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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
第6章 因縁に終止符を

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第148話 悪役夫婦、王城へ!


《パウラ・ベルベット視点(Side)


『先輩、こちらホラント。聞こえますか?』


 ――左耳に付けた小型魔法通信機(トランシーバー)から、ホラントくんの声が響いてくる。


『今しがた、オードラン男爵を解放しました。真っ直ぐ王城へ向かうはずです』


「解放? 脱獄(・・)の間違いじゃなくって?」


『……』


 クスクスと冗談めかして言う私に対し、無言で答えるホラントくん。


 も~、相変わらず固いなぁ~。

 こういうイベントはもっと楽しまなきゃ!


「冗談だよ冗談~! それで、〝王家特別親衛隊〟の統率状況は?」


『先輩がアルベール第二王子側に回ると言ったら、八割方こちらに付きましたよ。残り二割は既に鎮圧済です』


 八割か~。

 二割も離反されるとか、私の影響力もすっかり小さくなっちゃいましたね!


 ま、〝王家特別親衛隊〟を抜けた身なんだからしょうがありませんが!


 私は内心で微妙にため息を吐きつつ、


「そのまま戦力を温存して待機。指示があるまで動かないこと」


『……待機、ですか? すぐに城下町の鎮圧に動くべきでは――』


「ダメダメ。全て終わった後の治安維持に、どうしても頭数が必要だからさ。今は戦力を減らさないこと」


『……了解しました。――先輩』


「うん?」


『どうか、ご無事(・・・)で』


「……そこは〝ご武運を〟って言うところだよ、可愛い後輩くん」


 そう言い残し、私は通信を切る。


 ――さてさて、楽しい楽しいお祭り(・・・)も佳境のようで♪




 ▲ ▲ ▲




《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)


「アルバンが……王城へ向かったですって……!?」


「はい! エルザ第三王女と決着をつけに行ったそうです!」


 なんとも楽し気な様子で教えてくれるパウラ先生とは裏腹に、その情報を聞いた私は驚きで目を見開く。


 ――いけない(・・・・)

 アルバンは、レオニールがエルザ第三王女に付いたことを知らないわ。


 レオニールは、試験中に私たちを襲ってこなかった。

 代わりに〝串刺し公(スキュア)〟がレオニールの格好をして……。


 レオニールは一体どこへ消えてしまったのか?

 何故〝串刺し公(スキュア)〟がレオニールに変装していたのか?


 本当に不可思議だったけれど、エルザ第三王女が反乱を起こしたことで確信した。


 レオニールは――エルザ第三王女の()にいる。

 彼は王女のことを守っているに違いない。


 初めから、レオニールに私たち(Fクラス)を襲わせる気などなかったのだ。


 〝串刺し公(スキュア)〟が変装していたのは、おそらくレオニールの居場所を悟らせないための欺瞞工作。


 事実、私は彼女が反乱を起こす直前まで「レオニールは洞窟(ダンジョン)内に隠れている」「そして試験中に襲ってくる」と思い込んでいた。


 でも、違った。


 たぶんエルザ第三王女は――レオニールのことを〝対アルバン用の決戦兵器〟と考えている。


 ……彼女は、アルバンが自分を殺しにくることを見越しているのでしょう。

 そして唯一レオニールだけが、アルバンと互角に戦えることも知っているはず。


 アルバンがエルザ第三王女の下に辿り着いたなら――彼女は間違いなく、レオニールをアルバンにぶつけてくる。


 いいえ、もしかしたら他の護衛の兵士たちも一緒に。


 そして絶対的に有利な状況下で――アルバンを亡き者にするつもりだ。


「ダ……ダメよ! すぐにアルバンを止めなきゃ……!」


「――避けられませんよ(・・・・・・・・)


 焦る私に対し、パウラ先生は極めて落ち着いた口調で返してくる。


「レティシアさん、あなたがアルバンくんとレオニールくんの衝突を恐れているのはよくわかります。ですが、それはもう避けられないんです」


「……!」


「レオニールくんにどんな事情があったにせよ、既に賽は投げられてしまったんですから。エルザ第三王女の手によってね」


 まるで、諭すような話し方。


 異常とすら思えるほど落ち着いた彼女の態度は、ある意味で教師らしくもあり、年長者らしくもあり、そして冷酷にすら感じられた。


 彼女は話を続け、


「……あなたが今すべきことはなんですか? アルバンくんを止めることですか? レオニールくんを説得して連れ戻すことですか?」


「わ……私は……」


「違うでしょう、レティシア・オードラン。本当は全部わかってるはずです。あなたがすべきことは――全ての因縁を終わらせることだと」


 パウラ先生はそう言って、両手をそっと私の肩に置く。


「もう一度言います。賽は投げられたんです。後は勝つか負けるか、生きるか死ぬか、その二択しかない」


「パウラ先生……」


「全てを終わらせて夫との幸せな未来を掴み取るか、それとも因縁に飲み込まれて破滅するか――選びなさい」


 いつもの惚けたパウラ先生とは違う、とっても真剣な表情。


 そんな彼女の言葉を受け――。


「……………………ありがとうございます、パウラ先生」


 私も意を決し、パウラ先生の目を見つめ返す。



「私――王城へ行きます。全ての因縁に、終止符を打つために」



 力強くそう答えると、パウラ先生は「フフッ」と小さく笑った。


「そうこなくっちゃ! それでこそレティシアさんです!」


 彼女は私の肩からパッと手を放すと、


「では――王城までの道程は、このパウラ・ベルベットがお付き合い致しましょう!」


「え? パウラ先生が……?」


「はい! 若者の情熱に絆されて――少々暴れたくなってきましたので!」


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