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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第3章「ショタの初恋を奪ってしまいましたわ~!」

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第239話 真剣(マジ)で聞きますわ


《エステル・アップルバリ視点(Side)


「あはは! エステル殿、ほらこっちだ!」


 ちまっこい背丈でトタタッと走り回り、私を誘ってくるアル王子。

 ひとしきり踊った後だというのに、まだそんな元気が残ってるんですのね……。


 そんな無邪気で元気おハツラツな姿を見せられて、思わずため息を漏らす私。


「はぁ……。どぉ~~~して、こうなるんですの……?」


 ――ちなみに今、私とアル王子は舞踏会場を抜け出して、夜風に当たりに敷地の外まで足を延ばしておりますの。

 石畳道路のおゴツゴツとした親しみ慣れた感触がヒール裏から伝わってきて、なんだか安心すらしますわ……。


 外はとっくに暗くなっていて、夜空の中にはもうお月様が昇っている時間帯。

 舞踏会場の建物の窓から照らす光が敷地の外を照らしてくれないと、もう足元も見えませんわ。

 お子様なアル王子がすっ転ばないよう、注意して見張っておかなきゃですわね。


 王都中央区にある絢爛な建物は、敷地内ならどこにいてもおピアノやおバイオリンで奏でられる軽やかな円舞曲(ワルツ)の音色と人々の賑やかな笑い声が耳に飛び込んできて、クッソうるさ……いいえ賑やかすぎますし。


 オマケに私とアル王子が何故か舞踏会の主役みたいな扱いをされちゃってお面倒ですから、「オホホ、ちょっと二人きりでお話を……」とか適当言って出てきた次第ですわ。


 賑やかなおパーティーは別に嫌いじゃありませんけれど……今回ばかりはちょっとダルいですわね……。


「エステル殿よ、余は本当に嬉しいぞ!」


「え?」


「余はエステル殿が来てくれると信じていた! 信じてはいたが……それでも嬉しいのだ!」


 アル王子はこれ以上ないくらいの、心の底から嬉しそうな、とてもとてもお可愛らしい満面の笑みを私に向けてきます。


 う……そ、その笑顔はちょっと反則というか、いくら私でもグッときちゃうかもしれませんわ……。


「それで、余と二人きりで話とはなんですかエステル殿?」


「う~……え~っと~……」


 ……なんだか有耶無耶になってしまった気分ですわ~……。

 キャロルに拳で諭されて、心を決めてここまで来たというのに……。


 あんまりにもおタイミングよく会場に着いてしまったせいで「アル王子の信じた女性が本当に現れた」みたいな演出になっちゃいましたし、今から「アル王子を振るために来たんですけれど」とかめっっっちゃくちゃ言い出し難いですわ……。


 私はシワが寄る眉間を指先で解しつつ、


「アル王子……もしもこの会場に私が現れなかったら、どうするつもりでしたの?」


 とりあえず会話を途切れさせないようにと、そんなことを聞いてみます。


「どうするもこうするもない。エステル殿は実際に来てくれたではないか」


「いや、だからそうではなく……」


「不安がなかったと言えば、嘘にはなってしまう。だがそれでも、余はエステル殿が来てくれると信じていた。だからエステル殿のこと以外考えないようにした。それだけのことだ!」


 か細い両腕を腰に当て、堂々と胸を張って言い切って見せる十歳の子供。


 …………ホント、ホンッッットそういうトコですわ、このガキ王子……。


 なんでしょう……まるで小さくなったオードラン男爵を見ているみたいというか……。

 この二人って、どこか通ずるところがあるんですのよね……。


 このおバカ正直な思考回路と、おバカに超が付くレベルの一途さなんかそっくり。

 なんでそういう部分だけ無駄に漢らしいんですかしらね……。


 まあ……好感、は持てますけれど……。


「……」


「エステル殿?」


「アル王子、続けてもしも(・・・)――ですけれど」


 私は緩く腕を組んで、アル王子と目を合わせます。


「私が会場(ここ)へ現れた理由が、あなたとのお付き合いを真剣に断るためだった――と言ったら、どうしますかしら?」


「え……」


 私のその言葉を受けて、彼の笑顔は瞬時に凍り付きました。


「な、なにを戯言を――」


「お答えなさい。私は真剣に(・・・)、と言ったのですわ」


 喉と唇、そして言葉に少しの覇気を乗せ、睨み付けるようにアル王子を見る私。

 ここではぐらかしては、これまでと同じになってしまいますもの。


 そんな私を見て、彼もグッと声にならない声を喉に詰まらせて後退り。


 私だって、本当なこんな人を試すようなド卑怯な聞き方はしたくありませんわ。

 でもキャロルが言っていたように、なあなあな態度を続けていては余計にアル王子を傷付けてしまう。


 なら酷い女と蔑まれようとも、突き放さなきゃ……ですわよね。


 でも――それはそれとして、改めてアル王子の〝意志〟は聞いておかなくちゃ。


 私は私の意志をしっかり持ちますけれど、だからと言ってそれは相手の意志を聞かなくていい理由にはなりませんから。


 私だって、オードラン男爵とレティシア夫人のお二人をずっと見てきたんですもの。


 男女どちらかが一方的に意見をぶつけるのではなく、互いに意見をちゃんと聞き合う。

 それが〝(おパワー)〟であると、あの二人は証明して見せた。


 なら彼らの配下たる私も、それに倣うのが(スジ)ってモンですわよね。


 ――私は黙って、アル王子の返答を待ちます。

 彼が答えない限り、こちらはもう一言も喋らないと決めて。


「っ……――」


 アル王子はなにか言おうと、なにか声を発しようと、小さな口を開きます。


 けれど――まさにその時、でした。


 夜闇の中、急に〝ガラガラッ!〟という馬車が石畳の上を駆ける音が響いてきます。


 そして次の瞬間、すれ違い様に開け放たれた客室(キャビン)の扉から男の腕が伸びて、アル王子の腕を掴み――彼を客室(キャビン)の中へと〝誘拐〟していきました。


連れ攫われるのはヒロインの嗜み( ˘⊖˘)


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