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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第2章 スコティッシュ兄弟の確執

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第196話 コルシカ対フラン、決着


「ワァーッハッハッハ!!!」


 コルシカは斧槍(ハルバード)でフランの蹴りを弾き、『決闘場』に響き渡るほどの高笑いを上げる。


「素晴らしい身体能力ですよ、フランさんッ! それだけの身体捌きができれば、踊り上手のアイドルとして大成できますッ!」


『否定。フランはアイドルではなく使用人(メイド)だボケ。何度言えばわかるんだ、このスカポンタン、でございます。』


「うむうむ! そうですねッ! まずはアイドルの振付に慣れるべく、〝踊ってみた〟から始めてもいいかもしれませんねッ!」


『……検証。もはや意思疎通が不可能と判断。どうやらお脳の一部が破損してるらしいな、でございます』


 無表情のまま呆れ果てるフラン。

 対してコルシカは、まるで「今この瞬間こそ、我が人生青春真っ盛り!」とでも言いたげに目の中の☆を光らせる。

 傍から見ててもハッキリとわかるくらい、両者のテンションの落差が酷い。


 ……なんか、微妙にフランに同情しちまう気もするな。

 俺も苦手かもしれん。コルシカみたいな、ああいうグイグイくるタイプ。

 だって面倒くせぇから。

 たぶん、フランの奴も同じようなことを思ってるんじゃねーかな。


 しかし、そんな俺やフランの気持ちなど知ったことがと言わんばかりに――


「ですが! それはそれとして、この勝負には決着をつけねばなりませんッ!」


 コルシカは斧槍(ハルバード)の柄尻を地面に突き立て、堂々と胸を張る。


「フランさん! あなたのアイドルとしての可能性に敬意を表し……私も本気で勝ちにいきますッ!」


『ほう……どうするつもりだ、でございます』


 警戒しつつ問うフラン。

 それに対し、コルシカは不敵に笑い――



「――聞いてくださいッ! 〝ライジング・アイドル~一番(Ichiban☆)(boshi)〟ッ! ミュージック、スタートぉうッ!!!」



 ――コルシカの背後で、ドーンッ! と爆発が起こる。

 同時に白煙(スモーク)が巻き上がり、その中で何本もの色鮮やかな光の筋ムーンフラワーエフェクトが発光。

 さらにどこからともなく軽快は音楽が流れ始め――『決闘場』は、コルシカの独壇場(ステージ)と化した。


「んんん~ッ! キタキタキタ~! コルたんの十八番(オハコ)ッ、〝ライジング・アイドル~一番(Ichiban☆)(boshi)〟ッ!!!」

「この曲を待ってましたああああッ!!!」

「よっしゃあッ! 皆、全力でコルたんを応援するんだッッッ!!!」


 歓喜と興奮に沸き立つ一年Cクラスたち。

 ライブ会場――ではなく『決闘場』の空気は、一瞬にして沸騰する。


 そして――コルシカは歌い出す。

 勿論、踊り(ダンス)という振付もアリで。


 ……凄い、凄い曲だ。

 彼女の歌は歌声も歌詞も独特かつエキセントリックで、まるで電波のようなソングだった。

 ポップなのに情熱的。情熱的なのにパラノイア的。

 聞いていて脳内に溢れ出す、まるで長いようで一瞬の青い春。

 それを(そう)でハイな感じの極彩色に染め上げて、劇物とシェイクしたかのような。


〝アイドルといふ現象は、仮定された有機交流電燈の、ハジケた青春の照明です(あらゆる超エキサイティンなキラキラの複合体)〟


 一言で言うと、そんな感じの曲。

 それが脳の奥に直接流し込まれているような感覚……。

 聞いているだけで、思考力が奪われて気分アゲ☆アゲ☆になれそう……。


 ……いかん、もう俺自身、自分でなにを言ってるのかわからなくなってきた。

 明らかに脳が毒されてきている……。


「さあフランさんッ! あなたも一緒に歌って踊りましょうッ!」


『……こんなまやかし(・・・・)、フランには効かねーぞ、でございます』


