表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第2章 スコティッシュ兄弟の確執

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

205/235

第205話 不定の化物


 ったく、なーにやってんだコイツ(ローエン)は。

 こんな一年坊なんぞに追い詰められやがって。


 俺は振り下ろした剣を、ヒュンッと軽く払う。


 あーあ、こんな本降りの中で呼び出してくれやがってよ。

 風邪でもひいたらどうすんだっつーの。

 まあひいたことないけど、風邪なんて。


「オ、オードラン男爵……!」


「おいローエン、シャノアに感謝するんだな。お前とお前の後輩がなんかヤバいってんで、急いで俺を呼びに来たんだからよ」


 俺はため息交じりに言った後、「あとレティシアにも感謝しろ」と言い加える。


 ――シャノアの奴はローエンが喧嘩の仲裁に行ったとかで、慌てて俺とレティシアを呼びに来た。

 なんかコルシカがリンチにされてて、それを聞いたローエンが得物を持って怒り心頭で走っていったとかなんとか言って。

 たぶん、止めないと本気の殺し合いになっちまうと思ったんだろうな。


 それを聞いたレティシアは、すぐに現場(ここ)に向かおうとした。

 無論、俺はすぐに彼女を止めたけど。

 今から殺し合いが行われるかもしれない場所に、妻を行かせるワケにいかないから。

 だから、代わりに俺が行くって言ってさ。


 ま~喧嘩なんて適当にどっちもボコして仲裁すればいいか~、くらいに思ってたんだが……どうも俺が思ってたのとは、些か状況が違うらしい。


「つーかローエンお前、その腕大丈夫か? なんか凄い方向に曲がってるけど?」


「だ、大丈夫なワケないだろう! これでも痛みを必死に堪えているのだ!」


 あり得ない方向にぷらーんと曲がった右腕を抑え、声を張り上げるローエン。

 どうにも綺麗にへし折られたっぽい。


 そして……そんなローエンの後ろで横たわる、無惨な姿のコルシカ。

 ……見る限り酷い怪我だ。リンチにされてたってのは、どうやら本当らしい。


 で――そのコルシカをリンチにした、張本人。


「……」


 俺はゆっくりと、隻眼をソイツへ向ける。


 ――腹の底から忌々しい。

 レティシアがされたことを思い返す度に、怒りと嫌悪感で吐き気がする。


 でも、ようやく会えたな。

 なぁ――〝クソ野郎ジャック・ムルシエラゴ〟。


「お前が……ジャック・ムルシエラゴか」


 俺は右手に剣を握ったまま、少しずつジャックへと近付いていく。


「レティシアから聞いたぞ? その汚らしい手で、妻の身体をまさぐってくれたそうじゃねーか?」


「……アルバン・オードラン」


「どんな風に殺してほしい? 斬首か? 串刺しか? 磔か? 火炙りか? ああ、やっぱ選ぶな。お前にはそんな権利すら勿体ない」


「……レティシア・バロウの……あの女性(ヒト)の夫……」


「とりあえず、死ねよ。死んでレティシアに詫びろ。そんでせいぜい地獄で苦しんで、二度とこの世に生まれてくるな」


「……あの女性(ヒト)は……僕のだ」


 ジャックはスッと左手を上げ、俺を指差す。


 ――降り注ぐ雨の中を突っ切るように、()が飛んでくる。

 それも、何本も束になって。


 いや、腕というより足? 触手? (つる)

 まあ別になんでもいいが、とにかく――ジャックの背後にいる〝化物(バケモノ)〟が仕掛けてきた。


「ウザ」


 面倒くせぇなぁ、と思いながら――俺はその長く伸びてくる攻撃を回避し、さっきと同じように斬撃を叩き込む。それも連続で。

 容易く斬り落とされ、ボトボトと地面に落ちていく化物(バケモノ)の腕。

 どうやら普通に刃は通るっぽい。


「――で、ソレ(・・)はなんだ?」


「………………え?」


「お前の後ろにいる、その〝化物(バケモノ)〟だよ。なんか緑色(・・)した、気色悪いヤツ。お前のペットか?」


 今度は俺がジャックの背後を指差して尋ねる。


 なんか――見たことないモンスターがいるんだよな、ずっと。

 しかも従順なことに、ジャックの傍から離れようとしないし。


 ありゃなんだ?

 形状が些か不定で、軟体生物っぽくも植物っぽくも見えるんだけど。

 まあ、別に殺せば皆同じだから、ぶっちゃけ大した興味なんざないが。


 そんなことを思いつつ、俺は何気なく尋ねたのだが――



「――――――」



 ――ジャックの奴は、両目を引ん剝く。

 さっきまでの陰鬱そうな表情とは打って変わり、心の底から驚いたと言わんばかりの顔して見せる。

 半ば唖然としたような顔、というか。


「…………なんで?」


「あぁ?」


「お前、なんで……〝■■の落とし子〟が見えるの……?」


「なんでもクソもあるか。そこにいるんだから、見えるに決まってんだろーが」


「う、嘘だ……じゃあなんで……お前の精神(サタニティ)は……」


 目を血走らせ、信じられないとでも言わんがばかりの顔をして、俺のことを見てくる阿呆(ジャック)

 何故かはわからんが、酷くショックを受けた様子だ。


 俺はクルッとローエンの方に首を回し、


「ローエン、お前あのモンスターって見覚えあるか?」


「……? あのモンスター……とは、どれのことだ……? 雨粒が伝っている、透明な奴のことか……?」


「はぁ? お前までなに言って――」


「…………鬱だ……鬱鬱する……」


 俺とローエンが会話していると――ジャックは突然身を翻し、フラフラと俺たちの下を去って行く。


 同時に、ジャックの背後にいた化物(バケモノ)は斬り落とされた複数の腕を瞬時に再生し、バッと飛び上がって校舎の壁に張り付く。

 そしてそのまま這うように壁を伝い、屋上の方へと消えていった。


 俺はジャックを追いかけて、ぶちのめしてやろうとしたが――このすぐ後に学園の教員たちが駆け付けて来た為に、それは叶わなかった。



※書籍版第三巻の予約受付中!

 ご予約はこちらからどうぞ~^^

 https://x.gd/FZq8B


※書籍版第1巻、Kindle Unlimitedで読み放題になっております!

 ご登録されてる方は是非~(*´ω`*)


※宣伝!

書籍版第二巻、発売中!

ご購入はこちらから!☟

https://x.gd/vT0fA

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました』✨️
『怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました』1巻書影
ご購入は こちらから!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