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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
第6章 因縁に終止符を

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第133話 最悪の相性


《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)


 ――さて。

 久しぶりね、直接誰かと戦うなんて。


 暴れるのはアルバンの専売特許ですし、そもそも彼が率先的に荒事に介入して解決してくれるから、私にお鉢は回ってこないのよね。


 でも……だからって、無力な女狐(・・)と思われるのは心外。


 狐に噛まれたら「痛い」じゃ済まないということを、思い出させて差し上げましょう。


 さあ――今日は存分に暴れましょうか。


 私は再びヒソヒソ声でラキに話しかけ、


「……ラキ、あなたはここでじっとしていて。私がガスコーニュをやっつけてあげる」


「へ……? な、なに言ってんのレティシアちゃん! 相手は凄腕の狩人なんだよ!?♦ 頭出した瞬間に――!♠」


「大丈夫」


 ラキを落ち着かせるように、私は彼女の手をそっと触れる。


「私は負けないわ。それに、あなたをこんなところで死なせたりしない。だから任せて頂戴」


「レティシアちゃん……」


「ただ、あなたにも頼みたいことがあって――」


 ラキの耳元に手を近付け、とても小さな声で作戦(・・)を伝える。

 

 それを伝え終えた私は、私はグッと足に力を込めて立ち上がり――歩き出す。


 そして堂々と、岩陰から出ていった。


 ……コツ、コツと洞窟(ダンジョン)の中に響く靴の音。


 ラキとローエンに陽動を任せたこのルートは、洞窟(ダンジョン)の中でも比較的広々とした空間となっている。


 しかし反面、人間よりも大きな岩がそこかしこにあるため見通しが利かず、加えて薄暗がりであるために余計に視界が制限される。


 人が隠れられる場所など無数に存在し、息を殺して獲物を狙う狩人にとっては、まさしく絶好の狩場(キルゾーン)と言えるだろう。


 私はそんな場所を、胸を張って、堂々と進んでいく。


 私からは、相変わらずガスコーニュがどこにいるのかなど全くわからない。


 逆に、既にこちらの位置を把握しているであろうガスコーニュにとっては、絶好のチャンスのはずだ。


 いつだって私の額に弓矢を突き立てられるはずだ。


 なのに――彼は、弓矢を放ってこない。


 そんな場所の、やや開けた地点で立ち止まった私は――。


「……あら、射ってこないのね。せっかく狙いやすい場所まで来てあげたのに」


『……』


 挑発に対し、沈黙で答えるガスコーニュ。


 ……ああ、やっぱり。

 口先でどう言おうと、Aクラス(あなたたち)は私を強く警戒しているのね。


 彼らだってFクラスのこれまでの試験結果や、私が〝どういう人間か〟というのをよく知っているはずだもの。


 ガスコーニュ……あなたは今、頭の中でこう考えているのでしょう?


 ――何故、自ら姿を曝け出した?

 姿の見えない狩人の前に進み出るなど、単なる自殺行為だ。

 あの小賢しいレティシア・バロウ(オードラン)が、そんな愚かな真似をするワケがない。

 ……罠か?

 それとも焼きが回ったのか?


 ――そんな自問自答を繰り返しているはずよね。


 あなたほど経験豊富な狩人(ハンター)であれば、必ず〝獲物の心理状況〟を読もうとしてしまうでしょうから。


 これで確認(・・)は取れた。

 あとはいつでも――。


 そう思っていた矢先、遠く離れた岩の影でほんの僅かに黒い影が動く。


 直後、ビュンッ! と弓矢が放たれた。


 ――きた。


 弓矢が放たれたと認識した私は、瞬時に体内で練っていた魔力を解き放ち――。


「――〔ウィンド・ウォール〕」


 魔法を発動。


 すると――私目掛けて飛翔していた弓矢が、脳天に突き刺さる直前にビュオッと逸れた(・・・)


 まるで真横から突風に煽られ、強制的に軌道を変えさせられたかのように。


『――!!』


「この魔法を誰かの前で使うのは初めてだわ。矢避けの傘には最適だと思わなくって?」


 ――〔ウィンド・ウォール〕は対象の周囲に〝風の壁〟を作る防衛魔法。


〝壁〟としての防御力はそれなりだけれど、発動までの時間が極めて早く、空気がある場所でならどこでも使用可能。


 さらに視界を一切遮らない、移動を阻害しない、それでいて全周囲を守れるという利便性も兼ね備えている。


 これらの特徴から、〝矢避けの魔法〟としてよく使われる魔法なのよね。


 弓使いであるガスコーニュにとっては、厄介この上ない魔法でしょう。


 猛者揃いのAクラスのことだから、私が魔法の心得があることくらいは周知していたはず。


 でも――今の私(・・・)がどれだけの魔法を会得しているのか、までは調べが足りていなかったようね。


 ……イヴァンやマティアスたちだけじゃないのよ?

 強くなっているのは――!


『クソ……ッ!』


 自慢の弓矢が届かないと悟ったガスコーニュは、バッと岩陰から動く。


 そして岩陰から岩陰へカバーリングしつつ、弓矢を放って牽制をしながら素早く接近してくる。


 自分とレティシア・バロウ(オードラン)との相性が最悪だと気付いて、戦術を変えたのだろう。


 気配を消して一撃必中を狙っていた戦い方から、アクティブに動いて間合いを詰める戦い方へ――。


 基本的に、魔法使いは接近戦に弱い。


 特に私のような防衛魔法や遠隔魔法を得意とするタイプは、間合いを詰められると一気に対抗策を失う。


 状況を判断し、魔力を練って、適切な魔法を発動する――という手順(プロセス)が間に合わなくなってしまうから。


 敵ながら賢明な判断ね。

 思い切って身を曝け出したのも流石だわ。


 でも、そう易々と近寄らせるとお思い?


 私はニィッと微笑を浮べ――改めて魔力を練る。

 それも、できるだけ大きな魔力を。


 そして――。


「――〔ブリザード・サンクチュアリ〕」


 ガスコーニュに接近されるよりも早く――Sランク(・・・・)の魔法を発動した。


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