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復讐の是非

両眼を撃ち抜かれたルクレールはその場でのたうち回っている。

 しかし、それを見下すジークは何か考え事をするように小首を傾げていた。


「……本当に誰だっけ、これ」


「忘れたの!? 本当に!?」


「何人殺してきたと思ってるんだ、俺達は」


「さっきまで言ってた"変な奴"っていうのは?」


「いや、あの国にはあんな奴だらけだっただろう」


 二人は仲睦まじく会話している、下でもだえ苦しむルクレールのことを置いて。

 ルクレールは激高した。


「……ふざけるな、ふざけるな!やはり、母上も、父上も間違ってなかった!

 復讐なんて無意味なことを続ける狂った復讐鬼め、お前は世界で唯一間違っている! お前は生まれて来るべきじゃなかったたった一人の存在だ! 」


「おお、 父上と母上か、ようやく思い出したよ。学園ではお世話になったものだ。


 学園で散々な言われようだった俺を世界で唯一の特別扱いとは……嬉しい限りだ。

 母子共々、楽しませてくれる」


「狂ってる……だが、僕は負けないんだ……。 

 僕たちは負けないッ! 」


 ルクレールが力を振り絞って叫びを上げた時、下の階から大勢の足音が響いて来た。

 

「……凄い数だね、ジーク君」


「そうだ、僕はお前を憎む人達と共に此処までやってきたんだ。苦しくて、つらい修行を越えて! 」


「おお、恐ろしい、恐ろしい、正しく狂った復讐鬼じゃないか 」


「違う、違うッ! 僕たちは違う! 僕らは生きたい未来がある!

 苦しみを乗り越えて、最後に笑うのは僕達だ!

 お前のいない世界で、思いっきり笑うのは僕達だ! 」


 ルクレールはまだ諦めてなかった。

 彼には仲間が居たのだ。最初こそはジークへの怒りにまみれていた彼ら。だが、共に生きるようになり、共に憎しみを乗り越えようと約束した仲間が居たのだ。


 見えなくなった視界。だが、確信している、今自分の背後には大勢の仲間達が――!


「僕には、僕には仲がいる、――そうだろう、皆! 僕らは――」


「ジーク少佐、ご無事ですか! 」


「第4騎馬小隊、大隊長の安全を確保せよ! 」


「……は?」


 ルクレールは理解できなかった。

 誰だ、この声は? 自分の仲間はこんな野蛮な獣のような声はしていない。

 いや、脳の奥底では理解できていた。来たのは自分の仲間では無く、ジークの仲間だ。


「……誰も来てくれだなんて言ってないが? 」


「申し訳ありません。迫撃部隊から、単身で敵陣に乗り込んだと聞いていてもたってもいられなくなったのです」

「大隊長あるところに我らアリってね! 」

「簡単に逃れられるとは思わない方が良いかと、指揮官殿。見たところ、傷を負っているようです、念の為に手当を」


「やれやれ、だね、ジーク君」


「ほんと……いい仲間を持ったよ」


「嘘だ、何故僕の仲間は来ずに、お前の仲間が来るんだ……。何故だ、何故だ……?

 殺したのか、僕の仲間を! 」


 ルクレールの魂の慟哭。それを聞いたジークは部下に此処に来るまでにそれらしき人間を殺したのか、と部下に尋ねた。しかし……。


「……いえ、殆どの敵は撤退済み。それらしき姿は何処にも見当たりませんでした」


「成程、報告ありがとう。

 とういうことだ、残念ながら、お仲間は逃げ出したんだろうな。

 本当に残念だ、来てくれたのならもっと戦争が出来たというのに」


「ち、違う。ジャック、それにハンナ、クリスティーナだって……彼らが僕を裏切り訳がないッ! 」


 口ではそう言いつつも、絶望が、苦いものが広がっていく。もしかして、いや、本当に仲間は自分を裏切って逃げてしまったのか?

 頭を抱え、とうとうすすり泣きのような声を上げてしまった彼。


「うわっ……ジーク君、この人どうするの?」


「隊長、こんな相手なら我々でも楽勝です。排除いたしましょうか? 」


 だが、ジークの答えは意外なものだった。


「いや、いい。放っておけ。

 それより……そうか、敵はいなくなったか。

 各部隊へ連絡だ。

 状況終了、解散、冬眠のお時間だ。次の夜を待て」


「クソ、出遅れたか」「へいへい、もうお終いか」 「次の戦が楽しみですわ」


 視界を失ったルクレールは、仲間と久々に会った仲間と談笑するような楽しげな声を聞いた。そして遠ざかる足音も。


「ま、待て! 僕はまだ死んでない! 

 僕と戦え! どうした、逃げるのか、怖いのか、僕と戦うのがッ!」


「だって、とどめ位刺してあげたら? 」


「いや……別にいい」


 ジークは立ち止まり、立つことすらままならないルクレールを見下した。


「だってな、復讐に囚われたそいつと違って……もう、そんな《《昔の事》》俺にとってはどうでもいいから」


「お前ッ! あれだけ殺しておいてどうでもいいだと――! 」


「どうした、復讐なんて無意味なんだろう? 

 お前の母上も、父上もそんなこと言ってたな。


 で、実際どうなんだ?

 目の前にどうしようもない程、憎んでいる相手が居るというのに……何もすることが出来ないのは?

 ……どうだなんだ、何も出来ないまま死ぬ気分は?」


「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ”!」



 叫びの中、立ち去るジークとエリ―。途中、エリーはこんなことを呟いた。


「で、あの子何のために来たの?」


 ◇


 ジークらが城を後にした数分後、リカールの残像は焼け落ちた。


「復讐は無意味って言うのは、人間的に出来た人間の言葉なのか、憎しみを晴らすことを諦めた無能の言葉なのか。

 エリー、どう思う? 」


「さぁ、とにかく私は、何処までも突き進むジーク君が大好きだよ! 」


「そうかい? ……なら、次の戦争に行こうか」

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