 フランは〝舞踊(バレエ)〟の動きのまま構え直し、再びコルシカ目掛け攻撃を仕掛けていく。

 スピードも威力も、人間には到底不可能な挙動も、全てそのままに。

 しかし――


「アイドル・イズ・無敵(ムテキ)ッ!!!」


 コルシカは、フランは攻撃を捌く。

 捌き、いなし、回避し――さらには反撃までも加えていく。

 それも、ちゃんと歌い続けながら。


 傍から見ると〝歌いながら戦っている〟というどう見てもおかしな光景なのだが――コルシカのテンションは、異様に高い。

 いや――テンションだけじゃない。

 動き(・・)が、さっきと違う。


 フランの動きをほとんど完璧に見切り、圧倒し始めている。

 歌い始めてから、明らかに戦闘力が上がった。それも急激に。


 そしてなによりも――コルシカの全身を包む、沸き上がるような魔力。

 魔力量と出力が、さっきまでとは桁違いだ。


 ……魔力が身体能力を底上げしている?

 しかもまるで、〝歌〟が魔力を引き出しているかのような――


「……始まったな、コルシカの〝歌〟が」


 ローエンが、ニヤリと笑って言う。


「あん?」


「コルシカは歌うと強くなる(・・・・)のだ、文字通りの意味でな。一年前、奴は単独でミノタウロスを討伐したが……その時も、ああやって歌っていたらしい」


「ほうほう~? それは〔魔声帯(セイレーネス)〕の持ち主~ということでしょうか~?」


 ローエンの説明に対し、「珍しいですね~」と返すエレーナ。

 おっと……? なんかまた知らない単語が出てきたぞ……?


「その、〔魔声帯(セイレーネス)〕ってのは……?」


「簡単に言うと~声帯~つまり発声器官である〝喉〟に~魔力の生成能力を持つ人のことですね~」


 エレーナは指先で自らの喉を指差しながら解説を始め、


「〔魔声帯(セイレーネス)〕は~その特殊な喉の構造により~歌うことで無制限に魔力を生成し~魔法を発動できると言われていますね~」


「む、無制限だぁ? そんなのあり得んのか……?」


「はい~あり得るのです~。ただしそれは~、あくまで歌い続けられれば(・・・・・・・・)……のお話ですが~」


 そう答えて、エレーナはコルシカを見る。


「古来より歌声には魔力が宿ると言いますが~、コルシカさんは溢れ出る魔力を~肉体強化に使ってらっしゃるようですね~。それもまた珍しい~」


「そういえばそうですわね。〔魔声帯(セイレーネス)〕であれば直接は戦わずに、歌声で相手を無力化するというイメージがありますけれど……」


 不思議そうにレティシアは小首を傾げる。

 それに対し――ローエンはガックリと項垂れた。


「……言わんでやってくれ。コルシカは魔法に関心がなかったというか……基礎的な魔法を覚えられんほど、頭がアレだったのだ」


「「「…………」」」


 思わず沈黙し、苦笑いする俺たち。

 一方で――コルシカとフランの戦いは佳境を迎えようとしていた。


『くっ……!』


「ワァーッハッハッハ!!! さあ行きましょう! ピリオドの向こうへッ!」


 コルシカの曲がAメロ、Bメロと終わり、遂に一番盛り上がるサビへと突入。

 それと同じくして、コルシカのボルテージが上がる。

『決闘場』……もう面倒くさいのでライブ会場でいいが、その会場の空気感もMAX最高潮。


 そして遂にコルシカの斧槍(ハルバード)が、フランの腕を弾き――


「アイ・ドル・斬ッ!!!」


 一閃。

 サビが終わると同時に、フランの胴体へと斬撃が叩き込まれた。


『――――ク……ソ……が……!』


 フランの動きが、ピタリと止まる。

 見えない力に拘束されてしまったかのように。


「――フラン・ドール死亡! この戦い、コルシカ・ポリフォニーの勝利!」


 立会人の教員が宣言。

 刹那、ワッという歓声がコルシカを包む。


「えへへ……ビクトリーッ!☆」


 最後に――観客たちに対し、コルシカは精一杯の笑顔でVサインを送った。



本当はコルシカの曲の歌詞も書きたかったのですが、全然思い付かなかったので諦めました……。

思えば作詞作曲の経験が皆無だった……( ´༎ຶㅂ༎ຶ`)


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