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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第3章「ショタの初恋を奪ってしまいましたわ~!」

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第248話 カチコミ


「おいエステル、アル王子の救出はお前に任せるからな」


「合点承知」


「俺はアル王子を攫ったとかいう奴をやる(・・)。雑魚の群れなんぞに手間取るんじゃねーぞ」


「あ~ら、一体誰に向かって言っておやがりますの?」


 フフン、とエステルは鼻で笑う。

 だがその目は一ミリも笑っていない……どころか、明らかにバチギレ(・・・・)している。


「このエステル・アップルバリ……〝乱闘〟ってェのは、得意中の得意なんですのよ」


 そう言って、粉々に蹴り破られた正門の破片を踏み潰しながら、エステルは敷地の中へズカズカと入っていく。


 ――ノワールとかいうゴロツキの親玉の(ねぐら)ってのは、西区にあるいやにデカい屋敷のことだった。


 半スラムである東区の丁度反対側にある西区は、中央区の次に富裕層が暮らす地域。

 貴族が多く住まう中央区が実質的な特別区であることを考えれば、西区が最も高級住宅地と呼べる区画かもしれない。


 つまり金持ち商人なんかが多く家を持つ地域で、金持ちが多くいる分、一軒一軒の家も割と大き目。


 そんな西区にあっても、このノワールの屋敷ってのはかなりデカい。

 敷地面積だけでも相当なモノで、まさに豪邸。


 なんなら、下手な貴族の屋敷よりも大きいかもな。

 正門を抜けてすぐの庭の広さだけでも、王都じゃ中々お目にかかれないレベル。


 ……ぶっちゃけ、オードラン領にある俺の屋敷よりもデカいかもしれない。

 っていうか間違いなくデカい。貴族としてちょっと悔しいけど。


 もっとも、爵位がないにも関わらず王都の中にこれだけの敷地を持てる――それほどの財力や権力があるのは、いくら貴族と癒着がある豪商だとしてもおかしい(・・・・)


 俺が言うのもなんだが、ノワールなんたらって奴はよほど悪い奴(・・・)なんだろう。

 ま、だからなんだって話だが。


 なんて思いつつ、屋敷の中へ踏み込むために広い庭の中を進んですると――


「野郎共! 〝敵襲(カチコミ)〟だッ!」


出張(デバ)れ、出張(デバ)れ! 屋敷の中へ一歩も入れるなッ!」


 ノワールの部下らしきガラの悪い連中が、屋敷の方からわんさか出てくる。

 まるで蟻んこ(・・・)が敵の襲来を検知して、巣穴から一気に湧き出てくるみたいに。


 勿論、全員の手には剣だの短刀(ナイフ)だの釘が打ち込まれた木の棒だの、そんな感じの凶器が握られている。

 ……それにしても、


「なんか……多くない?」


 多い。無駄に多い。

 出るわ出るわ、有象無象の虫けら共が。


 ひい、ふう、みい……一体何百匹いるんだ……?

 絶対百とか二百どころじゃないぞ?


 ……流石に、千匹とかはいないよな?

 いくら貴族と癒着してる豪商だからって、千匹もゴロツキ飼えるはずないよな?

