表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第3章「ショタの初恋を奪ってしまいましたわ~!」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/259

第250話 恥辱の精通


「で、攫われた王子はどこにいる? アル王子っていう子供なんだけど」


 無駄にだだっ広い屋敷の中をひとしきり暴れ回った俺は、適当なゴロツキの胸倉を掴み上げて質問する。

 もう探し回るのも面倒になったから。


「し、知るかよ! 知ってても手前(テメェ)なんかにゃ教えないね!」


「あ、そう。それじゃあ手足を一本ずつ斬り落としていくから、答えたくなったら答えろ」


「うわーッ!!! 待て待て待て! 話す、話すからッ! 早まるなッ!!!」


「んじゃさっさと話せよ、面倒くせぇなぁ」


「あのガキなら地下だ! 酒庫にある秘密の地下室に、アンブローズの兄貴が連れてった!」


 自分の手足可愛さに、ゴロツキはあっさりと白状。

 案外根性ナシだったな。

 もし俺なら、レティシアを守るためなら腕でも足でも平気で差し出すのに。


 ま、俺だって蟻んこの手足を引き千切って遊ぶような趣味はないし、素直に話してくれる分には助かるんだけど。


「情報どうも~」


 俺は一言礼を言うと、ゴロツキの頭をぶん殴って気絶させる。


 ――屋敷に突入した俺とエステルは二手に分かれ、囚われの身であるアル王子を探していた。


 屋敷は無駄に広いし中は虫けらで溢れ返ってるしで、手分けしないと時間ばっかり食いそうでやってられんかったから。


 そんなこんなで、ゴミ掃除ならぬ虫掃除(・・・)をしながらアル王子を探し回ってたワケで。

 お陰で俺が通った跡は、駆除した虫けら共の死骸だらけで廊下が埋まりそうなほど。


 ああいや、でも全部が全部死骸ってこともないか。

 あんまりやり過ぎると後でレティシアに怒られちゃうから、多少手は抜いておいたし。

 死に切れてない奴も、まあボチボチいるだろう。たぶん。

 

 でも虫けらの駆除も飽きたし、屋敷の中ほっつき歩くのも面倒くさくなってきたから、こうして聞くことにした。

 つーか初めからこうすりゃよかったか。


 なんて思っていると――


「どっせええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇいッ!!!」


〝ズバーンッ!〟と壁を突き破って、虫けら(ゴロツキ)突進(タックル)をぶちかますエステルが俺の前に現れる。


 馬鹿力を余すことなく受けた虫けらは悲鳴を上げる暇すらなく、白目を剥いて失神したまま床に転がった。

 うわぁ、痛そう。


「だらっしゃあああぁいッ! このエステル・アップルバリと〝(おパワー)〟比べなんて、5000兆年()えーんですのよッ!」


「おうエステル、そっちもあらかた片付いたっぽいな」


「あら、オードラン男爵。ということは、もうお屋敷を半分以上探し尽くしてしまいましたのね」


 俺の姿を見て、やや不完全燃焼気味とでも言うようにグルグルの金髪縦ロールを払うエステル。


 俺とエステルは屋敷へ飛び込むなり左右に別れ、それぞれ建物の右半分と左半分をしらみ潰しに探していた形となる。


 なのでなにも考えず一部屋一部屋見て回っていると、いずれ自然とこうして落ち合うことになるワケで。


 ちなみに、この屋敷は五階建て。

 俺たちが今いるのは、既に四階。


 屋敷の中の虫けら共はおおよそ駆除したっぽいし、外はコピルたちが抑えてくれている。

 乱闘事態は続いてるっぽいから、いつ屋敷の中に雪崩れ込んでくるかはわからんが。


「もう面倒くさくなったからさ、虫けらからアル王子の居場所を聞き出したぞ。なんでも地下の隠し部屋にいるんだと」


「なーんだ、こうして上階まで登った意味はありませんでしたわね。とんだ無駄足でしたわ」


 エステルはうーんと背伸びし、首をコキコキと鳴らす。


 いつものエステルなら「殴り甲斐のあるお喧嘩ができて気分爽快でしてよ!」くらい言いそうなモノだが、どうもイマイチ不愉快そうだ。


 不愉快そうというか、闘志がみなぎっているというか。

 目が、据わっている。


 まあ、目の前でアル王子が連れ攫われたせいだろうな。

 今のエステルは、ちょっとおっかない(・・・・・)


