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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
第6章 因縁に終止符を

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第123話 人を統べる力


「は~いアルバンちゃん❤ あ~ん❤」


「……」


「ほらぁ~、あ~ん❤」


「……あの、一人で食べちゃダメっすか?」


 銀色のフォークに乗せられて口元へ運ばれるケーキの切れ端に対し、俺は露骨に嫌な顔をする。


 ――ここは牢屋の中で、俺は未だに囚われの身。


 処刑のための裁判は無期延期になったが、流石に叛逆の容疑者をポンと解放するワケにはいかなかったらしくて。


 ま、その辺りもアルベール第二王子の計算の内なんだろうけど。


 それは別にいい。

 そこまでは別にいいんだが……。


 ……今現在、アルベール第二王子は牢屋の中にテーブルと軽食が乗った三段重ねティースタンドを持ち込み、俺と一緒に優雅なアフタヌーンティーと洒落込んでいる。


 ボロボロでかび臭い牢屋の中で行われる豪勢なヌン活は、なんともシュールな絵面だ。


 お陰で、王子が普段口にしている食事を食べられる嬉しさが七割減。

 アルベール第二王子は全く気にする素振りを見せないけども。


 っていうか、なにが悲しくてレティシア以外の人間から「あ~ん」してもらわにゃならんのか……。


 ましてや男で、一国の第二王子で、おまけに腹の底が見えない策士に「あ~ん」されても、普通に「嫌」って感情しか湧いてこない。


 だからノーサンキュー。


「んもう、ノリ悪いんだからん! そんなんじゃオネェにモテないわよぉ~」


「モテなくていいです。もう妻がいるんで」


 プンプンと頬を膨らませるアルベール第二王子に対し、キッパリと意思表示する俺。


 つーかさぁ……。


「ところで、俺は一体いつまでこの牢屋の中でグダグダしてればいいんですか? 流石にそろそろレティシアに会いたいんですけど」


 話の流れをぶった切って、アルベール第二王子に尋ねる。


 牢屋の中で怠惰に過ごすのはそれはそれでいいかもしれんが、いい加減にレティシアの顔を見たくなってきた。


 なのでそろそろ帰りたい。

 愛する妻の胸に飛び込みたい。

 レティシアと一緒にふかふかなベッドの上で眠りたい。


 ――などと頭の中がレティシアで一杯になっていると、アルベール第二王子が呆れ顔で「はぁ~……」とため息を吐く。


「……あなたって本っ当に、レティシアちゃんのことしか頭にないのねぇ~……。そんなにレティシアちゃんと一緒にふかふかのベッドで眠りたい?」


「へ……? な、なんで俺の考えてることを……!?」


「そりゃ~わかるわよ~。顔に書いてあるんだもの」


 マジで……?

 以前レティシアにも同じこと言われたけど、本当に俺って考えてること顔に出てるのか……?

 怖……。


 アルベール第二王子は話を続け、


「それで、あなたの釈放についてだけど……たぶんそう遠からずここから出られると思うわ」


「! 本当ですか!」


「ええ……そろそろレティシアちゃんが動く(・・)はずだから」


「レティシアが……?」


 なんとも意味深な感じで彼女の名前を出すアルベール第二王子。


 彼とレティシアが裏で連携を取り合っていることはわかっているが、どうやらレティシアもまだ色々と画策してくれているらしい。


 流石は俺の妻。

 出来る女だよなぁ、うんうん。


 ……などと自分の妻が誇らしくなる俺だったが――ふと思った。


「ちなみに、レティシアは元気でやってます? 向こうでなにか問題(・・)が起こったりとかしてませんか?」


 それは何気なく聞いた質問。

 なんとなく思っただけで、不意に聞いただけだったが――。


「……」


「アルベール第二王子?」


「……大丈夫よ、レティシアちゃんなら元気でやってる」


「そうですか~、ならよかった!」


 満足そうにニパッと笑う俺。

 そんな俺を見たアルベール第二王子は頬杖を突き、


「お友達の……クラスメイトたちのことは心配してあげないの?」


 尋ねてくる。

 そんな彼に対し、


「そりゃあ、全く気にならないと言えば嘘になりますけど……大丈夫でしょ。だってレティシアがついてるし」


「ふ~ん……」


 内心でなにを思っているのか、短く唸るアルベール第二王子。


 一方俺はティーカップに注がれた紅茶を口に含み、ゴクリと飲み干す。


「……ぶっちゃけて言いますけど、彼女は俺なんかよりずっと君主(リーダー)の器の持ち主ですよ。人望があるっていうか、カリスマ性があるっていうか」


 ……本当なら、Fクラスの〝(キング)〟はレティシアであるべきだったとすら思う。


 俺はホラ、所詮しがない悪役貴族だし?

 本来のファンタジー小説に登場するアルバン・オードランだって、早々に退場するようなしょうもない存在だし?

 ただ破滅したくなくて頑張っただけの。


 だからって言い方は変だけど、自分に人望とかカリスマ性があるなんて思ってない。

 それにあんま興味もないし。


 ――でもレティシアは違う。

 彼女は生まれながらの君主(リーダー)だ。


 聡明で勇敢で決断力に富み、それでいて驕らない。

 そしてなによりも――慈愛に溢れている。


 レティシアは優しいんだよな。

 だから皆が彼女を慕い、付いていく。


 俺もそんな彼女の魅力にコロッと落とされた人間なワケで。


 だから今でも、〝人を統べる力〟では到底レティシアには敵わないと思ってる。


 でも――。


「――でも、レティシアは言ってくれるんですよね。俺が〝(キング)〟に相応しいって。だから俺は妻の期待に応える。そして妻を信じる」


「そんな妻が〝大人しくしてて〟って言うなら、クラスのことは一旦全て彼女に任せ、今は信じて待つ……そういうこと?」


「ええ、無責任な夫だと思います?」


「まあちょっぴり。でも嫌いじゃないわよ、そういう考え方」


 フッと笑みを浮かべるアルベール第二王子。


 実際レティシアがいれば、もしFクラスに問題が起きたとしても対処できるだろう。

 これまでもそうだったし。


 例外的な心配があるとすれば……そうだなぁ、レオニール(・・・・・)の奴くらいかな?


 なんか俺が捕まる当日に休んでたし、妙な気を起こさないといいんだが――。


「アルバンちゃんがロマンチストなのはよくわかったわ。それじゃアタシも、野暮なこと言うのはやめておきましょ」


「へぇ、なにか俺に言うつもりだったみたいな口ぶりですね」


「ん~? 別にぃ? 若い夫婦の絆って、オネェには眩しく映っちゃうってだけ言っておこうかしら❤」




 ▲ ▲ ▲




《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)


「……本当にいいのかね?」


 ――学園長室の中。

 執務机を挟んで私と向かい合うファウスト学園長は、複雑そうな面持ちで聞き返してくる。


「お主の夫、オードラン男爵は未だ牢の中……。加えてお主らFクラスからは重傷者も出てしまった。如何にワシとて、中止を検討しておったが……それでもやると?」


「ええ、お願いします。私なりに色々考えた末の決断ですわ」


 ハッキリとした、決意のこもった声で私は答える。

 ファウスト学園長はしばし考えるように顎髭を撫で、


「……そうか、よかろう。お主ほどの者が考えあってと言うならば、止めはすまい」


 厳かに、椅子から立ち上がる。

 そして――。



「――期日通り、〝期末試験・決勝戦〟を開催する」




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