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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
第3章 悪役男爵とバロウ家

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第40話 もう子供じゃないんだから!


 ――海。


 それは学生にとって、青春の思い出を作る最高のスポット。


 ザアッと寄せては返す水の音と、潮風特有の磯臭い香り。


 若い血潮を持て余す者なら、砂浜から伸びる大海原を見て「海だー(ウェミダー)!」と叫ばずにはいられないだろう。


 ……だが、俺はとてもそんなテンションにはなれないでいた。


「それでは皆さん、楽しい合同合宿の始まりです! 目一杯楽しみましょうね!」


 集まった生徒たちに対し、ハキハキと挨拶するパウラ先生。


 海が見える丘の上に立てられた三軒のペンション。

 その庭先に集められて、整列する俺たち王立学園の生徒。

 気分はまさに林間合宿だ。


 ……やや殺伐とした雰囲気ではあるが。


 Eクラスの連中なんて、明らかに敵を見る目で俺たちのことを見てくるし。


 ちなみに、俺が魔法でけちょんけちょんにしてやったミケなんとかってEクラス”(キング)”は姿が見えない。


 まさかもう退学したのか?

 いや、流石に早すぎる気もするが……。


 ま、いっか。

 別にどうでもいいし。


「――各クラスの皆様方、私が今回の合同合宿を発案者、ライモンド・クアドラです。よろしくお願いします」


 パウラ先生の隣に立ち、にこやかに笑って挨拶する片眼鏡の男。


 Dクラスの担任、ライモンド・クアドラ。

 年齢はおよそ三十半ば~四十歳くらいで、一見すると温和な感じの優男だ。


 が、どことなく陰がある。

 さり気なく”なにかを隠してる”ような気配があるというか。

 こればかりは直感だけどさ。


 ただのお人好しってだけの人物じゃないのは、たぶん間違いないと思う。

 得てしてこういう奴ほど裏があったりするしな。


 とはいえ、かつて魔法省に所属していたというだけあって高い魔力を感じるのも事実。


 かなりの実力を持った魔法使いであることは間違いないだろう。


「今回の合宿は私が担当責任者、Eクラスのフリアン先生とFクラスのパウラ先生に補佐を務めて頂きます。各々がより一層勉学と魔法に精通できるよう努めさせていただきますので、どうぞよしなに」


 ――よく言う。


 今回の合同合宿、実際は”Dクラスのための強化合宿”って言った方が正解なんだろ?


