第254話 革命お嬢様、エステル・アップルバリ
《エステル・アップルバリ視点》
『おぉっと――! エステル・アップルバリ、立ったッ! 立ち上がったッ!』
私がカウントを破って立ち上がると、解説者の声が響き渡ると同時に〝ワッ!〟という観客たちの歓声が聞こえてきますわ。
「いいぞアップルバリ――!」
「お嬢様なら根性魅せろォ――ッ!」
「応援してるからな――ッ!!!」
「……フフ、幻の中だっていうのに、どうして私ってば応援されちゃってるのかしら」
変な感じですわね。
でも、悪い気分じゃありませんわ。
不思議と……やる気が漲ってきましてよ。
『もの凄い闘争心だアップルバリ! まさに闘魂! 〝世界のお嬢様たちよ見ているか、これがお嬢様の生き字引! これぞお嬢様の生き様だ!〟と言うような、凄まじい気迫でありますッ!』
――額から、熱い血潮がドバドバ流れ落ちる感覚。
でもド頭の中は最高に冴え渡ってますわ。
こういうの、無我のお境地って言うんでしょうね。
『試合続行、試合続行です! 不死鳥の如く立ち上がったアップルバリを、ヨハンセンはどう攻めるのかッ!?』
「――セイッ!」
再び襲い掛かってくるヨハンセンの巨体。
けれど私は、彼のぶっとい剛腕の一撃をヒラリと回避。
そして彼の背後に回り込むと、両腕を彼の腰に回してガッチリと固定。
そのまま後方に倒れ込むように、勢いよくヨハンセンの身体を浮かせて――
「お食らい遊ばせ」
宙で弧を描くように――首の付け根辺りから、思いっっっっっ切りリングの床に叩き付けて差し上げました。
刹那、〝ズガァーンッ!!!〟というリングが叩き割れたんじゃないかと思うほど快音が、会場全域に響き渡りましたの。
『き、決まった! ジャーマンスープレックス! 恐ろしいほど見事なジャーマンスープレックスだ! いきなり大技が入ったッ!』
大技、ですって?
まだまだ――これじゃ終わりませんわよ。
「ふううぅんぬうううううううううううううううううぅぅぅぅぅッッッ!!!」
私はヨハンセンの体勢が崩れている間にすかさず片腕でヘッドロックを決め、もう片方の腕で彼の腰のベルトをむんずと掴みます。
そうして全筋肉の〝力〟を余すことなく解放して――ヨハンセンのガチムチおマッチョな肉体を、逆さま状態にして宙へと持ち上げました。
『な、なんと……! 力任せに巨漢のヨハンセンを持ち上げたアァッ! あの不沈の戦艦が、宙に浮いたアアアァァァッ!』
「ゥオラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」
絶唱と共に――私はヨハンセンの巨体を、ド頭のてっぺんから床へと全身全霊で垂直落下。
彼が頭から床へと叩き付けられる衝撃は、まるでお隕石が地面へと落下するくらいの威力。
お陰でリングの一部が完全に陥没してしまいましたわ。
『続け様のブレーンバスターアアアアアァァァッ! なんという大技の連発! これほど華麗な連続投げは見たことがなあああぁぁぁいッ!!!』
どよめきと歓声が、一挙に会場を包み込みます。
ホホホ……どんなもんですの……!
これがお嬢様の底力ってェヤツですわ!
『なんということでしょう、これは波乱の展開です! 噛ませ犬かと思われたアップルバリの連撃に、あのヨハンセンが立ち上がれない!』
「オ……オウ、マイッ、ガッ……!!!」
流石のヨハンセンも二連続で大投げ技を受けて、床へとダウン。
どうにか身体を起こそうとしますけれど、頭の中がグルグル回っていらっしゃるご様子。
常人がマトモに受ければ首の骨が粉々に砕けるどころか、頭蓋骨まで木端微塵になるくらいの威力だったのに。
それでも立ち上がろうとする辺り、やっぱりヨハンセンも大概ですわね。
そんなヨハンセンの姿に、会場は騒然ですわ。
『まさに下剋上! まさに革命! そう言わずしてなんと言えばいいのでしょう!? 革命戦士アップルバリ――いや革命お嬢様エステル・アップルバリが、今ここに爆誕!』
「いいぞーアップルバリーッ!」
「俺、ヨハンセンより彼女を応援するぜ!」
「エ・ス・テ・ル! エ・ス・テ・ル!」
少しずつ――徐々に――私の名を呼ぶ大合唱が始まっていきます。
「エ・ス・テル! エ・ス・テル! エ・ス・テル! エ・ス・テル! エ・ス・テル! エ・ス・テル! エ・ス・テル! エ・ス・テル! エ・ス・テル! エ・ス・テルッ!!!」
ほんのついさっきまで、会場はヨハンセン応援ムードで一色だったのに。
いつの間にか……私を応援する声で、会場は埋め尽くされてしまいました。
「ガ……ガッデムッ……!」
ヨハンセンはフラフラとよろけながらも、どうにか立ち上がってきます。
――素晴らしいですわ。美しいですわ。
私渾身の投げ技を受けても尚戦意を失わない、その熱き闘魂。
例え幻の中であっても、あなたはスタンリー〝サンライズ〟ヨハンセンですのね。
ならば――
「……ヨハンセン、私の〝理想の王子様〟」
「――!」
「例えここが悪趣味な夢幻の空間なのだとしても……あなたは私の憧れですの」
私は……グッと、右腕に〝力〟を込めます。
そしてゆっくりと、少しずつ、アピールするように――グルリグルリと右腕を回して、気を溜めていきますの
「だからこそ――そんなあなたから受け継いだ〝技〟で、沈めて差し上げます」
そう言って、私は大きく背後へ飛びます。
そして大きくしなるリングロープに身体を預け、ロープの弾性を限界まで溜め込みますわ。
ミシミシッ、と鳴るリングロープ。
そのしなりが限界にまで達した瞬間――私は射出される弓矢のように、ロープの反発力を全身で受けて吶喊。
「終わりですわ――ヨハンセンッ!!!」
100パーセントの――200パーセントの――いいえ、300パーセントの勢いで、ヨハンセンへと突っ込む私。
勢いのままに、勢いを一切殺さずに、勢いをどこまでも加速させて――私は〝力〟を溜めた右腕上腕二頭筋を、ヨハンセンの首へと叩き込んで差し上げました。
『きっ……決まったッ! ラリアット、ラリアットだ! あのヨハンセンに、ラリアットを返したッ!!!』
ええ、そう。
ラリアットと言えば、スタンリー〝サンライズ〟ヨハンセンの十八番。
彼を象徴する、私も大好きな技。
そんな理想だからこそ、私なりにアレンジして会得した、あなたから継承した必殺技。
〝対あり〟ですわ――〝理想の王子様〟。
そして――さようなら。
『こ、これはまさしく……エステル・アップルバリのラリアット――〝バリ・ラリアット〟だッ!!! 』
私のラリアットの直撃をモロに受けたヨハンセン。
彼は空中で身体を回転させた後――壊れた人形みたいに、リングの上に勢いよく叩き付けられましたの。
『し……沈んだ……! スタンリー〝サンライズ〟ヨハンセン――〝バリ・ラリアット〟で、リングに沈んだアアアアアアアァァァァァッッッ!!!』
本当はサソリ固めとかオクラホマ・スタンピードとか、もっと色んな技を出したかった……。
けどプロレス知らない人でも聞いたことある技って、ジャーマンスープレックスとかブレーンバスターくらいでは?と思って諦めました(´·ω·`)
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