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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
【第2部】第2章 スコティッシュ兄弟の確執

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182/235

第182話 進級したということは


「〝魔導書(グリモワール)〟――とは、また物騒な名前が出てきたわね」


 王城の一室。

 薄暗い部屋の中で椅子に座り、神妙な面持ちでアルベール国王は言う。


 そんな彼のすぐ傍には、ウィレーム・バロウ公爵とオリヴィア・バロウの親子の姿が。


 オリヴィアは「ふぅ」とため息を吐き、


「ええ……魔法省の上層部は、蜂の巣を突いたような騒ぎですわ」


「ま、本物かどうかわかんないけどね。グレッグ区長なんかにポンと預けるくらいじゃ、偽書や写本の類だった可能性もあるし」


 いや……十中八九そう(・・)だったろうな――。

 そんな貴重な物を――いや、実在しないとすら言われていた幻の本を、回収もせずに燃やして証拠隠滅を図った……というのがなによりの証拠だ――。

 アルベール国王は内心でそう思い、言葉を続けようとしたが、


「……〝魔導書グリモワール〟の件は早急に調査する必要がありますな。ですがそれ以上に気がかりなのが――遂に奴ら(・・)が動き始めたことです」


 ――そんなバロウ公爵の言葉で、思考の対象を脳内で切り替える。


「……そうね。しかも奴ら〝薔薇教団〟は、オードラン夫妻に接触を図ってきた。明確な敵意を持って」


「「……」」


「これは国家(アタシたち)に対する宣戦布告であり、なんらかの準備(・・)が整った合図――と見るべきでしょうね」


 アルベール国王はそう言うと――ニィッと不敵な笑みを浮かべる。


「でも残念だわ、『薔薇色の黄昏ローゼン・トワイライト』……。アンタらは、この世で一番敵にしちゃいけない夫婦(・・)を敵にしたわよ」




 ▲ ▲ ▲




「グッッッッッモーニンFクラスの皆さん! おっはようございまーすッ!!!」


 ――朝。

 今日も今日とて、パウラ先生の挨拶から一日が始める。


「「「……」」」


「あれれ~? 皆元気ないぞ~?」


 元気ないんじゃねーよ。

 朝からそのテンションに付いていくのが面倒くせぇだけだよ。

 などと内心で突っ込む俺。


 もっとも、こんな挨拶が二年目(・・・)ともなると、流石に慣れてしまったが……。


 ――進級に併せて新しくなった教室の中にはパウラ先生を始め、いつもの九人の姿が。


 (アルバン)、レティシア、シャノア、エステル、イヴァン、マティアス、ラキ、ローエン、カーラ――の九人。


 全員静かに席に着き、パウラ先生の挨拶に耳を傾けている。


「さてさて、本日から二年生・一学期のスタートとなります! 去年はちょっと色々なことがありましたが、心機一転! 気持ちを切り替えていきましょう!」


 いや、ちょっとって。

 クーデターで国家が転覆しかけたんだが?

 それをちょっとと表現するのか、この教師は……。

 相変わらずというか、なんというか。


 それに、ウチのクラスだって変化があっただろうが。


 ……十人いたFクラスが、今や一人減って九人。

 席が一つ、欠けてしまった。

 ――レオニールの席が。


 もっとも、パウラ先生もわかってて触れないのかもしれんが。

 新学期早々クラスの空気を重くしないように、気を遣っているのかもしれん。

 流石にそこは教師としての自覚が――


「あ、一応触れておきますがレオニールくんのことは残念でしたね! 彼のことは、とりあえず一旦綺麗さっぱり忘れてください!」


 ――前言撤回。

 やっぱこの人、教師としての自覚ねーわ。


 こちとら、忘れたくても忘れられませんが?

 第一、レオニールってこの世界の主人公だったんだぞ?

 超重要人物っていうか、世界の中心と言っても過言じゃなかったんだからな?

 しかも俺の宿敵(ライバル)だったワケで……。


 それに――今の世界は、ファンタジー小説の物語(ストーリー)が完全に破壊された後の状態。

 主人公とヒロインが消え去り、物語(ストーリー)の根幹を成す人物がいなくなった。

 故にこれから先の未来、この世界が一体どうなっていくのか――全くの未知数。


 不安はない……と言えば嘘になる。

 だが、レティシアと一緒にいられるなら、世界がどうなろうが知ったこっちゃない。

 俺にとって、〝世界〟とはレティシアのことだから。

 夫の責務として、俺は妻を守り続ける。

 それだけだ。


 ま、なるようになるだろうさ……。

 考えるだけ無駄だわな。

 つーか面倒くさい。

 などと思いながら、俺が机の上で頬杖を突いていると――


「……先生」


 ――レティシアが、小さく声を上げる。


「レオニールは……本当に、その……」


「わかりません! なにせご遺体が見つかりませんでしたから! 私は死んだとハッキリわからない人物に関しては、死者として扱いません! なので、一旦忘れましょう(・・・・・・)と言っているのです!」


 ハキハキと答えるパウラ先生。


 ああ……そういう。

 なるほど、パウラ先生らしいっちゃらしい考え方だな。


 生死不明の人間を意識して、お脳のリソースを割くのはバカらしい――と言いたいんだろう。

 その点はまあ……俺も同感ではある。


「それと皆さんお気付きかもしれませんが、去年からの新校則に則り所持ポイントが最も低かったEクラスは全員退学処分となりました! 彼らは既に学園を去っております!」


 パウラ先生がなんの感慨もなさそうに言うと、今度はイヴァンが手を上げた。


「先生、学園を去った彼らは今後どうなるんです?」


「退学後の生徒に関しては、基本的に学園は不干渉とする予定でしたが……去年は大変でしたからね! 希望者は、人手が減った王城や騎士団での勤務に就けるそうです!」


 ほう、王城や騎士団に。

 まあ確かに、エルザの反乱で大量に人が死んじまったもんな。

 学園に入学するのは貴族出身者が多いし、都合がよかったのかもしれん。

 Eクラスの奴らも運がいい。


 っていうか、退学になったのBクラスじゃなかったんだ……。

 99ポイントとか引かれてたのに……。


 それで退学にならなかったのは、逆に凄いな。

 実はBクラスの〝(キング)〟って有能なのか?

 名前覚えてないけど。


 にしても、ファウスト学園長(あのジジイ)もよくやるよ。

 反乱なんて国家の一大事があったのに、それでもきっちり公約通り生徒を退学にするんだもんな。

 公明正大と言うべきか、専断偏頗(せんだんへんぱ)と言うべきか……。


 ま、どうでもいいけど。

 俺はレティシアと一緒にいられるなら、それでいいし。


 パウラ先生は「最後に」と話を続け、


「皆さんが二年生に進級したということは……今年も〝新たな一年生〟が入学してくるということでもあります! 勿論、新一年生にもキミたちと同じ新校則が適用されます!」


 ――新校則。

 それは意図的に生徒同士を争わせ、クラスの中で〝(キング)〟を決める制度。

 支配する者とされる者を明確に分け、さらにクラス同士を蹴落とし合わせることで本質的な〝貴族(エリート)〟を生み出す行為。


 どうやら、その戦い(・・)が今年も行われるらしい。

 パウラ先生は、なんだか少しワクワクした様子で俺の方を見ると――


「今年も元気な生徒さんがたくさん入学したらしいので……楽しみですね!」

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