表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第2章 スコティッシュ兄弟の確執

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

184/235

第184話 確執


「イヴァン……お兄様ぁ……?」


 俺は思わず左目を点にし、反射的にイヴァンの顔を見る。

 すると――イヴァンの表情は険しく、真っ直ぐ美男子の方を見つめていた。


「……ユーリ(・・・)


 ポツリ、と呟くように名前を呼ぶイヴァン。

 その名を聞いたレティシアは、何故かハッとしたような表情を見せる。


「! ユーリ、って……それじゃ、彼がユーリ・スコティッシュ!?」


「ああ……僕の〝弟〟であり、スコティッシュ公爵家の現跡取り(・・・・)だ」


 驚くレティシアにイヴァンは答え、数歩前へと歩み出る。


「久しぶりだな、ユーリ。変わりないようでなによりだ」


「ええ……お兄様の方は、すっかり変わられてしまったようですが」


 ――まるで突き放すかのような、冷たい声。

 いや、声だけでなくイヴァンを見る目つきも、凍り付くほどに冷たい。

 どうやら、兄との再会を喜んでいるってワケじゃなさそうだ。


 にしても――イヴァンの弟、か。

 兄弟って割りには、あんま似てないな。

 髪の色こそ同じだが、顔立ちは全然違う。

 もしかするとイヴァンは父親似で、このユーリって弟は母親似なのかもしれない。


 だが……雰囲気というか、その身にまとう覇気(オーラ)はそっくり。

 もっとも、(ユーリ)の方が些か刺々しい感じもあるが。


 イヴァンは短い沈黙の後、


「お前が王立学園に入学することは知っていた。だが、お前の方から僕に会いに来るとは思わなかったぞ」


「……今や私の方が、スコティッシュ公爵家の中での立場が上だから――ですか?」


「……」


 ユーリの言葉に沈黙で答えるイヴァン。

 ユーリは続けて、


「私は……正直、ずっと信じていませんでした。私が尊敬し、愛してやまなかった誇り高いお兄様が、オードラン男爵などという遥か格下の者に懾伏(しょうふく)したなんて……なにかの間違いだと」


 チラリ、と俺の方を流し見てくるユーリ。


 お、なんだぁ? やるか~?

 喧嘩売ってるなら買うぞ、コラ。


 俺は腰の剣に手を伸ばしかけるが、すぐ隣にいるレティシアが「アルバン」と小声で言い、俺の左袖をキュッと引っ張る。

 どうやら「喧嘩はダメ」ってことらしい。


 う~む、レティシアがそう言うなら大人しくしていよう……。


 イヴァンはスッと眼鏡を動かし、


「口を慎み給えユーリ。アルバン・オードラン男爵は、今やヴァルランド王国の英雄と呼び称されているのだぞ」


それ(・・)もです。本来なら、〝救国の英雄〟と称賛されるのはお兄様でなければいけなかった」


「……!」


「お兄様……学園に入られる前のあなたは、さながらスコティッシュ公爵家の生き字引のような方でした。気品があり、誇り高く、まるで夜空に輝く一等星のように眩しくて……覇気に満ちたあなたの姿は、時に近寄れないほど恐ろしいと、そう感じる時すらあった」


 そう語るユーリの声に――段々と、失意が混じっていく。


「ですが……今のお兄様からは、あの頃の輝きを感じられません」


「ユーリ……」


「何故オードラン男爵の隣を歩いているのです? 何故オードラン男爵を背に歩こうとしないのです? お兄様は――〝最優であって当たり前〟という、スコティッシュ公爵家の家訓を忘れてしまわれたのですか?」


 失意と――怒り(・・)

 いや、憎悪と言った方がいいか。


 ユーリの言葉とイヴァンを見つめる目は、これ以上ないほどの侮蔑で満ちていた。


「私は、スコティッシュ公爵家を継ぐお兄様のためなら、この命捨てても惜しくないと心から思っていました。けれど……私の愛したお兄様は、もういないのですね」


 そう言って、ユーリはクルリと俺たちに背を向ける。


「私は必ず一年を制し、〝(キング)〟となります。そしてアルバン・オードラン男爵を倒して、学園の王座を我が物とする――。今日はその宣言をしに来ました」


「……そういう形で僕に引導を渡すのが、自分の役目だとでもいうのか? ユーリ・スコティッシュよ」


「はい。これはスコティッシュ公爵家の指示ではなく――あくまで私の意志です」


 そう言い残し――ユーリは俺たちの前から去っていった。


 俺は「チッ」と舌打ちし、


「小生意気なクソガキめ。な~にが学園の王座を我が物とする、だよ」


 ペッと吐き捨てるように言う。


 気に食わないね、あの露骨に人を舐め腐った態度。

 喋り方が如何にも鼻に付く感じが、最初に会った頃のイヴァンにそっくりだ。


 そもそも王座に挑むっていうなら、イヴァンじゃなくて俺に挨拶するのが筋では?

 完全に俺のこと見下してるな?


 もしあの態度でレティシアのことまでバカにしてたら、俺はすかさずグーが出てたわ。

 だってムカつくから。


 レティシアも頭を抱え、


「イヴァン……弟さんには、なんだか随分と倒錯した想いを抱えられてしまったようね」


「フッ、そうでもない。予想はしていたことさ」


 悩ましそうにするレティシアに対し、苦笑しつつもクールぶって言葉を返すイヴァン。


 イヴァンはユーリが去って行った方向を見つめて、


「……心配するな。いずれユーリにもわかるだろう。オードラン男爵――いいや、キミたち夫婦がどれだけ凄いか、ということが」


 そんな風に語るイヴァンの表情は――少しばかり、物悲しそうに見えた。

※宣伝!

書籍版第二巻、発売中!

ご購入はこちらから!☟

https://x.gd/vT0fA


※書籍版第一巻がKindle Unlimitedで読み放題になりました!

 ご登録されてる方は是非~^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました』✨️
『怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました』1巻書影
ご購入は こちらから!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