 それはない……と思いたい。


 ……やばい、(ダル)くなってきた。

 やっぱり面倒くさいし、帰ろうかな……。

 こんな大群の駆除なんて、阿呆らしくてやってられんわ……。


 なんて思う俺を余所に、


「オホホホ、景気いいですわねぇ! やっぱり〝特攻(おブッコミ)〟ってのは熱烈歓迎満員御礼でなきゃ、面白くねーですわッ!!!」


 実に楽しそうに、テンションMAXなエステル。


 いやなんでそんなテンション高いんだよ。

 乱闘好きにも程があるだろ。


「さあさあ、一番最初にお血祭に上げられたい奴ァどなたッ!? どっからでもかかってらっしゃいやッ!!!」


「死ねやオラアアアアァァァッ!!!」


 短刀(ナイフ)を振りかざし、エステルへと襲い掛かる無駄に人相の悪いゴロツキ。

 しかし――


「――フンッ!」


「ぐおあッ……!?」


 突如人影(・・)がエステルの前に現れ、〝くの字に曲がった独特な内反りの大型短刀(ナイフ)〟でゴロツキを斬り捨てる。


 その人影とは――


「あ、あら……? コピルさん!?」


「加勢に参りましたぞ、エステル殿」


 アル王子を護衛であり腹心でもある、コピル・バタライだった。

 エステルも俺も、突然現れた彼の姿にキョトンとさせられる。


「ん? お前、なんでこんなトコにいるの?」


「なんでもなにもありません。主が再び誘拐されたと聞いて、駆け付けない(しもべ)がどこにおりましょうか」


 えらく険しい表情をして俺の疑問に答えるコピル。


 ああ、なるほど?

 たぶん俺とエステルがここへ向かった後、遅れて王城に着いたコピルも状況を聞かされたんだろう。

 で、血相を変えて増援に来てくれたと。


 まったく、主人想いなことで。

 いい配下を持ってるじゃねーか、あのお子様王子も。


 コピルは大型短刀(ナイフ)を振るって、付着した血を払う。


「それに――ここへ駆け付けたのは、なにも私だけではありませんぞ」


「え?」


 俺が聞き返すよりも早く――今度は〝ドーンッ!〟という地響きと共に砂煙が巻き起こり、虫けらたちが宙へと吹っ飛ぶ。


「〝(おう)〟! 水臭ぇじゃねぇかアップルバリの姉御ォッ!」


 ……そんなドスの効いた声と共に砂煙の中から現れる、天を衝くリーゼントと人殺しにしか見えない人相の男。

 なんか、見覚えある気がするな。


「せっかく〝特攻(ブッコミ)〟キメるってのに、この俺を〝無視(シカト)〟するなんざよォッ!」


「! キャロル、あなた……!」


 驚くエステル。


 ああそうだ、確かエステルが創ったなんちゃら會とかいう部活の部員に、こんな奴いたっけ。

 俺はよく知らん奴だけど。


 ――さらに続けて、


「……部長、お前はかつて俺に言ったな。〝お前はリングの中での戦いしか知らない〟」


 違う場所でも地響きと共に砂煙が巻き起こって、同じように虫けらたちが宙へと吹っ飛ばされる。


 そして砂煙の中に立つ、両手に大きなグローブを嵌めた人影。


「俺のボクシングは〝お喧嘩(ストリート)〟では通用しない、と。――今この時、その汚名を返上してみせよう」


「フィ、フィグ! あなたまで……!」


 リーゼント頭の次に現れたのは、両手に真っ赤なボクシンググローブを着ける以外はハーフパンツ(トランクス)一枚という、どこからどう見てもボクサー然とした褐色肌の男。


 コイツもいたな~、あの異様にむさ苦しいエステルの部活に。

 やっぱりよく知らん奴だが。


 コピルはそんな二人を交互に見回し、


「ここへ馳せ参じる途中、偶然彼らと出会いまして。事情を説明したところ、お二方とも協力を申し出てくれたのです」


 不敵な笑みを浮かべて、大型短刀(ナイフ)を構え直す。


「アルバン殿、エステル殿、雑兵共の相手はどうか我らにお任せを。お二人は……アル王子の下へ向かってください」


「……いいんですの? 本当はあなたも――」


「足手まといは御免です。それにアル王子は、あなた様(・・・・)を待っているはずです」


「――!」


「ですから、お早く」


「……カッコつけてくれますわね」


 コピルの言葉を受けたエステルも不敵に笑い、拳を握ってボキボキと骨を鳴らす。


「そんじゃあ――私たちは一気に突っ切りますわよ、オードラン男爵ッ!」


「へいへい」


 俺とエステルが、グッと足に力を込める。

 それに併せて――



「「「ゥオラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」」」



 三ヵ所で〝大乱闘〟がおっ始まる。

 そしてコピル、リーゼント頭、ボクサーの三人にぶっ飛ばされた虫けら共が、それぞれ盛大に宙を舞う。


 そんな光景を尻目に、俺とエステルは適度に虫けら共を蹴散らしながら、屋敷の中へ向かって一気に駆け抜けた。


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\  /  喧嘩!友情!カチコミ!

●  ●  これぞお嬢様の嗜みですわね!

" ▽ "

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