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大切な時間

作者: P4rn0s
掲載日:2025/12/23

友達と、浅ましい郷土料理と、そうじゃない郷土料理の境界線について話していた。

たぶん世界でいちばんどうでもよくて、でも妙に真剣な議題だった。


きりたんぽは許せる。

芋煮も許せる。

あれはちゃんと「土地の事情」が滲んでいるからだと思う。

寒さとか、米とか、川とか、人が集まる理由とか、そういう生活の必然がある。


でも、なみえ焼きそばは許せない。

今治焼き鳥も、正直、かなり怪しい。

それ、ただの焼きそばじゃない?

それ、焼き方変えただけじゃない?

郷土料理って名乗るには、動機が浅くない?

観光ポスターの匂いがしない?


そんなふうに言い合って、最終的に出た結論が、

「スープカレーともみじ饅頭が境界線だよな」

という、誰にも説明できない納得だった。

理由は分からない。

でも感覚として、そこに線が引ける気がした。


そのあと、ふと思い出したみたいに、友達が言った。

「じゃあ、わんこそばってどうなんだろうね」


一瞬、会話が止まった。


わんこそば。

冷静に考えれば、ただの蕎麦だ。

量を細かく分けて、無限に出してくるだけ。

発想だけ見れば、かなり浅ましい。

むしろ企画勝ちの料理ですらある。


なのに、不思議と「許せない」側に入らない。


それは有名すぎるからなのか。

歴史があるからなのか。

それとも、浅ましさを突き抜けて、もはや儀式になっているからなのか。


わんこそばは、食べ物というより、耐久試験に近い。

味じゃなくて、体験だ。

腹八分目という概念を無視して、

「もういい」と言う勇気を試される行事。


そこまで行くと、浅ましいとか浅ましくないとかいう評価軸から外れてしまう。

もはや、郷土料理じゃなくて、文化財だ。


「浅ましさって、たぶん“言い訳の匂い”なんだと思う」

誰かが、ぽつりと言った。


生活の延長として生まれたものは、貧しくても品がある。

でも、後から理由をくっつけて、「郷土」を名乗り始めた瞬間、

その料理は急に信用できなくなる。


わんこそばには、言い訳がない。

理由も主張もない。

ただ、ひたすら出てくる。

やめたければ、自分でやめろ、という態度。


だから許せるのかもしれない。


そんな結論に落ち着いたころには、

もう誰も、最初に何の話をしていたのか覚えていなかった。


ただ、こういうどうでもいい線引きを、

真面目に考えられる時間だけは、

なんとなく、郷土料理よりも大事な気がしていた。

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