表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第2章 スコティッシュ兄弟の確執

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

214/235

第214話 兄弟②


《イヴァン・スコティッシュ視点(Side)


 ――細剣(レイピア)を振るい、蛇腹のようにうねる水の刃を滑らせる。


 鞭が如き水流の斬撃は音速へと達し、我が弟へと襲い掛かる怪物(モンスター)の腕を、衝撃波と共に斬り飛ばした。


『――ウ゛ぅッ!?』


 醜い身体をのけ反らせ、ユーリから離れる怪物(モンスター)

 ……間一髪、といった所かな。


「イ――イヴァンお兄様……!?」


「手間をかけさせるなよ、ユーリ。お前はそんな不出来な弟ではないだろう」


 僕は〔アクア・ウィップ〕を展開したまま、ユーリへと歩み寄る。

 そして腰を抜かし、地面に尻餅を突いていた弟に手を差し伸べた。


「立てるか?」


「は、はい……」


 僕の手を取り、ユーリは立ち上がる。

 同時に、まるで夢幻(ゆめまぼろし)でも見ているかのような目をしながら僕の方を見つめてくる。


「お、お兄様、どうしてここへ……」


「エレーナ女史が教えてくれたのだ。お前がなにやら危険な場所に飛び込んだ、とな」


 ――彼女には感謝せねばなるまい。

 レティシア嬢がジャック・ムルシエラゴに攫われたこと、そしてオードラン男爵やユーリが後を追ったことを迅速に伝えてくれたのだから。

 僕は一足早く到着したが、もうすぐ学園の教員たちやFクラスのメンバーもここへ到着するだろう。


 ともかくエレーナ女史のお陰で、僕は弟の窮地に間に合ったワケだ。


「さて……」


 僕はヒュンッと細剣(レイピア)を振るい、怪物(モンスター)の方を向く。


「よくも弟を傷物にしようとしてくれたな。代償は高くつくぞ、醜い怪物め」


『……ナンダ……オ前……?』


 怪物(モンスター)は警戒するように、六つの目でギョロリと僕を見てくる。


『人間ノ癖ニ……ナンデ……コノ姿ヲ……恐レナイ……? ナンデ……精神(サタニティ)ガ……汚染サレナイ……?』


「……? なにを言っている?」


『人間ナンテ……カ弱イ〝虫ケラ〟ノ……ハズナノニ……』


 困惑した様子の怪物(モンスター)

 ああ……どうやら自らの醜悪な姿に、僕が恐れをなすとでも思っているらしい。


「……何故、だと? 下らぬ質問だ」


 僕はフッと鼻で笑い、


「お前など少しも恐ろしくはない。僕は――お前よりもずっとずっと恐ろしい〝(キング)〟に、仕えているのだからな」


 ――そう答えてやった。


 ああ、そうさ。

 彼の方が何百倍も、何千倍も恐ろしい。

 僕はそんな男に仕えているんだ。


 正真正銘の〝化物(バケモノ)〟であり、暴君の中の暴君としてこの世に生まれ落ちた――アルバン・オードラン男爵に。


 彼が放つ根源的な恐怖と比べれば……コイツの方がずっとちっぽけな虫ケラだ。

 むしろ醜い分、さらに輪をかけて矮小に見えるな。


「貴様程度に気が触れるようでは、オードラン男爵の部下は務まらん。分を弁えるべきだな――下郎(・・)


『オ…………オオオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!!!』


 僕の言葉がよほど癪に障ったのか、激しい怒号をかき鳴らす怪物(モンスター)

 やれやれ、外見だけではなく声まで醜いとはな。


 ――いいだろう。

 貴族たる者の一人として、この怪物(モンスター)に〝優雅さ〟とはなんたるかを教えてやるとしよう。


「――ユーリ」


「! は、はい、お兄様!」


やる(・・)ぞ。お前が成長した姿――この兄に見せてみよ」




 ▲ ▲ ▲




《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)


「――〝大いなる神〟……? 聖母様、ですって……?」


 ――わからない。

 ラーシュの言っていることが理解できない。


 私が聖母様?

 私が、彼を〝大いなる神〟として生み直す?


 ……なにを、言っているの?


『ママはね……選ばれた(・・・・)んだ……。この世界の(ことわり)から外れた女性だから……聖母様に……。おめでとう……』


 ラーシュの声は嬉しそうに、僅かに笑うように語る。


『〝大いなる神〟が生まれれば……この世界には永劫の平和がもたらされる……。神様がこの世を支配して……皆生まれ変われるんだ……』


「……」


『この鬱な世界に……安らぎ(・・・)がもたらされるんだよ……? 素晴らしいよね……』


「私が、その神を生む〝母体〟になるというの?」


『そうだよママ……。そうすればママは……世界に安寧をもたらした……慈愛の聖母様になれるんだ……』


「――――フ、フフ」


『……?』


 ――思わず、笑いが漏れる。

 こんな状況でも笑えるなんて、自分でもどうかしていると思うけれど。


 ラーシュの言っていることは、私には何一つ理解できない。

 理解なんてしたくもない。


 でも思ってしまったのだ。

 もしこの場に(アルバン)がいたら――こう(・・)言うんじゃないかしら、って。


「世界平和……確かに素晴らしい響きね。でもあなたの言うそれ(・・)は、私には不釣り合いな言葉だわ」


『……どうして?』


「だって私は――レティシア・オードランは、〝悪役〟だから」


 私は額から脂汗を流し、込み上げる吐き気を抑えながら、それでも不敵に笑って見せる。


「私は〝悪女〟と〝大悪党〟の悪役夫婦、その片割れだもの。悪役以外が作った平和なんて……悪役令嬢(レティシア)には似合わないでしょう?」


 ああ――そうだ、彼ならきっとそう言う。

 そう言ってくれる。


 俺たちにはそんなの似合わないだろう、って。

 そんなモノは――クソ食らえだ(・・・・・・)、って。


「ラーシュ、あなたの言う神がなんなのかは知らないけれど……私はその〝母体〟になるのも、あなたのママになるのも、お断りよ」


『……』


「それに――あなたは、やってはならないことをした」


 私がそう言った、直後――



  ズ――――ン……ッ!



 ……という地鳴りのような音と揺れが、私たちの会話に割り込んでくる。

 その地鳴りは徐々に大きくなり、揺れはみるみる内に激しくなっていく。


 これは――〝破壊〟の音。

 己が行く手を拒む全てを踏み潰し、蹂躙する、暴力の体現音。

 一直線に、なにか(・・・)が、向かってきている。

 そんな音だ。


 ――来た。

 来てくれた。

 来てくれたんだ、私を迎えに。


 嬉しさのあまり、私はニィッと悪役らしく口の端を吊り上げ――


「さあ、来るわよラーシュ。あなたの世界平和を阻まんとする――最凶にして最高の暴君が……!」


 嬉しくて、泣きそうで、それでも私はラーシュへと向かって叫んだ。


 ――遂に壁の一部が大爆発し、外側から破られる。

 強力無比な攻撃魔法によって、全てを吹き飛ばすように。

 そして――




「……迎えにきたぞ、我が愛しき妻よ(レティシア)




結局アルバンが一番怖い^ω^)


書籍版第2巻、Kindle Unlimitedで読み放題になっております!

ご登録されている方はぜひ~^^


※宣伝!

書籍版第3巻、予約受付中!

ご予約はこちらから!☟

https://x.gd/FZq8B

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました』✨️
『怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました』1巻書影
ご購入は こちらから!
― 新着の感想 ―
さぁ、楽しい蹂躙の時間がやってまいりました!
終わった、怖いの人来た。さあ、お仕置き。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