ち込んでしまった。


「となり、いい?」


大学の授業で、ぽっかりと空いていた私の隣の席に声をかけて座った彼。

その声になんとなくひかれ、いつのまにか視線は彼をおいかけるようになっていった。

そうなってしまったら、自分が「恋に落ちた」ことを自覚することは時間の問題で、自覚したらしたでぎこちなく彼を追っていた。 その気持ちに気がついたのか偶然なのか。

私と彼はいつのまにか「彼女と彼氏」と呼ばれる間柄になっていた。



思い出はあくまで甘酸っぱくて、くすぐったくて。

嫌な思いもたくさんしたはずなのに、それらの記憶はおぼろげで。

そんな勢いで検索をした彼は、やっぱり結婚していた。

私の知らない女性と、もちろん私の知らない子供たち。

彼女の場所に、私が座ることは想像できないのに、でも少し落ち込む。

よくわからない感情がごった煮になって、しばし画面を片手に固まっていた。


「どうしたの?」


肩を軽くたたかれ、ここが仕事場だということを思い出す。

もうすぐ休憩時間が終わりそうな時計の針を見上げ、曖昧に笑っておく。

すべてを閉じて、バッグに放り込む。

目立たないように深呼吸をして、もう一度バッグを引っ張り出す。

乱雑に物が入ったバッグの中に手を突っ込んで、アメが入った小さなポーチを取り出す。

気分転換用に常備しているそれを一つ口の中へと放り込む。

甘い、蜂蜜の香りが鼻に抜け、そしてじんわりと溶けて行った。

一つ伸びをして、時計を確認する。

感傷はどこかへと消えていく。

何か、一つの区切りがついたのかもしれない。


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