「そんじゃ、さっさと地下に向かいましょう。アル王子が待っていましてよ」


「へいへい」


 アル王子を助け出す気満々のエステルの後を、気怠~く付いていく俺。


 ぶっちゃけ俺はそこまでやる気ない。

 アル王子は気の毒だとは思うが、今回の一件は俺自身にはあんま関係ないから。

 適当に助け出して、後でレティシアに褒めてもらえたらそれでいいし。


 もっとも、注意しなきゃいけない相手が一匹いるのも事実なんだけど……。


 なんて考えながら、廊下を歩き出したのだが――


「……!」


 俺はすぐに感じた(・・・)

 何者かの〝視線〟を。

 何者かの〝気配〟を。


 反射的に足を止め、廊下に備えられた窓の方へと目を向ける。

 俺たちのいる場所は窓から屋敷の中庭が見下ろせるようになっており――その中庭には、二つの人影(・・・・・)が立っていた。


 そして――その内の片方と、目が合う。


「……おい、エステル」


「?」


「よかったな、地下まで下りる手間が省けそうだ」


 俺の視線の先。

 広い中庭、その中央。


 そこには――小さな王子様に首輪を繋ぐ、執事風の男の姿。

 アイツ……笑ってやがる(・・・・・・)


 俺は窓ガラスを蹴り破り、四階から中庭へと飛び降りる。

 そして地面に着地し、ゆっくりと身体を起こす。


 エステルも俺に続いて四階から飛び降り、俺の傍に着地。


()エステル殿(えひゅひぇりゅひょの)……!」


「アル王子……!」


 リードに繋がれ、口には猿轡を噛まされたアル王子の姿を見たエステルは、すぐに臨戦態勢となって彼の下に駆け付けようとする。

 だが、


「エステル、待て」


 そんなエステルを、俺は制止した。


 ……間違いない、アイツだ。

 エステルを格不足(・・・)扱いし、アル王子攫っていった執事っていうのは。


 あの男からは、言い知れぬなにか(・・・)を感じる。

 アレは――虫けらなんかじゃない。


「お初にお目にかかります、アルバン・オードラン男爵。遥々お越しくださいましたこと、感激の至り」


「お前だな、アル王子を攫っていった野郎は」


「ええ、私の名前はアンブローズ・ガルシア。もっとも、この名は既に意味なきモノですが」


「名前なんて聞いてねーよ。よくも俺をこんな面倒事に引っ張り出しやがって……」


 カチャリ、と俺は剣を握り直す。


「それで――お前、いったい(なん)だ?」


「はて、(なに)とは?」


「お前さ、臭う(・・)んだよ。あのクソ忌々しいジャック・ムルシエラゴ――その傍にいた醜い化物と、(おんな)じ臭いだ」


 こうしてあの男の前に立って、ハッキリとわかった。


 俺からレティシアを奪おうとした、偽物のジャック・ムルシエラゴ――正確には〝ラーシュ・アル=アズィーフ〟とかいう名前のクソ野郎。


 アイツの傍らに寄り添い、最後にはラーシュの身体を乗っ取っていたであろう、あの緑色の化物(モンスター)


 このアンブローズって男からは……あの醜い怪物と同じ臭いがする。

 いいや――アイツなんかより、ずっと生臭い(・・・)


