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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第2章 スコティッシュ兄弟の確執

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第198話 暗殺者の提言


《イヴァン・スコティッシュ視点(Side)


「ユーリ! しっかりしろ、ユーリッ!」


 血みどろの身体に対して、大声で呼び掛ける。

 しかし次の瞬間、そんな僕の目に映ったのは――


「――! ユ……ユーリじゃ、ない……?」


 抱きかかえると同時に、ガクッと僕の方を向いた黒髪の頭部。

 だがその()は、ユーリとは似ても似つかなかった。

 髪の色合いや体つきこそ些か似ているが、顔は全くの別人であったのだ。


 ――思わず、僕は安堵する。


 (ユーリ)じゃない――。

 (ユーリ)じゃなかった――。

 心の中で何度もそう呟き、無意識の内に胸を撫でおろす。

 緊張でギュッと固まった心臓が、ゆっくりと解れていくのさえ感じた。


 けれど――それでも、一つの事実は変わらない。

 今僕が抱えている男子生徒が――死体(・・)であるという事実は。


 男子生徒の表情は……苦痛と恐怖に歪んでいた。

 死の直前、よほど怖い思いをしたのだろう。

 落下して手足が折れ曲がってしまっていることもあり――あまりにも惨い死に様だ。


「おいイヴァン! まさかユーリが――!」


 僕を追うように、すぐにマティアスが傍まで駆け付けてくる。

 だが男子生徒の顔を見た彼は、なにかに気付いたようだった。


「って――コイツは一年のビクトール・ローザンじゃねぇか!」


「! ということは、彼がローザン子爵家の……!」


 その名前には聞き覚えがあった。

 当然、家名にも。


 ローザン子爵家の嫡男、ビクトール・ローザン。

 今年王立学園に入学してきた者だ。

 確か、所属は一年Eクラスだったはず。

 僕はビクトールの容姿外観を知らなかったが、この男が……。


 驚きと安堵と困惑が入り混じり、口から出すべき言葉も見つけられないでいた――その時。


「――ッ!」


 僕は顔を上げ、頭上を見上げる。

 ビクトールが落ちて来た校舎の屋上――そこに人の気配を感じて。


「誰だ! そこにいるのは!?」


 ――影が見えた。

 こちらを見下ろす、何者かの影が。


 しかしその影はすぐに身を引っ込め、僕の視界から姿を消した。


「クッ……!」


「待てよイヴァン……! 今から行っても、どうせ逃げられるだけだ。それより人を呼ぶべきだろって」


 影を追いかけるため立ち上がろうとする僕だったが、その肩をマティアスがグッと抑える。


 ……悔しいが、その通りだ。

 今から屋上に全速力で駆けたところで、あの影に追い付けるはずもない。

 それに下手に死体の傍を離れては、後々面倒なことになりかねない。


 仕方なく僕は影の追跡を諦め――学園の教員を呼ぶことにした。






 ――ビクトールが屋上から落ちてきてから、小一時間ほどが経過。


「はい! これは他殺で間違いありませんね!」


 ビクトールの遺体を前に、満面の笑みを見せながらパウラ先生が言う。

 ……なんだか、とても楽しそうだ。

 そんな彼女に対し、僕は呆れ果ててため息を漏らす。


「先生……死者を前にそんな楽し気に笑うのは、どうかと思いますが」


「やだなぁ、楽しいワケないじゃないですか! この顔が、楽しそうに見えます?」


 ……見える。

 いつも以上にニパ~と笑って、普段の表情より二割増しほど楽しそうに見える。

 むしろ楽しそうにしか見えない。

 僕なんて小一時間は経ったのに、周囲に立ち込める血の匂いでまだむせ返りそうだというのに。


 ――僕らの周囲には大勢の野次馬が出来ており、パウラ先生以外にも教員が複数名現場検証などを行ったりしている。

 すっかり騒ぎになってしまった様子だ。

 ……学園内で死人が出ているのだから、騒ぎにならない方がおかしいとも言えるが。


「ともかく、イヴァンくんとマティアスくんの供述は承知しました! とはいえ一応お二人も容疑者にはなっちゃいますから、そこだけはご理解を!」


「わかっています。そうなることを理解しているからこそ、この場を離れなかったんですよ」


「それでパウラ先生――と、カーラ(・・・)よぉ。ビクトールの死体から、なんかわかりそうか?」


 マティアスは、チラッと視線をビクトールの死体の方へと流して言う。

 そして死体のすぐ傍には――検死をするカーラの姿が。


「うん……パウラ先生の言った通り……他殺で間違いない……」


 顔を布で覆い隠された、ビクトールの死体。

 それをあちこち調べながら、カーラは言う。


 ――カーラは〝暗殺者(アサシン)〟だ。

 ヴァルランド王国が唯一公認する暗殺一家レクソン家の一員であり、幼い頃からその道の英才教育を受けている身。

 暗殺という技術……つまり死体を作り出す技術が一流だとすれば、それは同時に人体への理解も一流だということ。


 いつ死んだのか、どんな風に死んだのか?

 ただ死んだのか、それとも殺されたのか?

 死因は? 手口は? 凶器は――?


 ――少なくとも外傷による死因だった場合、現場の状況と照らし合わせればかなり色々なことがわかるのだとか。


 カーラの死体を見る目はパウラ先生でさえも舌を巻くほどらしく、それもあって今回の検死に引っ張り出された形らしい。

 ……カーラの検死能力を見抜くパウラ先生もパウラ先生で、一体何者なのだという気はするが。


 兎にも角にも、カーラは人間の死体に人一倍慣れていた。

 実際、カーラが死体を調べ始める前に僕やマティアスは多少気遣ったが、彼女は「大丈夫、今更なにも感じないから」と言ってそそくさと検死を始めてしまった。

 そうして、大体の調査は終わったらしい。


「直接的な死因は……落下による転落死じゃない……。胸部に強い衝撃を受けたことによる……心臓破裂……」


 カーラは上着を脱がされた死体(ビクトール)の胸辺りを指差すと、


「見て……胸骨が粉々に砕けて、胸の中央が陥没してる……。たぶん相当強烈な力で殴り飛ばされて、屋上から落下したんだと思う……」


「ふぅーむ、なんだかとっても殺意(・・)を感じますね! 私には故意犯によるモノとしか思えませんが、カーラさんはどうお考えです?」


 パウラ先生がカーラに尋ねると、カーラはフルフルと首を横に振った。


「まだなんとも……。解剖すれば、もっと色々わかるかもだけど……」


 そう言いかけて――カーラはマティアスの方を見る。


「ねぇ、マティアスくん……。確かビクトール・ローザンは……一年Eクラスの〝(キング)〟候補だったよね……?」


「え? あ、ああ、そうだな……」


「……これは〝暗殺者(アサシン)〟の直感に過ぎないんだけど……一年の〝王位決定戦〟――今すぐ中止(・・)した方がいいと思う……」



パウラ先生が楽しそうでなにより^ω^)


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