 本音じゃ自分の持ちクラスに他クラスを蹴落とさせて、この機会にポイント稼ぎさせようって魂胆のはずだ。


 でなけりゃ、そもそも蹴落とし合いを是とする王立学園で馴れ合いの合宿なんてするはずないだろって。


 ま――俺とレティシアがいる限り、そう上手くはいかせないけどな。


「それと……今回は魔法省から特別講師(・・・・)の方をお呼びしております」


 ライモンド先生が言うと――突然、彼の隣にフワリと女性が出現する。


 瞬間、ザワッとどよめく生徒たち。


 転移魔法――いや、違うか。

 以前サイクロプスと戦った時のような魔法陣は見当たらない。


 恐らく身体を透明にする魔法でも使っていたのだろう。

 それを解除して、さも瞬間移動でもしたように見せた感じか。


 どっちにしたって、非常に高度な魔法であることは間違いない。

 オマケに今まで気配を感じなかった。

 やっぱり――流石だな。


 そんな女性の姿を見たレティシアは、


「――――姉……さん……!?」


 非常に驚いた様子で目を丸くする。

 さしものレティシアでも、彼女の登場は予想できなったらしい。


 よしよし、愛妻へのサプライズ(・・・・・)大成功。


 現れた女性は指先でスカートを摘まむと、


「初めまして、王立学園の皆様。私は魔法省に努めるオリヴィア・バロウと申します」


「バロウ……? バロウってまさか、バロウ公爵家……!?」


「ってことは――!」


「まさか、レティシア夫人のお姉さんですの!?」


「す、凄い、そっくりです……!」


 DクラスやEクラスの生徒は勿論、Fクラスの面子も大層驚いた様子。

 特に女子たちの反応は見ていて面白い。


 だけど、そりゃ驚くよなぁ。

 マジでレティシアそっくりなんだもん。


 オリヴィアはチラッとレティシアの方を見ると、


「今回の合宿は特別講師を務めさせていただきますので――よろしくね」




 ▲ ▲ ▲




「レティシア! 会いたかったわぁ!!!」


 挨拶が終わった後の休憩時間。

 待ってましたとばかりに、オリヴィアは勢いよくレティシアに抱き着いた。


「ね、姉さん、苦しい……!」


「ああ、私の可愛い可愛い妹……! ずっとずっと心配してたんだから!」


 スリスリ、スリスリ。

 もう全力で妹に頬擦りするオリヴィア。


 本当の本当に、心の底から心配していたのだろう。

 彼女の所作からそれが十分過ぎるほどに伝わって来る。


 うんうん、わかるぞ……。

 レティシアと離ればなれになるなんて、つら過ぎるもんな……。


 誘拐なんてされようもんなら、相手を皆殺しにしたくなっちゃうレベルだよな……。


 激しくオリヴィアに感情移入に、一人で頷く俺。


「で、でもどうして姉さんが……? アルバンは”魔法省に知り合いがいる”としか……」


「ええ、私と彼は立派なお知り合い。少し前に偶然城下町で知り合ったのよ」


「……アルバン、私に隠してたのね」


 むすっとした顔でこちらを見てくる我が妻。

 対して口笛を鳴らして顔を逸らす俺。


 俺としても隠し事をするのは心が痛かったのがだ、それ以上に彼女の喜ぶ顔が見たかったのだ。


 だから怒らないでほしいなぁ、なんて。

 ……秘密にしてた罪悪感が余計に強くなるから。

 

「だけど元気そうでよかったわ。それに少し会わない間にまた綺麗になったわね」


「や、やめてよ……もう子供じゃないんだから……!」


「ウフフ、姉にとって妹はずっと子供みたいなものよ」


 レティシアの頭を微笑ましそうに撫でるオリヴィア。

 それに対してレティシアは恥ずかしそうに頬を赤らめる。


 お?

 これは意外な一面。

 あのレティシアが子供扱いされる一面が見れるとは。


 普段の彼女は年齢以上に大人びているから、これはギャップを感じざるを得ない。

 あまりの可愛らしさに、思わず胸がドキリとする。


 改めて妻にときめいてしまいそう……。

 ヤダ、これが恋……?


 などと思っていると、レティシアの表情が少しだけ曇る。


「でも……姉さんが私に会うのは、お父様がいい顔をしないんじゃ……」


「そんなの気にしないの! これは魔法省の正式な業務なんだから、お父様にだって文句は言わせないわ。それより――」


 続けてオリヴィアは、俺の方を見る。


「……いい旦那様に巡り合えたわね、本当に」


「姉さん……」


「アルバン・オードランがあなたを大事にしてくれる人であって、心からよかったと思う。彼になら妹を任せられるもの」


 パチッとウインクしてくるオリヴィア。


 レティシアもどこか嬉しそうに微笑み、


「――ええ。私もアルバンが夫であって、心からよかったと思うわ」


 そう、言ってくれた。


 お、おおう……。

 なんだか改まって言われると、流石に少し照れるな……。


 でも……嬉しいね。

 彼女にそう言ってもらえるのは、さ。


「さて――それじゃあ、感動の再会はここまでにしておきましょう」


 パンッとオリヴィアが両手を叩く。

 仕切り直しだ、と言うかのように。


「一応私も魔法省の人間として来ている身だから、しっかりお勤めは果たさせてもらいます」


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