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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第2章 スコティッシュ兄弟の確執

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222/235

第222話 一年たちのエピローグ


 《ユーリ・スコティッシュ視点(Side)


「どぉ――も皆さん! ご心配おかけしました! コルシカ・ポリフォニー、この通り完全☆復活ですッ!!!」


 ……両目の☆をピカピカに輝かせ、怪我から回復したミス・コルシカが私たちに挨拶する。

 その立ち姿を見る限り、どうやら心身共に元気なようだ。


 ――ジャック・ムルシエラゴの一件から、かれこれ二週間。


 いや、正確には〝ジャックを名乗っていた偽物が事件を起こしてから〟……か。

 レティシア夫人の証言により、私たちがジャック・ムルシエラゴと思っていた人物は偽物であったと判明。

 本物は既に死亡していたらしく、少し前にムルシエラゴ家では葬儀が行われたそうだ。


 Eクラスは偽ジャックとビクトールという有力候補が消えてしまったから、クラスの〝(キング)〟が決まるまでにはまだ時間がかかるだろう。

 残されたEクラスの生徒たちは幸運と言うべきか、気の毒と言うべきか……。


 ともかく――今、私たちは学園の中庭にいる。

 この場に集まっているのは一年Aクラスの(ユーリ)、Bクラスのフラン、Cクラスのコルシカ、Dクラスのエレーナとスティーブンの五名。


 それぞれ一年各クラスの代表――つまり〝(キング)〟たちだ。

 エレーナ女史の提案により、こうして全員が一堂に会する機会が設けられたのである。


 スティーブンだけは〝(キング)〟ではないが、エレーナ女史の付き添い兼護衛という形でこの場に来ている。

 なんでも「ナウでヤングなバカウケちゃんたちのナウいお話に~付いていけなくなっちゃうかもしれませんから~」なんだとか……。

 まあ、深くは気にしないでおこう。


「回復されてなによりですね~コルシカさん~。〔魔声帯(セイレーネス)〕の命である喉も~無事に完治されてよかったです~」


 ミス・コルシカの回復を喜ぶエレーナ女史。


 ……これは後から聞いた話であるが、本来であればミス・コルシカの喉の怪我はあまりに酷く、医療棟の医師たちはもう二度と声は出せないだろうと診断していたらしい。


 しかし――彼女の喉は回復した。

 それもごく短期間の内に。


 エレーナ女史の仮説によると、彼女が回復できた理由は二つあるのではないか、とのこと。

 まず一つはミス・コルシカが喉への攻撃を受ける直前、既に喉が一定の魔力を生成していたのではないか、という説。

 もう一つは、その魔力を喉の防御と回復に全て注ぎ込んだのではないか、という説。


 身体能力の向上や肉体の他の部位へのダメージ等を一切無視して、〝喉〟だけを守ろうとした……。

 おそらくは無意識の行動だったのではないかとエレーナ女史は語ってくれたが、それを本能的にできる辺りミス・コルシカも傑物なのだなと感じる。


 そんな無事完治したミス・コルシカを、使用人(メイド)姿のミス・フランが無表情でジッと見つめる。


『……それにしても、思ったより元気じゃねーか、でございます。もっと落ち込んでいるかと思っておりました』


「うふふ~、フランちゃんってば~何気にずっとコルシカちゃんのことを心配していたのですよ~?」


「ああ。意識が戻る前に、何度かこっそりお見舞いに行っていたらしいな。ローエン先輩から聞いた」


 エレーナ女史とスティーブンが言う。

 するとミス・フランの首がガシャッと急速にエレーナ女史たちの方を向き、もの凄い形相で睨み付ける。

 ……無表情なのにもの凄い形相と表現するのも、なにやら矛盾している気もするが。


『は? ちげーし。メイドらしく部屋の掃除に行ってただけだし。それに勝ち逃げされたままメンタルブレイクされるのも気分悪いしこのクソ(アマ)を倒すのはフランだしなんなら寝込みを襲ってやろうかとも思ってたし。適当なこと抜かしてるとブチのめすぞ、でございます』


 とてつもない早口で弁明のように喋るミス・フラン。

 そんな怒り心頭の彼女の頭を撫でながら「よしよし~素直になりましょうね~」と朗らかに笑うエレーナ女史。

 ……なんとも気の抜ける光景だ。


 一方、ミス・コルシカは彼女たちに対し――


「はい! 実は……だいぶ落ち込んでおりました! 正直に申しまして、もう〝アイドル〟を辞めようかとも思いましたね!」


 明け透けに、そう言い放つ。


「「「――え?」」」


「私は私の望む〝(トップアイドル)〟にはなれませんでした! 私は結局……ローエンセンパイと並び立つことは、できなかったのです」


 ミス・コルシカの声色が、快活さを失う。


 だが、それはほんの一瞬のことだった。

 彼女はすぐに目の輝きを取り戻し、


「ですが――センパイは私に言ってくれました! 〝またお前の歌が聞きたい〟と! そう言われてしまっては……引退などできませんよねぇッ!」


「……コルシカさん~、あなたは強い子ですね~」


「勿論ですとも! なにせ私、〝アイドル〟ですからッ!☆」


 ワァーッハッハッハ! と高笑いを上げるミス・コルシカ。

 どうやら――彼女はまだ、この学園に留まる所存らしい。


 いい事(・・・)だ。少なくとも心折れて挫折したままになるよりも、ずっとな。


「……それにしても、なぁ」


 頭の後ろで指を組み、スティーブンが言う。


「結局〝王位決定戦〟は有耶無耶になったままだし……オレたち一年は、これからどうするんだ?」


「……どうもこうもないさ」


 煮え切らない様子のスティーブンに対し、私は初めて声を発する。


「一年に真の〝(キング)〟はいない。私たちは全員オードラン男爵の軍門に下り、彼の臣下となる。それだけだ」


「そ、それはそうかもだが……」


「一年の取りまとめ役が必要と言うなら、エレーナ女史が適任だろう。スティーブン、キミがナンバー2として彼女を支えてやるといい」


「オ、オレがナンバー2……!? おいユーリ・スコティッシュ、お前はそれでいいのかよ!」


「ああ」


 私はそう言うと、その場で踵を返す。

 聞くべきことは聞いたし、言うべきことは言ったと思って。


「では、これにて失礼する。この後大事な用事があるのでね」


 そう言い残し、私は中庭を後にした。


 ――腰の細剣(レイピア)をカチャカチャと揺らしながら、外廊下を歩く。

 向かう先は校庭の一角。主に剣の鍛錬に使われる場所。


 そこへ行くと――


「遅かったではないか、ユーリ」


 先客の姿が既にあった。

 今日一緒に剣の鍛錬をすると約束してくれた、敬愛すべき〝お兄様〟の姿が。


「さあ、剣の鍛錬を始めるぞ。お前には早くスコティッシュ公爵家当主に相応しい技量を身に付けて貰わねばならんのだからな」


 そう言って、私の自慢のお兄様は笑う。

 そんな彼に対し――


「――はい!」


 私は少しだけ無邪気に返事して、お兄様の下へと駆け寄るのだった。



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