「おや……これはこれは」


 俺の言葉を聞いたアンブローズは、少し驚いた表情をして見せる。

 流石に予想外だった、とでも言うように。


「驚きました、あなたがそれほどの嗅覚(・・)をお持ちとは。ですが……あんな低属な神と一緒にされるのは、不本意極まる」


 やや不愉快そうに片眼鏡(モノクル)を動かすアンブローズ。

 表情は相変わらず気色悪い薄ら笑いを浮かべているが、少しだけ苛立ちが混じったように見えた。


「さて、あなた様をご招待差し上げたのは他でもなく。〝邪神〟を倒したというその絶技、ぜひ拝見させて頂ければと」


「別に、見たけりゃいくらでも見せてやるけど。ってゆーか、面倒だからさっさと死ね」


 阿呆らしい。付き合ってられん。

 コイツの正体も目的もなんだか知らないが、一ミリも興味ない。

 やっぱり適当にぶっ殺して、さっさとアル王子を連れて帰ろう。


 俺は気怠さを隠そうともせず、肩の上でトントンと剣を弄ぶ。


「うーん……なんと申しますか、もう少しやる気を出して頂けませんかね……?」


「嫌だね。面倒くさいから」


「やれやれ、困りましたねぇ」


 アンブローズはそう言うと、ゆっくりと片手を掲げる。


「実力を拝見するためにお呼びしたのですから、手抜きでは困るのですよ。あまり品のない真似はしたくなかったのですが――」


 掲げられた手の指先に、ほんの少しだけ得体の知れない力が宿る。

 それが極めて邪悪な力であると、俺には直感的にわかった。


「少し、辱める(・・・)としましょうか」


 そして――〝パチンッ〟と指が鳴らされる。

 すると、


「――!?」


 突然、アル王子の身体がビクンッと跳ねた。

 細く華奢な腰を屈め、僅かに膝を曲げ内股になって、ガクガクと足を震わせる。


 アル王子自身、自分の身体になにが起こったのか、咄嗟に理解できていないらしい様子だった。


(ひゃ)……なに(ひゃひ)……これ(ひょれ)……? おしっこ(おひっほ)……じゃない(ひゃない)のが(のは)……っ」


 ジワッ――とアル王子の履いているズボンに、小さな染み(・・)が浮かび上がる。

 その染みは、ほんの僅かに白濁色に濁って見えた。


「おや、もしや初めて(・・・)でしたか? これは失敬」


()……見ないで(みひゃいへ)……エステル殿(えふへるほの)……っ」


 初めて体感するであろう白い快楽。

 だがそれを意中の女性の前で、最も惨めな形で晒してしまった、圧倒的な恥辱感。


 きっとアル王子の頭の中はぐちゃぐちゃで、まだ幼い彼ではなにが恥辱なのかすら自分で自分に説明できないはずだ。


 だがそれでも、羞恥で胸がいっぱいになったのだろう。

 アル王子の両目には大粒の雫が溢れ――それはすぐに涙となって、ポタポタと地面に滴った。


 そんなアル王子の姿を見させられて、俺の中に初めて怒りと嫌悪が湧き上がる。


 しかし――俺の方が遅かった(・・・・)

 俺のすぐ隣から、〝ブチィッ〟というなにかがキレる(・・・)音が木霊する。


「――――てえええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇンめえええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッッッ!!!!!!」


 もしかしたら、レオニールと最後に立ち会った時以来かもしれない。

 俺の方が出遅れ(・・・)たのは。


 俺が斬りかかるより早く、速く、(はや)く――右腕の拳に全身全霊の憤怒を込めたエステルが、アンブローズへと殴りかかった。


 エステルの身のこなしは、まるで巨木を薙ぎ倒して進む暴風雨のよう。

 一歩地面を踏みしめるごとに、考えられないほどの衝撃波が大地を揺らす。

 大きく振り被られた拳には極大の破壊力が圧縮され、さながら城門を打ち砕く破城槌の如し。


 万物あらゆるモノを粉砕する怒りと暴力。

 究極の〝剛力〟の解放。

 未だかつて見せたことのない、完全なる〝ブチギレ〟。


 それをたった一点にぶつけようと――今まさに、アンブローズ目掛けて襲いかかる。


 ――しかし、


「……格不足(・・・)は下がってらっしゃい」


 アンブローズが不気味に口の両端を吊り上げる。


 刹那――黄色い影(・・・・)が、奴の足元で蠢く。

 その影は地面から離れると瞬く間に巨大化して――エステルを飲み込んだ。


「――!? しまっ……!」


「ほら、あなたも(・・・・)行っておいでなさい」


 アンブローズはリードを引っ張ると、エステルを飲み込んだ影に向けてアル王子を放り込む。


 二人を跡形もなく飲み込んだ影は再びアンブローズの足元へと戻り、何事もなかったかのように普通の影となった。


 アンブローズは事もなげに微笑を浮かべたまま、俺へと視線を戻す。


「さて、やる気を出して頂けましたか?」


手前(テメェ)……」


「ご安心を、彼女たちは異界に取り込んだだけです。もっとも、生きて出られるかはオードラン男爵(あなた)次第ですが」


 ――面白い、上等じゃねぇか。


 俺はようやくやる気(・・・)を出す。

 いや、()る気を。


「面倒くせぇのは嫌いだって言ってんのによ……。そんなに死にたきゃ、殺してやる」


2026.2/15時点

新作短編を投稿させて頂きました!

☟ ☟ ☟


『婚約者にも姉妹にも両親にも愛されなかった悲運の侯爵令嬢、今日から〔殴る〕始めます。』

https://ncode.syosetu.com/n8350lt/


サクッとざまぁが味わえる内容となっておりますので、よろしければお読み頂けると嬉しいです~^^



指パッチン精通、流行らせたい(*´ω`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました』✨️
『怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました』1巻書影
ご購入は こちらから!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