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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
第6章 因縁に終止符を

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第144話 いいに決まっているではありませんか


《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)


 声に釣られ、私とローエンは後ろへと振り向く。


 そして私たちの目に映ったのは――ニコニコ笑顔を浮かべた、パウラ先生の姿だった。


「! パウラ先生!」


「お疲れ様です、レティシアさん! いや~、実にお見事な采配でしたよ!」


 パチパチと小さく拍手しながら、彼女は私の方へと歩み寄って来る。


魔法映写装置(スクリーン)越しにじっくりと観戦させて頂きましたが、もう最高に楽しめました! 先生大満足です!」


「は、はぁ……」


「本音を言えば、Fクラスの代理〝(キング)〟であるレティシアさんと、Aクラス〝(キング)〟であるロイドくんには最後まで潰し合ってほしかったんですけど……流石にそれは職務怠慢って言われちゃいますからね!」



 彼女は顔面に張り付けたようなニコニコとした笑顔を一切崩さず、今度はその顔を〝串刺し公(スキュア)〟へと向ける。


「ロイドくん――ではなく〝串刺し公(スキュア)〟くんとお呼びした方がいいでしょうか? まあ、どっちでもいいですが」


「……」


「キミにFクラスの動きを漏らしていた協力者は、全員捕縛させて頂きました! Aクラスの担任、監督官を担当していた者、洞窟(ダンジョン)に入り込んでいたFクラスを監視していた部外者――延べ十二名!」


「! 十二名って……そんなに……」


 数字を聞いて驚く私。


 Aクラス協力者――というよりエルザ第三王女の協力者が妨害工作をしてくるだろう、というのは私も予測していたし、実際それ前提で戦略を立てていた。


 だけどまさか、そんなに人数がいたなんて……。


 パウラ先生も「私も驚きましたよ~、まさかそれほどの人数を買収していたとは!」と感嘆とした様子で言葉を続け、


「大方、万が一Aクラスが負けたらFクラスを始末する役目も任されていたのでしょうね! ですが……レティシアさんの動きを見て動揺し、相互に連絡を取ろうとしたのが〝隙〟になりました」


「……ククク、それで芋づる式に捕まってしまったと」


「ええ、尋問すれば本当の首謀者(・・・・・・)もすぐに明るみになるでしょう。……残るはあなただけです」


 ――僅かにパウラ先生が殺気を帯びる。


 同時に、剣や杖などで武装した学園の監督官たちが周辺の道から現れて、遠巻きに〝串刺し公(スキュア)〟を取り囲む。


 もはや、彼に逃げ場はない。


「言っておきますが、絶対に逃がしませんから。私こう見えても、狙った獲物を取り逃がしたことがありませんので」


「……………………………………………………………………ク…………ククク…………」


 長い沈黙の後――〝串刺し公(スキュア)〟は不気味な笑い声を奏で、


「逃げる……? 小生は逃げるつもりなど、毛頭ありませんよ?」


 そう言って、右手の指に挟んだトランプを構える。


 それを見た監督官の一人が〝串刺し公(スキュア)〟を取り押さえようと僅かに身体を動かしたが、パウラ先生がバッと片手を伸ばして制止。


 けれど視線は〝串刺し公(スキュア)〟に向けたまま、


「……私、これでも生徒想いでして。最期(・・)に、なにか聞き届ける言葉はありますか?」


「それでは――――〝エルザ様よ、どうかお幸せに〟」


 一言そう述べた彼は、ゆっくりと右腕を動かし、トランプを自らの首筋に当て――それを素早く引いた。


 刹那――〝串刺し公(スキュア)〟の首から、深紅の鮮血が恐ろしい勢いで噴き出る。


「――ッ!!」


 その光景に、私は思わず両手で口元を覆う。

 ショックで肩が震え、足が竦んで動かない。


 彼がまとう白の衣装は瞬く間に真っ赤に染まり、足元には血溜まりが作られていく。


 文字通り、全身の血が抜け出ていっているのだ。


 見る見るうちに顔面が真っ青になり、〝串刺し公(スキュア)〟はズシャッと地面に膝を落とす。


「クク……ク……」


「あ……あなた……どうして……!」


「エルザ様は……想いを……遂げられた……。ならば……偽物(・・)など……不要……」


 額からは止めどなく汗が流れ、息も途切れ途切れ。

 酷く苦しそうなのに――それでも彼の口の両端は、大きく吊り上がっていた。


「レ、レティシア・バロウ……小生に、聞きましたな……〝それでいいのか〟と……。クク……いいに決まっている……ではありませんか……!」


「え――?」


「エルザ様が……エルザ様さえ幸せなら……小生は……それで満足なのです……! 小生の人生は……愛しき人(・・・・)のために……!」


 徐々に、〝串刺し公(スキュア)〟の呼吸の間隔が短くなり、弱々しくなっていく。


 それに合わせるように、目の光も失われていき――。


「あぁ……エルザ様……お慕い……申し上げ……て……」


 グラリ、と力が抜けるように姿勢が崩れる。

 そのままドサッと地面に倒れると――彼の呼吸は、完全に途絶えた。


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